概要
1980年にアンマンで開催されたアラブ・サミットでのジャービル・クウェート首長(当時)の提案を受け、翌1981年5月25日にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートによってアブダビで設立された。本部(事務局)はサウジアラビアの首都リヤドに所在する。
正式名称は、「Cooperation Council for the Arab States of the Gulf(アラビア語:Majlis Al-Ta’aawni li Duwali Al khalyiji Al-‘arabiya)」である。日本語では「湾岸アラブ諸国協力会議(CCASG)」となり、日本政府による呼称は「湾岸協力理事会(GCC)」となる。一般には、「Gulf Cooperation Council(GCC)」という略称が用いられることが多い。
GCCは、経済をはじめとするあらゆる分野における域内の調整、統合、連携を目的としている。しかし、設立当時はイラン革命、ソ連のアフガニスタン侵攻、イラン・イラク戦争等の国際情勢の急激な変化から、これらに脅威を感じた湾岸アラブ6か国が、類似の王制・首長制国家の立場から相互の結束を強化してこれらの脅威に対処するために設立されたとみられている。
そのため、設立当初は集団安全保障体制としての色合いが強かった。その後90年代の原油価格の低迷等を受け経済統合のための機関としての色合いが強くなっていく。
2012年のアラブの春中、サウジアラビアはGCCをより緊密な経済的、政治的、軍事的連携を伴う「湾岸連合」に変えることを提案したが、この動きはこの地域におけるイランの影響力に対抗することを目的としていると考えられている。
通貨統合交渉からのUAEとオマーンの離脱など各国の足並みが揃っていない。また、2017年6月5日にGCCメンバであるサウジアラビア、バーレーン、UAEとエジプトの4か国がカタールと断交した。2021年1月4日にカタールとの国交は回復している。
現在の加盟国の特徴は、全て君主制をとることである。3つの立憲君主国(カタール、クウェート、バーレーン) 、2つの絶対君主国(サウジアラビアとオマーン)、および 1つの連邦君主国(アラブ首長国連邦) という構成になっている。
【2001年:GCC最高評議会における目標設定】
・2003 年1月の関税同盟の成立
・2007年までに共通市場を構築
・2010 年までに湾岸共通通貨「ハリージー(Khaleeji)」の導入
【その他の目標】
・加盟国間の宗教・経済・金融・貿易・通関・観光・立法・行政における共通規制の確立
・産業・鉱工業・農業・水利・畜産資源の科学技術的進歩の促進
・科学研究センターの設立
・ジョイントベンチャー(共同企業体)の設立
・統一軍(半島楯部隊)の設立
・民間部門の協力推進
・人的交流の強化推進
【沿革】
- 1981年5月:GCC発足
- 1983年3月:統一経済協定発効(域内貿易の自由化)
- 2001年:統一経済協定改定
- 2001年12月:GCC標準化機構(GSO)創設
- 2003年1月:対外統一関税導入開始(GCC関税同盟)
- 2008年1月:共同市場の発足(ヒト、モノ、カネの移動の自由化)
- 2009年12月:GCC通貨統合協定がサウジアラビア、クウェート、カタール及びバーレーンの4か国間で発効
- 2012年11月:GCC内相会合でGCC治安協力協定改正案が合意
- 2015年1月:対外統一関税導入の完了
加盟国
サウジアラビア王国
Kingdom of Saudi Arabia
- 国土面積は2,149,690km2 で世界13位、人口は3481万4000人で世界41位
- 中東に位置するサウード家による絶対君主制国家、ワッハーブ主義に基づく厳格なイスラム教義を国の根幹としており政教一致体制
- 世界2位の原油埋蔵量を持ち、世界最大級の石油輸出国
●首都
リヤド
アラブ首長国連邦
United Arab Emirates
- 国土面積は83,600km2(日本の約4分の1。北海道程度)で世界113位、人口は937万人で世界91位
- 7首長国による連邦制、各首長国は世襲の首長による絶対君主制、最高意思決定機関は連邦最高評議会(FSC、Federal Supreme Council)、国家元首である大統領、および首相を兼任する副大統領はFSCにより選出、実際には大統領はアブダビ首長のナヒヤーン家、副大統領はドバイ首長のマクトゥーム家が世襲により継ぐのが慣例化
- 名目国内総生産(GDP)は世界34位、購買力平価(PPP)で世界32位
●首都
アブダビ
クウェート国
State of Kuwait
- 国土面積は17,820km2(四国とほぼ同じ)で世界152位、人口は427万人で世界127位
- 首長制(憲法によって立憲君主制が定めらているが、実態はサバーハ家ジャービル家)の一族独裁による事実上の絶対君主制)、首長・国民議会・内閣があるが、首長が国民議会の解散権と内閣任命権を持つ
- 名目国内総生産(GDP)は世界位、購買力平価(PPP)で世界52位
●首都
クウェート
バーレーン王国
Kingdom of Bahrain
- 国土面積は758km2(宮城県仙台市とほぼ同じ大きさ)で世界177位、人口は154万人で世界155位
- 2002年より立憲君主制、首相は国王が任命、評議院と代議院の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界94位、購買力平価(PPP)で世界96位
●首都
マナーマ
カタール国
State of Qatar
- 国土面積は11,427km2(秋田県よりもやや狭い)で世界164位、人口は251万人で世界143位
- サーニー家による首長制、行政権は首長と首相が持つ、諮問評議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界55位、購買力平価(PPP)で世界50位
●首都
ドーハ
オマーン国
Sultanate of Oman
- 国土面積は309,500km2(日本の約85%)で世界69位、人口は511万人で世界120位
- 国王(スルタン)による絶対君主制、国王が首相を任命、国家評議会(上院)、諮問評議会(下院)による二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界73位、購買力平価(PPP)で世界65位
●首都
マスカット
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