企業が営む事業の種類区分を表す言葉
日本語には、様々な企業が営む事業の種類を表す言葉が存在する。
- 産業
- 業種
- 業界
- 業態
これらを問題視するのは、主に、①就職や転職活動をする人向けの就職情報を提供するサイトや雑誌、②官公庁や企業で統計データを作成する場合のマスタ・コード作成、③顧客を業種・産業別に捉え、自社の組織デザイン(例:業種別営業組織の編成など)に活用する、というシーンが考えられる。
それぞれの語彙が持つ原義の確認と、それぞれの語彙を使って、実際に企業をグルーピングや属性分けをしている状況を実例を用いて整理する。
産業、業種、業界、業態、職種のそもそもを解説
経済学の発展と共に、まず「産業」が、「産業構造」「産業分類」の形で議論され始めた。次いで、企業が誕生し、企業が営む事業の種類を「産業分類」に当てはめることで、「業種」という言葉が用いられ始めた。
実務的には、多少の入り繰りがあるものの、「産業」をより細かく定義したものを「業種」と一般的にはとらえられている。
「業界」は、事業や営業活動そのものより、そこで働く人に焦点を当てた言葉であるため、就職・転職情報を提供するサイトや書籍では、ほぼ「業種」と同義のように扱われているケースが多い。
ただし、「業界」は、医師や弁護士など、特定の資格を有する者でないと営業できない「職種」や「職業」を表すこともあるため、就職・転職情報を提供するサイト・情報誌では、あわせて「職種」も説明されることが多い。
「職種」は、営業職、サービス職、エンジニアなど、職業のスタイルや仕事の種類を意味するため、通常は「業種」をまたがることが多い。異なる業種とされている製造業にも、金融業にも、営業職は存在するからである。
当然、就職や転職は、人(就活生、転職希望者)が、就労の機会を得るために行うので、企業が営む事業の種類そのものより、どんな社会や集団で仕事をするのかに、説明も焦点が行きがちである。
業種と業界はほとんど同じ意味とするサイトも多いことは、就職・転職希望者の情報収集の目的からしても、それほど重要性はないが、「業種」=「職種」と説明するサイトも中にはあるので、この点は注意しておきたい。
同じ青果を扱う店についても、商店街に立地する個人商店から、より大規模はスーパーマーケット、ドラックストア、ディスカウントストア、コンビニエンスストアなど、立地条件、価格帯、品揃え、販売方法が異なる。これを「業態」「フォーマット」と呼んでいる。
それぞれの簡単な例
産業 - クラークの産業分類
- 第一次産業(自然界から狩猟、採集)
- 農業
- 林業
- 水産業
- 第二次産業(自然界から得たものを加工)
- 製造業
- 建設業
- 電気・ガス・水道業
- 第三次産業(無形財、分配することで富を増やす)
- 情報通信業
- 金融業
- 運輸業
- 小売業
- サービス業
業種 - 日本標準産業分類
- 農業,林業
- 漁業
- 鉱業,採石業,砂利採取業
- 建設業
- 製造業
- 電気・ガス・熱供給・水道業
- 情報通信業
- 運輸業,郵便業
- 卸売業,小売業
- 金融業,保険業
- 不動産業,物品賃貸業
- 学術研究,専門・技術サービス業
- 宿泊業,飲食サービス業
- 生活関連サービス業,娯楽業
- 教育,学習支援業
- 医療,福祉
- 複合サービス事業
- サービス業(他に分類されないもの)
- 公務(他に分類されるものを除く)
- 分類不能の産業
業界 - マイナビ新卒紹介から
- メーカー
- 小売
- サービス
- ソフトウェア・通信
- 商社
- 金融
- マスコミ
- 官公庁・公社・団体
業態 - 経済産業省の商業統計
- 百貨店
- 総合スーパー
- 専門スーパー
- コンビニエンスストア
- 広義ドラックストア
- その他のスーパー
- 専門店
- 家電大型専門店
- 中心店
- その他の小売店
- 無店舗販売
引用 別表 「業態分類表」
職種 - 厚生労働省編職業分類
- 管理的職業
- 専門的・技術的職業
- 事務的職業
- 販売の職業
- サービスの職業
- 保安の職業
- 農林漁業の職業
- 生産工程の職業
- 輸送・機械運転の職業
- 建設・採掘の職業
- 運搬・清掃・包装等の職業
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