概要
中央アメリカ議会(PARLACEN)は、中米統合機構(SICA: Sistema de la Integración Centroamericana)の政治的および民主的な代表の地域的かつ常設の機関(立法府)であり、主な目的は中米統合の実現である。グアテマラ共和国のグアテマラシティに本部を置いている。
日本語表記としては「中米議会」とされることも多い。
- スペイン語:Parlamento Centroamericano
- 英語:Central American Parliament
PARLACENは、中米地域における共通の法律や政策の策定、国際協力の促進、地域開発の支援など、幅広い権限を有している。具体的には、加盟国間の協定や条約の締結、地域開発のための予算の承認、国際機関との連携など、多様な活動を行っている。ただし、その権限は加盟国によって異なり、加盟国政府が最終的な意思決定権を保持している点が重要な特徴となっている。
創設までの経緯
1983年に中米紛争(エルサルバドル、グアテマラ、ニカラグアの内戦)の交渉による解決を目指したメキシコ、パナマ、コロンビア、ベネズエラの4か国がコンタドーラ・グループ(el Grupo de Contadora)を形成した。社会・経済問題を含めた解決を狙い、1984年6月から1986年6月まで未公開試案や和平協定案を示したが失敗に終わる。
その後、1985年に結成された支援グループ (アルゼンチン,ブラジル,ペルー,ウルグアイ) と広くさまざまな問題を協議する8か国グループを形成した。ものの、1988年に非民主的としてパナマを追放、リオ・グループとなった。1990年3月にはメキシコ、コロンビア、ベネズエラの3ヵ国グループによってコンタドーラ・グループの解散が公式に宣言された。
こうした中米和平交渉の流れの中で、グアテマラのエスキプラスにて、1986年5月25日に「エスキプラスI」と呼ばれる合意がなされ、中米5か国が和平をめざすことを約束した。
「エスキプラスI」では次の宣言がなされた。
「制度的構造との理解と協力を支援する活動を確立し、補完することが必要である。これらの活動により、地域の平和と中央アメリカの統合の基本要素である対話、共通の発展、民主主義、多元主義を強化することが可能になる。したがって、PARLACEN の設立が必要である。そのメンバーは、政治的かつ参加型の多元主義の原則に従う普通選挙と直接選挙によって自由に選出される。」
コンタドーラ・グループは解散したが、中米統合拡大の構想は残って1987年8月には実際の合意である「エスキプラスII」として結実した。中央アメリカ議会およびその他の政治機関を設立する条約として1987年10月にグアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラスによって調印された。当初、この協定は1990年5月1 日に3 か国 (グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス) のみで発効した文書で、その中で中央アメリカ議会(PARLACEN)が設立された。その最初の公式会議は1991年10月28日にグアテマラシティで行われた。
こうして、中央アメリカ議会(PARLACEN)は、1991年12月13日に調印された米州機構憲章(ODECA)のテグシガルパ議定書によって設立された中米統合システム(SICA)の一部となった。SICAの基本目標は、政党が平等な条件で自由選挙と参加を保証する多元的な民主主義システムにおいて、政治的および思想的代表性を備えた統合を実現することである。
台湾をめぐる問題
台湾の立法機関である立法院は、1999年にPARLACENの常任オブザーバー資格を与えられた。しかし、PARLACENは2022年4月28日に「一つの中国」政策を支持する声明を発表し、アプローチの転換を示した。翌年の2023年8月21日、PARLACEN総会は、台湾の立法機関の常任オブザーバー資格を取り消し、代わりに中国の全国人民代表大会を常任オブザーバーとして含めることを決議した。
この投票は、ニカラグア代表団の要請を受けて行われた。台湾の孤立化を図る中国の切り崩しで、2017年以降、グアテマラを除く5カ国が相次いで中国との国交樹立に踏み切り、今では親中国家が多数を占めていた。
同代表団は、「台湾は国連で主権国家として認められていない」と主張し、「台湾がPARLACENで保持しているオブザーバー資格は、法的地位を欠いているため正当ではない」と主張し、国連における中国の代表に関する国連決議にも言及した。中国政府はこの展開を歓迎した一方で、台湾外交部は声明で「台湾を中米議会から排除する中国の策略に合わせて、ニカラグアの議員団と親中派の議員らが、議会への台湾の長期的な貢献を無視した」と批判した。


組織
- 総会:最高機関、
- 13の常設委員会
- 農業・漁業・環境・天然資源委員会
- 都市開発委員会、住民参加
- 文部科学省
- 女性、子供、青少年、家族委員会
- マクロ経済・金融委員会
- 観光委員会
- 国際関係・移民問題委員会
- 保健・社会保障・人口・労働・法人問題委員会
- 平和・治安・人権委員会
- 統合・貿易・経済発展委員会
- 法務および地域機関委員会
- 政治・政党委員会
- 先住民族およびアフリカ系子孫委員会
- 事務局

加盟国
時期 | 状況 | メンバーシップ |
---|---|---|
1991.10.28 | 創設 | グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、ドミニカ共和国、パナマ |
オブザーバー |
---|
中国(中華人民共和国)、メキシコ、ベネズエラ、プエルトリコ、モロッコ |
グアテマラ共和国
República de Guatemala
Republic of Guatemala
- 国土面積は108,890km2(北海道と四国を合わせた広さよりやや大きい)で世界104位、人口は792万人で世界65位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首で政府の長、共和国議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界66位、購買力平価(PPP)で世界77位

●首都
グアテマラシティ
エルサルバドル共和国
República de El Salvador
Republic of El Salvador
- 国土面積は21,040km2(九州の約半分)で世界148位、人口は649万人で世界109位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首、一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界100位、購買力平価(PPP)で世界104位

●首都
サンサルバドル
ホンジュラス共和国
República de Honduras
Republic of Honduras
- 国土面積は112,090km2(日本の約3分の1)で世界100位、人口は946万人で世界95位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首で政府の長、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界102位、購買力平価(PPP)で世界107位

●首都
テグシガルパ
ニカラグア共和国
República de Nicaragua
Republic of Nicaragua
- 国土面積は129,494km2(北海道と九州を合わせた広さ)で世界96位、人口は630万人で世界110位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首で政府の長、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界132位、購買力平価(PPP)で世界121位

●首都
マナグア
ドミニカ共和国
República Dominicana
- 国土面積は48,730km2(九州に高知県を合わせた広さ)で世界127位、人口は1084万8000人で世界84位
- 立憲共和制、大統領が元首、上院・下院の両院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界65位、購買力平価(PPP)で世界72位

●首都
サントドミンゴ
パナマ共和国
República de Panamá
Republic of Panama
- 国土面積は75,416km2(北海道よりやや小さい)で世界118位、人口は432万人で世界126位
- 立憲共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首で行政府の長、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界75位、購買力平価(PPP)で世界84位

●首都
パナマ市
あわせて読みたい



コメント