概要
ラテンアメリカの進歩と発展のためのフォーラムは、既存の南米諸国連合(UNASUR)に代わる統合団体の設立を目的とした、チリのセバスチアン・ピニェラ大統領(当時)とコロンビアのイヴァン・ドゥケ大統領(当時)提唱によって誕生した組織である。
ラテンアメリカにおけるインフラ整備や、エネルギー開発、地域の防衛、犯罪との闘争と安全、自然災害における予防と対策といったテーマを主体に、参加国の間で対話を通して統合を目指そうとする組織体として誕生した。
- スペイン語: PROSUR, Foro para el Progreso e Integración de América del Sur
- ポルトガル語:PROSUL, Fórum para o Progresso e Desenvolvimento da América do Sul
- オランダ語:Forum voor de Vooruitgang en Integratie van
左派政権主体で発足したUNASURが近年機能不全に陥っていたことに対する右派政権の反応のひとつとされる。
チリ、コロンビア、ペルー、メキシコ4か国による小ぢんまりした組織だが、太平洋同盟(Alianza del Pacífico)は、貿易の発展を主要目的にしてうまく機能している成功体験を活かそうとしたものである。
太平洋同盟には官僚主義的な影響は存在せず、組織の構造もシンプルで、本部は1か所に留めず、加盟国の間で順番に移動させている。大統領に復帰したピニェラはこのような組織を南米全域に発展させる必要性を認識し、コロンビアのドゥケ大統領(当時)と協議を始めたのが設立のきっかけとなった。
ドゥケはベネズエラの紛争に絡み、マドゥロ政権に反対する動きで集まった連合組織「リマ・グループ」を包括させるような形にして、ベネズエラの紛争を外部から民主的圧力を加えて問題を解決する構想と共鳴させ、PROSUL/PROSURの発足に賛同した。
2022年4月3日、チリの新大統領ガブリエル・ボリッチは、同国が同盟への参加を停止すると発表、スリナムは2022年に同盟に加盟するなど、政権移行に絡んで出入りの頻度が上がっている。
活動
2019年3月22日、「南米大統領会議」とも呼ばれる第1回PROSURサミットが、チリのサンティアゴで開催された。これに参加したアルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ペルーの南米8か国は、南米の再生と強化のためのサンティアゴ宣言に署名し、PROSUR創設のプロセスを開始した。
ボリビア、スリナム、ウルグアイの代表は宣言への署名を棄権した。設立経緯から、ベネズエラの代表はサンティアゴのサミットには招待されなかった。
宣言の主な内容は以下の通り。
- 南米諸国の成長、進歩、発展に貢献するより効果的な統合に向け、域内の協調、協力を行う枠組みを構築し、強固にする
- 南米の対話と協力の枠組み、PROSUR創設の提案と、本宣言の事項に沿って対話を深めるよう外相に指示することを承認する
- 本枠組みは明確な機能と、迅速に意思決定を行えるメカニズムを持った構造で、国家間と各国共通の関心事項をもって南米を進展させる
- 各国がインフラ、エネルギー、健康、防衛、安全保障、犯罪、自然災害の対策と管理における問題に統合的、また柔軟に取り組む
- 枠組みに参加するための要件は、民主主義、憲法保障が機能していること、権力分立の基本原理、人権そして自由権の促進、保護、尊重、保護、そして国際法に基づく国家主権、領土保全も同様に機能している
- チリが今後12カ月間、議長国を務め、次はパラグアイに引き継がれる
ミッション
- 南米諸国の成長、進歩、発展に貢献するために、すべての南米諸国の統合を促進、更新、強化する
- 過度の官僚主義を排除し、明確で相互に有益な運営ルールを備えた柔軟で軽量な構造を通じて、国際議題の中心的問題についての合意形成の実践を強化する
- 地域としてのアイデンティティを確認する取り組みを促進する
ビジョン
- 当事者間の対話と協力を通じて、南米におけるさらなる統合と協調行動に向けた漸進的な進歩を可能にする作業プラットフォームとなる
- 持続可能な開発の強化と深化
- 貧困の撲滅
- 機会の平等性の向上
- イノベーション
- 人材の活用
- 住民の起業家精神の推進
加盟国
時期 | 状況 | メンバーシップ |
---|---|---|
2019.3.22 | 創設 | アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ペルー |
2022.4.3 | 参加停止 | チリ |
2022 | 新規加盟 | スリナム |
オブザーバー |
---|
ボリビア、ウルグアイ |
アルゼンチン共和国
Argentine Republic
- 南アメリカ南部に位置し、国土面積は2,780,400km2 で世界8位、人口は4,520万人で世界31位
- 大統領を元首とする連邦共和制国家
- 2度の世界大戦に直接関与せず、各国への農畜産品の輸出により20世紀半ばまでは、世界有数の富裕国
●首都
ブエノスアイレス
ブラジル連邦共和国
Federative Republic of Brazil
- ラテンアメリカ最大の領土・人口を擁する国家で、面積は世界第5位、人口は世界第5位
- 大統領制を敷き、大統領を元首とする連邦共和制
- 南北アメリカ大陸で唯一のポルトガル語圏の国
●首都
ブラジリア
コロンビア共和国
Republic of Colombia
- 国土面積は1,141,000km2(日本の約3倍)で世界25位、人口は5,088万人で世界29位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首、上院・下院の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界44位、購買力平価(PPP)で世界31位
●首都
ボゴタ
エクアドル共和国
Republic of Ecuador
- 国土面積は283,560km2(本州と九州を合わせた広さ)で世界71位、人口は1,764万人で世界67位
- 共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首で行政府の長、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界63位、購買力平価(PPP)で世界64位
●首都
キト
ガイアナ共和国
Republic of Guyana
- 国土面積は214,970km2(本州よりやや小さい)で世界81位、人口は79万人で世界160位
- 立憲共和制、各党の候補者名簿より選出される大統領が国家元首、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界148位、購買力平価(PPP)で世界160位
●首都
ジョージタウン
パラグアイ共和国
Republic of Paraguay
- 国土面積は406,752km2(日本の約1.1倍)で世界58位、人口は713万人で世界104位
- 立憲共和制、直接選挙で選出された大統領が元首、上院と代議院(下院)の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界93位、購買力平価(PPP)で世界101位
●首都
アスンシオン
ペルー共和国
Republic of Peru
- 国土面積は1,285,220km2(日本の約3.4倍)で世界19位、人口は3297万人で世界39位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首、共和国議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界49位、購買力平価(PPP)で世界46位
●首都
リマ
スリナム共和国
Republic of Suriname
- 国土面積は163,270km2(日本の約2分の1)で世界90位、人口は587,000人で世界166位
- 立憲共和制、議会の3分の2以上の賛成によって選出された大統領が国家元首、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界162位、購買力平価(PPP)で世界153位
●首都
パラマリボ
参加停止
チリ共和国
Republic of Chile
- 国土面積は756,950km2(日本の約2倍)で世界37位、人口は1912万人で世界61位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首で行政府の長、上院・下院の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界46位、購買力平価(PPP)で世界43位
●首都
サンティアゴ
オブザーバー
ボリビア多民族国
Plurinational State of Bolivia
- 国土面積は1,098,581km2(日本の約3倍)で世界27位、人口は1,167万人で世界80位
- 立憲共和制、大統領が国家元首で行政府の長、多民族立法議会は上院と代議院(下院)の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界91位、購買力平価(PPP)で世界92位
●首都
ラパス
(憲法上の首都はスクレ)
ウルグアイ東方共和国
Oriental Republic of Uruguay
- 国土面積は176,220km2(日本の約半分)で世界88位、人口は347万人で世界132位
- 立憲共和制、直接選挙で選出された大統領が元首、上院と下院の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界75位、購買力平価(PPP)で世界95位
●首都
モンテビデオ
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