欧州委員会委員長について
欧州委員会は欧州連合の政策執行機関(行政機関)として、法令の立案、政策の施行、法の執行、国際条約の交渉など、欧州連合(EU)の平時の行財政運営を担っている。
委員会は27人の委員による合議制で、1つの加盟国につき1人の委員が選出される。委員には自らの出身国よりも欧州連合全体の利益の方を代表することが求められている。27人の委員のうち1人が欧州委員会委員長となる。欧州委員会委員長を含めた各委員の任期は5年である。
委員長は欧州委員会の委員の担当職域を割り当て、また必要であればその担当職域の変更や委員の解任を行なうことができる。また委員長は委員会としての政策方針やすべての法案を策定する。
欧州委員会委員長は、欧州理事会と欧州議会によって任命される。委員長は委員会とともに、両者に対して不信任を決議することができる欧州議会に対して責任を負う。この形態はほぼ議院内閣制ともいえる体制になっている。
歴代の委員会は委員長の名をもって呼ばれる。例えば、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が率いるのは、フォン・デア・ライエン委員会となる。
欧州連合(EU)には理事会(Council)、議会(Parliament)および委員会(Commission)という主要機関がある。それぞれの長はすべて英語でPresidentと呼ばれている。駐日EU代表部ではこれら3人のPresidentsの日本語を区別し、理事会と議会は「議長」、委員会は「委員長」としている。
- 欧州理事会議長 President of the European Council(大統領に比せる)
- 欧州委員会委員長 President of the European Commission(首相に比せる)
- 欧州議会議長 President of the European Parliament(国会議長に比せる)
3共同体(1951年 – 1967年)
- 1951.4.18 パリ条約により欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC: European Coal and Steel Community)が設立
- 1958.1.1 欧州経済共同体(EEC: European Economic Community)、欧州原子力共同体(EAEC: European Atomic Energy Community, Euratom<ユーラトム>)が設立
代
氏名
期
在任期間
事績
1
1
1958.1.1
–
1962.1.9
2
1962.1.9
–
1967.6.30
1962.4.17 シャルル・ド・ゴール仏大統領が推進するフーシェ計画が頓挫する
1962.10 経済通貨同盟の計画とスケジュールを閣僚理事会と欧州議会に提出
1963.1.22 仏独協力条約(エリゼ条約)が署名
1964.12.15 仏の要請に西独が応じ、委員会は共通穀物価格を定め、共通農業政策(CAP)への資金提供に関する提案を提出することを命じられる
1966.1 ルクセンブルクの妥協(ルクセンブルク協定):加盟国は自国の国益に影響するような決定には拒否権を行使可能とする
1967.7 シャルル・ド・ゴール仏大統領の代表を送らない「空席戦術」によりEEC委員長を辞任
ECs(1967年 – 1993年)
- 1967.7.1 ブリュッセル条約が発効し、3つの共同体(欧州石炭鉄鋼共同体・欧州経済共同体・欧州原子力共同体)の組織体制がひとつに統合される
3つ全ての共同体を共通の予算の下で運営する機関として、欧州委員会と欧州連合理事会が設置された。
代
氏名
期
在任期間
事績
2
3
1967.7.2
–
1970.7.1
1969 ハーグ欧州理事会で経済通貨統合 (EMU) 、欧州政治協力 (EPC)の2つの新たな枠組みを創設
1970 加盟国の負担金のみでなく、関税や域外から輸入される農産品に対する課税、付加価値税による欧州経済共同体独自の歳入を可能にする
3
4
1970.7.2
–
1972.3.1
1970.10 ヴェルナー報告書が提出:3段階を経る経済通貨同盟の詳細な計画
デンマーク、アイルランド、ノルウェー、イギリスとの加盟交渉を開始
イタリアでの選挙に立候補するために辞任
4
5
6
1973.1.6
–
1977.1.5
6
7
1977.1.6
–
1981.1.19
7
8
1981.1.20
–
1985.1.6
1981.1.1 第2次拡大(ギリシャ)
1982.4.2 – 6.14 フォークランド戦争
この間、欧州委員会の欧州諸共同体加盟国政府や欧州議会に対する影響力は増大し、このため欧州委員会は権力闘争に明け暮れる
8
9
1985.1.7
–
1988
1985.2.1 欧州諸共同体からのグリーンランド脱退
1985 欧州司法裁判所がグラヴィエ判決を下し、国籍による差別を否定
1986.1.1 第3次拡大(ポルトガル、スペイン)
1986.2 単一欧州議定書が調印
1986 欧州司法裁判所がマーシャル判決を下し、性別による差別を否定
1987 トルコを加盟候補国とする
1988 ドロール報告書で経済通貨統合が盛り込まれる
第一審裁判所が設立
10
1989
–
1992
1989 欧州司法裁判所がコーワン判決を下し、国籍による差別を否定
ドロール報告書が発表
欧州議会が基本的な権利と自由の宣言を採択
第3回欧州議会議員選挙が実施
スペインとポルトガルが欧州通貨制度に加わる
1989.11.9 ベルリンの壁崩壊
1989.12 第4次ロメ協定が調印
1990 シェンゲン協定施行協定が調印
1990.10.3 東西ドイツ再統一
1991.4.1 欧州復興開発銀行(EBRD)が設立
1991 欧州司法裁判所がシュテッケル判決を下し、性別による差別を否定
欧州委員会に人道援助局 (ECHO) が設置
1991.11.17 エネルギー憲章に関する条約が調印
1991.12 ソビエト連邦の崩壊
1992.2.7 マーストリヒト条約が調印
欧州連合(EU)(1993年 – )
- 1993.11.1 マーストリヒト条約発効により欧州連合(EU: European Union)が発足
- 1999.5.1 アムステルダム条約が発効
- 2003.2.1 ニース条約が発効
- 2009.12.1 リスボン条約が発効
- 2019.3.29 イギリスの欧州連合離脱(ブレグジット)
代
氏名
期
在任期間
事績
8
11
1993
–
1995.1.24
1993.1.1 予算改革、欧州単一市場の導入
1994.1.1 欧州経済領域(EEA: European Economic Area)が発効
1994.1.1 欧州通貨機構が設立
地域委員会がマーストリヒト条約により設立
欧州投資基金が設立
第4回欧州議会議員選挙が実施
1995.1.1 第4次拡大(オーストリア、フィンランド、スウェーデン)
マーストリヒト条約の発効を受け欧州連合が発足して初の委員会となる。任期が短いのは欧州議会議員の次の選挙に合わせたため
9
12
1995.1.25
–
1999.3.15
1997.10.2 アムステルダム条約が調印
1999.1.1 ユーロ導入(ERM II)
1999 欧州不正対策局(OLAF)を設置
サンテール委員会の一部の委員が関連する汚職が告発、報告書が公表されるその日に総辞職
–
10
13
2000.1.22
–
2004.11.21
2001.2.26 ニース条約を調印
2004.5.1 第5次拡大前半(キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア)
2004.10.29 欧州のための憲法を制定する条約が署名
2004年10月31日で任期を終えるはずだったが、後任のバローゾ委員会の人事案が欧州議会での承認を受けることができなかったため、同年11月21日まで任期が延長
11
12
16
2014.11.1
–
2019.12.1
2016.5.24 GDPR(一般データ保護規則)が発効
組織再編:
❶トップダウン機能の強化
❷プロジェクト体制による施策運営
①雇用・成長・投資・競争力
②デジタル単一市場
③エネルギー結合
④ユーロと社会対話
⑤より良い規制と機関間の事務
⑥予算と人材
⑦世界の中のヨーロッパ
13
17
2019.12.1
–
(現職)
初の女性欧州委員長
2019年末から始まったCOVID-19パンデミックが翌年3月に欧州でも急拡大、各国は自国民を守るためシェンゲン協定を一時停止して国境を閉鎖
2020.2.1 イギリスがEU離脱
2022.2.24 ロシアのウクライナ侵攻
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