概要
中欧自由貿易協定(CEFTA: Central European Free Trade Agreement)は、バルカン半島が位置する南東欧にかけての国際貿易協定である。
当初は、ヴィシェグラード・グループ諸国(ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア(当時。現在はチェコ共和国とスロバキアの2か国)によって、1992年12月21日に自由貿易協定が調印、1994年7月に発効した。これら原加盟国である4か国(当時3か国)が位置したのが中欧だったため、この呼称となった。
その後、原加盟国が欧州連合(EU)に加盟するため脱退したが、それと入れ替わるように南東欧の諸国が順次加盟していったため、呼称名と原加盟国の立地にズレが生じている(今のところ改称の動きはない)。
目的
設立当初、原加盟国は、CEFTAを通じて、西欧の機関(EUなど)への統合に向けた取り組みを結集し、ヨーロッパ全体の政治、経済、安全保障、法制度に参加し、民主主義と自由市場経済のノウハウの蓄積と強化することを目的とした。
公式サイトによれば、協定主旨は以下の通り。
物品およびサービスの貿易を強化し、締約国間の貿易障壁を排除し、公正で安定した予測可能な貿易ルールを通じて地域への投資を誘致することを目指しています。この協定は、締約国の規制枠組みを EU および国際基準と調和させることを目指しています。また、知的財産権の保護、競争ルール、国家援助などの問題も扱っています
CEFTA 公式HPより
なお、同公式ページによると、現在の組織ミッションは、「締約国の経済発展に貢献し、投資にとって魅力的な環境を創出し、国民と企業に利益をもたらし、締約国のEUへの統合を支援する」となっている。
つまり、欧州連合(EU)が中心となって構築しているシェンゲン圏や欧州連合関税同盟(EUCU)と対抗する勢力圏を築くことを企図しているのではなく、あくまで、EU圏への加入の途中ステップを整備することを意図して組織化されていると考えられる。
沿革
当初のCEFTA協定は、ヴィシェグラード・グループ諸国(ポーランド、ハンガリー、当時:チェコスロバキア)によって1992年12月21日に調印された。その後、1993年にチェコスロバキアが連邦を解消してチェコとスロバキアがそれぞれ独立、そのまま加盟国の地位を継承した。
その後1996年にスロベニアが、1997年にはルーマニアが、1998年にブルガリアが、2002年にはクロアチアが、2006年にはマケドニア(現:北マケドニア)が加盟した。
2006年4月6日、ブカレストで開催された南東ヨーロッパ首相サミットで、当初の協定の原加盟国はすべて欧州連合(EU)に加盟してCEFTAを離脱していたため、CEFTAを西バルカン諸国の残りに拡大することが決定された。
これにより、2006年12月にアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、北マケドニア、モルドバ、モンテネグロ、ルーマニア、セルビア、およびUNMIK/コソボがCEFTAに加盟することになった。
注)UNMIK:国連コソボ暫定統治機構
これらの国々は、すでに南東ヨーロッパ安定協定の枠組みでお互いに二国間自由貿易協定を交わし合って、自由貿易機関との相互基盤を確立させていたことが功を奏した形となった。
それを受けて、2020年4月現在、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、アルバニアがEUの加盟候補国となっている。
- 1992.12.21 中欧自由貿易協定が調印(1994.7 発効)
- 1993.1.1 チェコ共和国、スロバキアが独立
- 1995.9.11 チェコのブルノで協定が改定
- 1996.1.1 スロベニアが加盟
- 1997.1.1 ルーマニアが加盟
- 1999.1.1 ブルガリアが加盟
- 2003.1.1 クロアチアが加盟
- 2003.7.4 スロベニアのブレッドで協定が改定
- 2004.4.30 ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国、スロバキア、スロベニアが脱退→EUへ
- 2006.1.1 マケドニアが加盟(2019年に北マケドニアに改称)
- 2006.4.6 南東ヨーロッパ首相サミットが開催、CEFTA拡大が採択
- 2006.12.19 南東ヨーロッパの首脳会談、新CEFTA条約が署名、2007年5月1日からの実施が決定
- 2006.12.31 ルーマニア、ブルガリアが脱退→EUへ
- 2007.1.1 アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、セルビア、モンテネグロ、UNMIK/コソボが加盟
- 2013.6.30 クロアチアが脱退→EUへ
組織
- 合同委員会
- 連絡委員会
- 貿易円滑化委員会
- 農業及び衛生植物検疫問題に関する小委員会
- 関税及び原産地規則に関する小委員会
- サービス貿易小委員会
- 非関税措置に関する小委員会
- 投資政策・促進に関する共同作業部会
- CEFTA事務局
加盟国
時期 | 状況 | メンバーシップ |
---|---|---|
1992.12.21 | 創設 | ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア |
1993.1.1 | 独立 | チェコスロバキア→チェコ共和国、スロバキア |
1996.1.1 | 加盟 | スロベニア |
1997.1.1 | 加盟 | ルーマニア |
1999.1.1 | 加盟 | ブルガリア |
2003.1.1 | 加盟 | クロアチア |
2004.4.30 | 脱退 | ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国、スロバキア、スロベニア |
2006.1.1 | 加盟 | マケドニア(2019年に北マケドニアに改称) |
2006.12.31 | 脱退 | ルーマニア、ブルガリア |
2007.1.1 | 加盟 | アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、セルビア、モンテネグロ UNMIK/コソボ |
2013.6.30 | 脱退 | クロアチア |
北マケドニア共和国
Republic of North Macedonia
- 国土面積は25,333km2(九州の約3分の2)で世界148位、人口は208万人で世界145位
- 共和制、国民の直接選挙で選出される大統領が国家元首、議院内閣制、北マケドニア議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界131位、購買力平価(PPP)で世界125位
●首都
スコピエ
アルバニア共和国
Republic of Albania
- 国土面積は28,748km2(四国の約1.5倍)で世界143位、人口は288万人で世界137位
- 共和制、議会における間接選挙によって選出される大統領が国家元首、首相は大統領により任命、アルバニア議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界126位、購買力平価(PPP)で世界120位
●首都
ティラナ
ボスニア・ヘルツェゴビナ
Bosnia and Herzegovina
- 国土面積は51,129km2で世界124位、人口は3,301,000人で世界135位
- 共和制、大統領評議会による集団指導体制、議長は8か月ごとに輪番で交代し、議長は事実上の国家元首、上院・下院の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界110位、購買力平価(PPP)で世界108位
●首都
サラエヴォ
モルドバ共和国
Republic of Moldova
- 国土面積は、33,846km2(九州よりやや小さい)で世界135位、人口は403万人で世界129位(トランスニストリア地域(沿ドニエストル共和国がある)を含む)
- 共和制、国家元首は直接選挙による大統領、大統領が首相を指名し議会の賛成多数の承認を得る、議院内閣制、議会は一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界135位、購買力平価(PPP)で世界142位
●首都
キシナウ
セルビア共和国
Република Србија
Republika Srbija
- 国土面積は88,361km2で世界113位、人口は691万人で世界106位(コソボ除く)
- 共和制で大統領が国家元首、議院内閣制、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界88位、購買力平価(PPP)で世界80位
●首都
ベオグラード
モンテネグロ
Montenegro
- 国土面積は13,812km2(福島県とほぼ同じ)で世界155位、人口は628,000人で世界165位
- 共和制、国家元首の大統領は直接選挙で選出、議院内閣制、モンテネグロ議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界150位、購買力平価(PPP)で世界151位
●首都
ポドゴリツァ
コソボ共和国
Republic of Kosovo
- 国土面積は10,887km2(岐阜県に相当)で暫定世界166位、人口は1,847,708人で暫定世界145位
- 共和制、国連安保理決議1244により国際連合コソボ暫定行政ミッション (UNMIK) の暫定統治下、議会の秘密投票により選出される大統領が国家元首、首相は議会により選出された政府の長で大臣は首相により指名、コソボ議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界146位、購買力平価(PPP)で世界145位
●首都
プリシュティナ
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