概要
南部アフリカ関税同盟(SACU: Southern African Customs Union)は、1910年に設立された地域関税同盟で、現存する関税同盟の中でも最古のものとされる。現加盟国は、南アフリカ共和国、ボツワナ、レソト、ナミビア、エスワティニ(旧スワジランド)の5か国になる。ザンビアが加盟申請中とされ、本部はナミビアの首都ウィントフックにある。
同地域に所在する 南部アフリカ開発共同体(SADC)がその前身である南部アフリカ開発調整会議(SADCC)から、当初はアパルトヘイト政策を推進する南アフリカ共和国に政治的・安全保障的に対抗するために設立されたのとは事情を異にし、南部アフリカ関税同盟(SACU)の方は、南アフリカ共和国との経済的連携を主眼に置いて設立されたのが特徴である。
このことから、南部アフリカのサブ地域情勢は、良くも悪くも、南アフリカ共和国という地域大国とどう付き合っていくかの路線闘争の歴史でもある。
現存の関税同盟は、1969年12月に南アフリカ共和国、ボツワナ、レソト、当時のスワジランド(現エスワティニ)の4か国が締結した関税同盟協定に基づき、1970年3月に発足したものが直接の元となる。
域内産品の無関税流通、域外からの輸入品に対する共通関税の賦課などのほか、ボツワナを除く3国間の通貨協定によって、南アフリカ共和国の通貨であるラントをレソト、エスワティニにおいても法定通貨として使用するという措置をとる。ボツワナ、レソト、エスワティニの3か国は、対外貿易面で南アフリカ共和国への依存度が高く、しかも内陸国であるため鉄道その他輸送手段の面で同国に頼らざるをえないところからこの関税同盟が誕生した。1990年、独立したナミビアも加盟した。
正式発足までの過程
1889年、イギリスのケープ植民地とオレンジ自由国のボーア共和国との間で、この地域で最初の関税同盟が設立された。1891年にイギリスのベチュアナランド(現ボツワナ)とバストランド(現レソト)が加盟し、続いて1893年にベチュアナランド保護領、1899年にナタール共和国が加盟した。この過程と並行して、南アフリカ共和国のボーア共和国とスワジランド(当時は南アフリカ共和国の保護領)も1894年に関税同盟を結成した。
第二次ボーア戦争(1899.10.11 – 1902.5.31)の後、1903年に南部アフリカ関税同盟が設立され、以前の協定に取って代わった。原加盟国は、ケープ植民地(イギリスのベチュアナランドが1895年に併合)、バストランド、ベチュアナランド保護領、ナタール、オレンジ・リバー植民地(旧オレンジ自由国)、トランスバール植民地(旧南アフリカ共和国)、南ローデシア(現ジンバブエ)だった。スワジランドは1904年に加盟し、北西ローデシア(現ザンビアの一部)は1905年に加盟した。
1906年、1903年の協定に代わる別の条約が署名、以前の加盟国はすべて維持されることとなった。現在の構成は、南アフリカ連合とベチュアナランド、バストランド、スワジランドの高等弁務官地域との間の関税同盟協定に基づいて1910年に設立された。
南ローデシアと北西ローデシア(1911年以降は北ローデシアとなる)は1910年協定への参加を拒否したが、一部の変更および例外はあるものの、南アフリカおよび高等弁務官領土との共通関税および自由貿易協定は維持した。
組織
- 閣僚会議
- 委員会
- 税関技術連絡委員会
- 通商産業連絡委員会
- 農業に関する特別小委員会
- SACU裁判所
- 事務局
原加盟国
時期 | 状況 | メンバーシップ |
---|---|---|
1970.7 | 現SACUが発足 | 南アフリカ共和国、ボツワナ、レソト、エスワティニ(旧スワジランド) |
1990.3 | 新規加盟 | ナミビア(独立) |
ボツワナ共和国
Republic of Botswana
- 国土面積は581,730km2(日本の約1.5倍)で世界47位、人口は238万人で世界142位
- 共和制、国民議会によって選出される大統領が国家元首で行政府の長、議院内閣制だが首相職はない、国民議会の一院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界117位、購買力平価(PPP)で世界118位
●首都
ハボローネ
エスワティニ王国
Kingdom of Eswatini
- 国土面積は17,363km2(四国よりやや小さい)で世界153位、人口は116万人で世界156位
- 王制、国王を国家元首とする君主国、絶対君主制に近い、国王が王室諮問評議会の助言をもとに下院議員の中から首相を任命、半大統領制、首相は大統領が任命、上院・下院からなるリバンドラの二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界157位、購買力平価(PPP)で世界149位
●首都
ムババーネ
レソト王国
Kingdom of Lesotho
- 国土面積は30,355km2(四国の1.6倍)で世界137位、人口は214万人で世界144位
- 立憲君主制、国王が国家元首、議院内閣制、上院・下院の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界166位、購買力平価(PPP)で世界159位
●首都
マセル
南アフリカ共和国
Republic of South Africa
- 国土面積は122万km2(日本の約3.2倍)で世界24位、人口は5,752万人で世界26位
- 全国州評議会(上院)・国民議会(下院)の両院制、大統領は、国民議会の議決で選出される
- アフリカ唯一のG20参加国で、1994年にアパルトヘイト政策を撤廃
- 金、ダイヤモンド、プラチナ、ウラン、鉄鉱石など鉱業資源が豊富
●首都
プレトリア(行政)
ケープタウン(立法)
ブルームフォンテーン(司法)
新規加盟国(1990年)
ナミビア共和国
Republic of Namibia
- 国土面積は825,418km2(日本の約2.2倍)で世界33位、人口は254万人で世界140位
- 共和制、直接選挙で選出される大統領が国家元首、半大統領制、首相と閣僚は大統領が任命、国民評議会(上院)と国民議会(下院)の二院制
- 名目国内総生産(GDP)は世界139位、購買力平価(PPP)で世界129位
●首都
ウィントフック
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