概要
美術史には、❶絵画・建築・彫刻・工芸品など造型芸術の歴史、❷それらを歴史的に研究する学問(美術史学)の2つの意味がある。
以下は、❶に拠った構成としている。
❷については本章でさわりだけを解説する。
美術史は、美術作家の伝記を残すことから始まったとされる。美術史という学問は『古代美術史』(1764)を書いたヴィンケルマン【独】(1717 – 68)とされている。
美術作家の伝記だけではなく、美術の時代や民族にとっての意味・価値を研究するようになった。
ヴェルフリン【瑞】は、美術作品の様式の変遷を追い、純粋に美術的な価値を追い求めたが、リーグル【墺】(1858 – 1905)は、芸術様式が生まれる時代精神を探ろうと、「芸術的意志」という概念を提唱した。
リーグルの流れを汲むヴォリンガー【独】(1881 – 1965)は、「抽象」という概念に着目することで、抽象と具象(リアリズム)がせめぎ合いながら美術史を展開・交替させていくとする見方につながることになる。
ここまで、美術史学は、
- 作家の伝記的研究
- 美術の様式とその変遷の研究
- 美術作品を通じて「美」とは何かと考える研究
を主体に行われていた。
パノフスキー【米】(1892 – 1968)は、図像学(イコノグラフィ)に「イコノロジー」という新たな意味を付与し、図像が担っている背景あるいは思考の源泉を辿る研究を提示した。
以後はこの、抽象的意味論を解き明かそうとする立場、具象的な様式や技法から美を追求しようとする立場が交互に強調されていく。
先史美術 Prehistoric Art
石器時代
旧石器時代後期に入った頃、実生活において有用に機能するとは考えにくい遺物・遺構が登場した。洞窟絵画や岩陰彫刻、丸彫彫刻、獣骨などに刻まれた刻線画など。
古代美術 Ancient Art
エジプト美術
- ギザのピラミッド 第4王朝(BC.2500頃)
- カルナック神殿 BC20世紀中頃から建設が始まる
アマルナ美術/アマルナ様式
- ネフェルティティの胸像 エジプト新王国時代の第18王朝(BC14世紀中頃)
メソポタミア美術
- 王城の門
シュメール美術 BC.3400 – BC.2000頃
- ウルのスタンダード(旗章、軍旗) BC.2600頃
- 女王の竪琴(リラ) BC.2600頃
アッカド美術 BC.2500 – 1790頃
- ナラムシンの戦勝碑 BC.2230頃
ヒッタイト美術 BC.2000 – 1000頃
- スフィンクス門 BC.1450 – 1200頃
バビロニア美術 BC.1800 – 1595頃
アッシリア美術 BC.1500頃 – 612
- 翼のある魔神 BC.870
- ニムルドの象牙 BC.9世紀 – 7世紀
ペルシア美術 BC.3000 – 642.AD
彩文土器文化
エラム文化
- ナピル・アス立像(BC.13世紀)
マルリク文化
ルリスタン青銅器文化
アケメネス朝美術 BC.550 – 330
パルティア美術
ササン朝美術
バクトリア美術
ガンダーラ美術
- ガンダーラ仏(紀元1-2世紀)
フェニキア美術
- バアル像(BC.15-13世紀頃)
- タブニト王のエジプト風石棺(BC.500頃)
古代南アラビア美術
- カタバニア人によって作られたライダーを乗せた青銅色のライオン(BC.75 – 50頃)
- シャブワの王宮の柱頭の装飾(BC.3世紀前半)
エーゲ海美術 BC.2800 – 1100頃
ミノア美術 BC.2000 – 1400頃
キクラデス美術 BC.1900 – 1100頃
ミケーネ美術 BC.1600 – 1100頃
- ミケーネのあぶみ壺(BC.1400 – 1200)
古代ギリシア美術
幾何学様式
- アンフォラ(BC.8世紀)
ギリシア・アルカイック
ギリシア古典期
- ミュロンの円盤を投げる人(BC.480頃 – BC.445)
ヘレニズム美術
- ミロのヴィーナス(製作年:BC.130-BC.100頃)
エトルリア美術
- カピトリーノの狼(製作年には諸説アリ)
- 夫婦のサルコファガス(夫婦の石棺)(BC.520頃)
ローマ美術
- プリマポルタのアウグストゥス(BC.28/27年以降)
- コロッセオ(AD.80)
- コンスタンティヌス凱旋門(AD.315)
ケルト美術
- アグリスの兜(BC.4世紀)
インド美術
- アショーカの獅子柱頭(BC.250頃)
中国美術
- 金縷玉衣(南越王趙莫)(BC.124頃)
日本美術
縄文時代
弥生時代
中南米
オルメカ美術
チャビン美術
中世美術 5-14世紀
初期キリスト教美術
- “ひげのないキリスト” コンスタンティナ廟堂モザイク(4世紀半ば)
- ”よき羊飼い”の図像 プリシッラのカタコンベ(3世紀後半)
ビザンチン美術(ビザンツ美術)
- ラヴェンナのモザイク
- フレスコ画イコン『復活』(キリストの地獄への降下、主の復活、冥府降下)
初期中世美術
メロヴィング朝美術
カロリング朝美術
オットー朝美術
- キボリウムの漆喰レリーフ|サン・ピエトロ・アル・モンテ修道院
ヴァイキング美術
- スターヴ教会にある木彫り
- ペンリス宝庫から出土した銀製の円環状のブローチ
●様式の変遷
- オーセベルク様式:オーセベルグ船の詳細
- ブローア様式:ブローア手綱
- ボッレ様式:ヘーゼビューのブロンズ ペンダント
- イェリング様式:ゴームの杯
- マンネン様式:マンネンの斧頭
- リンゲリーク様式:ヴァン・ストーン
- ウルネス様式:アップランドのルーン文字碑文 871
アングロ=サクソン美術
- サットン・フーのショルダークラスプ
- グリンバルド福音書に登場する福音伝道者の肖像画
ケルト美術
初期イスラム美術
- 対峙するアイベックスを描いたイランのレリーフ銘板
- メスキータの円柱の森
南アジア
仏教美術
- マトゥーラ様式のブッダの立像
ヒンドゥー美術
東南アジア
ボロブドゥール美術
アンコール美術
パガン美術
スコータイ美術
- ラームカムヘーン像|スコータイ遺跡
東アジア
唐代美術
- 八十七神仙図巻|呉道玄
- 歴代帝王図|閻立本
- 照夜白図|韓幹
宋代美術
- 瀟湘図|董源
- 早春図|郭煕
- 黄河逆流|馬遠
元代美術
- 天池石壁図|黄公望
- 洞庭漁隠図|呉鎮
- 容膝斎図|倪瓚
- 青卞隠居図|王蒙
中央・南アメリカ
モチェ美術
マヤ美術
ナスカ美術
- ハチドリ|ナスカの地上絵
テオティワカン美術
ロマネスク美術
ニコラ・ド・ヴェルダン Nicholas de Verdun(1130頃 – 1205頃)
ゴシック美術
フランス
ドイツ圏
ポーランド
イギリス
イタリア
初期イタリア美術
父:ニコラ・ピサーノ Nicola Pisano(1220年代頃 – 1280年代頃)
子:ジョヴァンニ・ピサーノ Giovanni Pisano(1250頃 – 1315頃)
チマブーエ Cimabue(1240頃 – 1302頃)
- 荘厳の聖母(6人の天使に囲まれた荘厳の聖母)(1280頃)
- 聖母子と二人の天使(1280頃)
- サンタ・トリニタの聖母(1283–1291)
アンブロージョ・ロレンツェッティ Ambrogio Lorenzetti/Ambruogio Laurati(1290頃 – 1348)
- 善政の寓意(1338-1339)の一枚
- 都市における善政の影響(1338 – 1340)
- 神殿への贈呈 シエナ大聖堂 (1342)
ピエトロ・ロレンツェッティ Pietro Lorenzetti/Pietro Laurati(1280頃 – 1348)
- 『最後の晩餐』アッシジのサン・フランチェスコ聖堂下堂(1310 – 1320)
ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ Duccio di Buoninsegna(1255/1260頃 – 1319頃)
- 『ルチェッライの聖母』(1285)
- 『マエスタ(荘厳の聖母)』(玉座の聖母子と12人の天使、19人の聖人)(1308 – 1311)
ジョット・ディ・ボンドーネ Giotto di Bondone(1267頃 – 1337)
- サンタ マリア ノヴェッラの十字架(1290 – 1295)
- 『サンダミアーノの祈り』(十字架の奇跡)サン・フランチェスコ大聖堂のフレスコ画(1295 – 1299)
- スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画(1305)
- 『荘厳の聖母』(オンニサンティの聖母)(1310頃)
- 『聖フランシスコの嘆き』バルディ礼拝堂
- ステファネスキの三連祭壇画(1320)
シモーネ・マルティーニ Simone Martini(1284頃 – 1344)
- 『ロベール・ダンジューに王冠を授けるトゥールーズの聖ルイ』(1317)
- 『アレクサンドリアの聖カタリナの多翼祭壇画』(1320頃)
- 『聖女マルガリータと聖アンサヌスのいる受胎告知』(1333)
- 『オルシーニ多翼祭壇画』(1333 – 1340)
国際ゴシック美術
ピサネロ Pisanello(1395頃 – 1455頃)
- 『公女の肖像』(エステ家の公女の肖像)(1435 – 1445)
- 『聖エウスタキウスの幻視』(1438 – 1442)
- 『聖ゲオルギウスと王女』(1433 – 1438)
- ジャンフランチェスコ1世ゴンザーガ勲章(1439 – 1440)
- 『馬の頭』のデッザン(1433 – 1438)
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ Gentile da Fabriano(1360/1370頃 – 1427)
- 『東方三博士の礼拝』(1423)
ロレンツォ・モナコ Lorenzo Monaco(1370頃 – 1425)
- 『受胎告知の三連祭壇画』(1410 – 1415)
ベルナト・マルトレル Bernat Martorell(1390頃 – 1452)
- 『ドラゴンを倒す聖ゲオルギオス』 (1430 – 1435)
ランブール兄弟(リンブルク兄弟)
- 『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』(1412 – 1416)
コラール・ド・ラン Colart de Laon(活動期1377 – 1411)
- 『寄進者オルレアン公ルイ1世のいるゲツセマネの祈り』(1405 – 1408)
『ウィルトンの二連祭壇画』(1395 – 1399頃)
シュテファン・ロッホナー Stefan Lochner(1400頃 – 1451)
- 『薔薇垣の聖母』(1450頃)
近世美術 15‐18世紀
ルネサンス
イタリア初期ルネサンス
- マンテーニャ(1431 – 1506)
- ラファエロ(1483 – 1520)
- ダ・ヴィンチ(1452 – 1519)
- ミケランジェロ(1457 – 1564)
15世紀の北方美術
- ファン・アイク兄弟【蘭】
- ボッス【蘭】(1462 – 1518)
- デューラー【独】(1471 – 1528)
- ブリューゲル父子【蘭】
イタリア盛期ルネサンス
マニエリスム
- ヴェロネーゼ【伊】(1528 – 1588)
- グレコ【西】(1541 – 1613)
北方ルネサンス
バロック
- ベルニーニ【伊】(1598 – 1680)
- プッサン
- ベラスケス【西】(1599 – 1660)
- リューベンス
- レンブラント【蘭】(1606 – 1669)
ロココ
- ヴァトー
- ブーシェ【仏】(1703 – 1770)
- フラゴナール【仏】(1732 ‐ 1806)
シノワズリー
近代美術 19世紀
新古典主義
- ダヴィッド【仏】(1748 – 1825)
- アングル【仏】(1780 – 1867)
ロマン主義
- ジェリコー【仏】(1791 – 1842)
- ドラクロワ【仏】(1798 – 1863)
写実主義
- ドーミエ【仏】(1808 – 1897)
- ミレー【英】(1829 – 1896)
- クールベ【仏】(1819 – 1877)
印象主義
- マネ【仏】(1832 – 1883)
- モネ【仏】(1840 – 1926)
- ドガ【仏】(1834 – 1917)
- ルノワール【仏】(1841 – 1919)
- シスレー【仏】(1839 – 1899)
象徴主義
- モロー【仏】(1826 – 1898)
- ルドン【仏】(1840 – 1916)
後期印象主義
- セザンヌ【仏】(1839 – 1906)
- スーラ【仏】(1859 – 1891)
- ゴッホ【独】(1781 – 1839)
- ゴーギャン【仏】(1848 – 1903)
世紀末絵画(世紀末美術)
- ドニ【仏】(1870 – 1943)
- クリムト
- ムンク【ノルウェー】(1863 – 1944)
- シーレ
ナビ派
- ボナール
- ヴェイヤール
現代美術 20世紀
ベル・エポック
アールヌーボー
アールデコ
ドイツ表現主義
- キルヒナー
- ノルデ(ブリュッケ)
- カンディンスキー【露】(1866 – 1944)
- パウル・クレー【瑞】(1879 – 1940)
フォーヴィズム
- マチス【仏】(1869 – 1954)
- ドラン
- ブラマンク
キュービズム
- ピカソ【西】(1881 – 1973)
- ブラック
- グリス
未来派
- ボッチョーニ【伊】(1882 – 1916)
- ルッソーロ【伊】(1885 – 1947)
- カッラ
ピュリスム
- オザンファン【仏】(1886 – 1966)
- ジャンヌレ
オルフィスム
- ピカビア
- ドローネ
- クプカ
- レジャ
素朴派
- ルソー【仏】(1844 – 1910)
- セラフィーヌ
- シャガール【露】(1887 – 1985)
ダダイズム
- デュシャン
- アルプ
- ピカビア
バウハウス
- グロピウス
デ・スティル
- モンドリアン【蘭】(1872 – 1944)
エコール・ド・パリ
- ユトリロ【仏】(1883 – 1953)
- モジリアーニ【伊】(1884 – 1920)
- スーティン【仏】(1894 – 1943)
- キスリング【仏】(1891 – 1953)
ヴォーティシズム
- ルイス【米】(1912 – 1962)
- ロバーツ
シュルレアリスム
- エルンスト【独】(1891 – 1976)
- マッソン【仏】(1896 – 1987)
- タンギー【米】(1900 – 1955)
- ダリ【西】(1904 – 1989)
- マグリット【白】(1898 – 1967)
絶対主義
- マレーヴィッチ【露】(1878 – 1935)
抽象表現主義
- クーニング
- スティル
- ポロック【米】(1912 – 1956)
- ニューマン【米】(1905 – 1970)
- ロスコ【米】(1903 – 1970)
アンフォルメル
- フォートリエ【仏】(1898 – 1964)
- デュビュッフェ【仏】(1901 – 1985)
構成主義
- リシツキー
- ロドチェンコ
- タトリン
キネティックアート
- シェフェール「視覚芸術探求グループ」
ミニマリズム
- ステラ【米】(1935 – )
- ジャッド【米】(1928 – )
- モリス
- フレイヴィン
アルテポーヴェラ
- ピストレット
- ゾリオ
ポップアート
- ジョーンズ【米】(1930 – )
- ラウシェンバーグ【米】(1925 – )
- ウォーホール【米】(1930? – )
- ハミルトン【英】(1922 – )
アースワーク
- スミッソン
- ハイザー
コンセプチュアルアート
- コスス
- バリー
- ボックナー
- ビューラン
- アンダーソン
シミュレーショニズム
- レヴィン
- マッカラム
- ホルツァー
- クルガー
新表現主義
- シュナーベル
- サーレ
- ボロフスキー
- キーファー
- クレメンテ
美術史 Art History
先史美術 | Prehistoric Art |
古代美術 | Ancient Art |
中世美術 5-14世紀 | Medieval Art |
近世美術 15‐18世紀 | Early Modern Art |
近代美術 19世紀 | Modern Art |
現代美術 20世紀 | Contemporary Art |
参考リンク
美術史 - Wikipedia
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