- 概要
- 原加盟国
カンボジア王国
ព្រះរាជាណាចក្រកម្ពុជា
Kingdom of Cambodiaラオス人民民主共和国
ສາທາລະນະລັດ ປະຊາທິປະໄຕ ປະຊາຊົນລາວ
Lao People’s Democratic Republicミャンマー連邦共和国
ပြည်ထောင်စု သမ္မတ မြန်မာနိုင်ငံတော်
Republic of the Union of Myanmarタイ王国
ราชอาณาจักรไทย
Kingdom of Thailandベトナム社会主義共和国
Cộng hòa xã hội chủ nghĩa Việt Nam
Socialist Republic of Vietnam中華人民共和国
People’s Republic of China
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概要
瀾滄江・メコン川協力(LMC: Lancang-Mekong Cooperation)は、瀾滄江とメコン川の沿岸国間の協力を目的として、2016年に設立されたこの地域の経済協力プラットフォームである。
瀾滄江(Lancang River)はメコン川のうち中国を流れる川で、これが中国を指し、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイの5か国がメコン川流域諸国の参加国となる。
2015年4月に最初の会合(Senior Officialレベル)を持ち、2015年11月の第1回外相会議を経て、2016年3月の第1回首脳会議で正式に立ち上がったと認識される。2016年に瀾滄江・メコン諸国による中小規模のプロジェクトを支援するLMC特別基金が設立された。
この経済協力フォーマットの主な目的は、中国が他の沿岸国とともに水力発電ダムからの水の流れを管理することにあるとされる。中国は瀾滄江・メコン川に7つの巨大ダムを建設しており、米国に拠点を置くNGO「インターナショナル・リバーズ」によると、雲南省、チベット、青海省で20のダムが建設中または計画中だとされる。
LMCは、中国が主導できるメコン流域国家との協力枠組みであり、「一帯一路」政策の重要なピースのひとつとされる。
従来から日本では、メコンというと日本の影響下にあるアジア開発銀行(ADB)による「大メコン圏(GMS: Greater Mekong Subregion)」が重要な役割を果たしてきたとの認識が強い。LMCの台頭で日本のメコンにおける存在感は急速に低下している。
また、メコン地域のリーダーを自任するタイは、中国の影響力が過大で自国が軽視されているLMCをあまり快く思っておらず。それ以外の国は概ね好感しているようである、というのが大勢の見方である。
目的
LMCの目的は以下の通り。
- 準地域諸国の経済・社会発展の促進
- 人々の福祉の向上
- 地域諸国間の開発格差の縮小
- ASEAN共同体構築の支援
- 国連の持続可能な開発のための2030アジェンダの実施促進
- 南南協力の推進
LMCは、リーダーの指導、全面的な協力、幅広い参加を特徴とする枠組みの中で実施され、政府主導、複数参加、プロジェクト指向のモデルに従い、瀾滄江・メコン諸国間の平和と繁栄の未来を共有するコミュニティを構築し、LMCをウィンウィンの協力を特徴とする新しい形の国際関係の例として確立することを目指している。
メコン地域をめぐる外交的思惑
2005年に発効したASEAN中国FTAに対抗する意味で、米国は「メコン川下流域開発(LMI: Lower Mekong Initiative)」を2009年に打ち上げた。米国が用いた「Lower Mekong」という名称には、メコン上流の中国を排除する意図があると解される。
(※ 2020年に、LMIは新たなメコン・米国パートナーシップ(Mekong-US Partnership)に組み込まれた)
これに対抗するように、メコン川上流を強調した瀾滄江(Lancang)の名を冠した「瀾滄江・メコン川協力(LMC: Lancang-Mekong Cooperation)」という名称を中国が選んだ背景は推して知るべしである。中国がLMIを苦々しく見ていたことは間違いない。
LMCは中国にとって、自国が主導できる「小地域」としての位置づけを確立したい意図が込められている。ASEAN中国FTAは存在しているものの、中国・メコンのみの中国主導の地域主義はこれまではなかった。
1995年に設立された「メコン川委員会(MRC: Mekong River Commission)」では当初メコン流域国のみが参加し、中国は1996年より対話パートナーとしての参加に限られており、正式メンバーではなかった。
さらに、中国としては、ADBが進めるGMSに必ずしも満足していたわけではない。GMSの対象国はメコン流域国および中国(雲南、広西)であるが、日本主導のADBのプログラムであるGMSには日本の意図がかなり投影されていた。
GMSでは東に位置する日本と西に位置するインド等をインドシナ経由で道路網を中心としたロジスティクス網で繋ぐ東西回廊が重要であったが、一方で中国が興味を有するのは南北を繋ぐ回廊や鉄道網であるという交通網の整備の方向性が異なっていた。
タイとしては内政が落ち着かない中で時間をかけて地域戦略を立て直したいが、中国の動きが早すぎて、完全に受動的となりフラストレーションが高まっているとされる。そもそもタイは瀾滄江メコンに関する国際会議の開催を最初に提唱したのは自国であったにもかかわらず、それを中国がLMCという「制度」として実現し手柄も持っていったという思いがある。
また、LMCにおいて中国の影響力が過大で自国が軽視されているとも感じている。第一回首脳会議は中国で開催され、中国とタイが共同議長を務めたが、第二回首脳会議はカンボジアで開催され、タイのリーダシップが発揮されない形となった。
タイとしては不満が募るばかりであるが、LMCの路線を変更するのは不可能であるため、現在はメコン開発がLMCに飲み込まれてしまわないためにも「エーヤーワディ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略
(ACMECS: Ayeyawady-Chao Phraya-Mekong Economic Cooperation Strategy)」の復興等を検討しているようだ。
メコンにおける地域組織・パートナーシップ
メコン地域は、諸外国の外交施策により、様々な域外勢力が地域組織・パートナーシップを形成してその影響力行使にしのぎを削っている。メコン各国においても、そうした域外諸国から少しでも有利な経済的協力を得ようと工夫を凝らす。
以下は、代表的なメコン地域における地域組織・パートナーシップの一例である。
開始時期 | 略称 | 名称 | 主導国 | 枠組み |
---|---|---|---|---|
1992年 | GMS | 大メコン圏 (Greater Mekong Subregion) | ADB | メコン+中国 |
1995年 | MRC | メコン川委員会 (Mekong River Commision) | UNDP | メコン+中国 |
2000年 | MGC | メコン・ガンジス川協力機構 (Mekong–Ganga Cooperation) | インド | メコン+インド |
2003年 | ACMECS | エーヤーワディ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略 (Ayeyawady-Chao Phraya-Mekong Economic Cooperation Strategy) | タイ | メコンのみ |
2006年 2008年 2009年 | 日本・メコン | 日本・メコン地域パートナーシップ・プログラム 日・メコン外相会議 日本・メコン地域諸国首脳会議 | 日本 | メコン+日本 |
2009年 | LMI | メコン川下流域開発 (Lower Mekong Initiative) | 米国 | メコン+米国 |
2015年 | LMC | 瀾滄江・メコン川協力 (Lancang-Mekong Cooperation) | 中国 | メコン+中国 |

原加盟国
時期 | 状況 | メンバーシップ |
---|---|---|
2016.3 | 創設 | カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、中国 |
カンボジア王国
ព្រះរាជាណាចក្រកម្ពុជា
Kingdom of Cambodia
- 国土面積は181,035km2 で世界87位、総人口は16,718,971人で世界68位
- 国王を元首とする立憲君主制(選挙君主制)
- 内戦を経て1993年9月24日に王政復古がなされ現在に至る
●首都
プノンペン
ラオス人民民主共和国
ສາທາລະນະລັດ ປະຊາທິປະໄຕ ປະຊາຊົນລາວ
Lao People’s Democratic Republic
- 国土面積は236,800km2 で世界79位、総人口は7,276,000人で世界104位
- 国家主席を元首とする社会主義共和制国家(人民民主共和制)、立法府は一院制の国民議会
- 計画経済から社会主義市場経済に移行したが、国連が定める世界最貧国の一つ。中華人民共和国が主導する経済圏「一帯一路」に参加、「債務のワナ」に陥ることが懸念されている
●首都
ヴィエンチャン
ミャンマー連邦共和国
ပြည်ထောင်စု သမ္မတ မြန်မာနိုင်ငံတော်
Republic of the Union of Myanmar
- 国土面積は676,578km2 (日本の約1.8倍)で世界40位、総人口は54,410,000人で世界26位
- 大統領を元首とする共和制。2021年のクーデターにより、国家行政評議会議長を事実上の国家指導者とする軍事政権に戻った
- 1989年にビルマからミャンマーに国名変更(軍事政権の正統性の観点から併記などの運用の幅あり)
●首都
ネピドー(ネーピードー)
(2006年に旧首都ヤンゴンから移転)
(1989年にラングーンからヤンゴンへ改称)
タイ王国
ราชอาณาจักรไทย
Kingdom of Thailand
- 国土面積は513,120km2(日本の約1.4倍)で世界50位、総人口は6,980万人で世界20位
- 立憲君主制でチャクリー王朝の国王が国家元首。議院内閣制で人民代表院(下院)と、元老院(上院)から成る両院制
- 親軍政党との連立政権だが、2023年8月23日にセーター首相就任で民政復帰


●首都
バンコク
ベトナム社会主義共和国
Cộng hòa xã hội chủ nghĩa Việt Nam
Socialist Republic of Vietnam
- 国土面積は331,212km2 で世界64位、総人口は1,038万人で世界16位
- 社会主義共和制(ベトナム共産党による一党独裁制)。ベトナム共産党の最高職である党中央委員会書記長(最高指導者)、国家元首である国家主席、政府の長である首相、立法府である国会の議長を「国家の四柱」と呼ぶ
- 1986年12月:社会主義に市場経済システムを取り入れるドイモイ政策を採択、中国の改革開放と同様に市場経済路線へと転換
●首都
ハノイ
中華人民共和国
People’s Republic of China
- 国土面積は世界3位、人口は世界2位
- 1949年10月の建国以来中国共産党による事実上の一党独裁体制
- GDPは米国に次いで2位(当時世界第2位だった日本のGDPを中国が抜いたのは2010年)




●首都
北京
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