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標準原価の設定者 Who Should Set the Standard ?

標準原価の設定者 Who Should Set the Standard ? マネジメント
標準原価の設定者 Who Should Set the Standard ?

標準原価の設定者 Who Should Set the Standard ?

誰が標準原価(原価標準)を設定すべきかという問いは、誰が予算編成を担当すべきかと問うことと同義である。

標準原価はトップマネジメントが設定することができるし、組み立てラインの生産従事者(工員)が設定することができるし、その間の適当な階層のマネジャーでも可能だし、それらの組み合わせで設定してもよい。

それは予算編成の場合の議論と同様に、以下のような方法論で、標準原価を設定、原価計算制度を運用して変動予算にまでそれを活用することまで可能である。

  1. 参加型(Participative):ボトムアップ型
  2. 権威型(Authoritative):トップダウン型
  3. 合議型(Consultative):ミドルアップ型/トップ&ボトム・サンドイッチ型

参加型(Participative)の標準原価設定プロセスは、下位階層マネジャーと、設定される標準から直接影響を受ける生産現場の工員の話し合い・調整によって標準原価を決定する。

権威型(Authoritative)の標準原価設定プロセスは、職責上の権利としてマネジメント層が標準原価を決めた後、それを社内に周知する。

合議型(Consultative)の標準原価設定プロセスは、参加型(Participative)権威型(Authoritative)のコンビネーションである。シニアマネジャーが下位階層マネジャーに標準原価の素案を求め、シニアマネジャーがそれをたたき台として標準原価案を取りまとめ、社内の関係各所にそれを通知する。

いずれの方法論もデメリット/メリットが存在する。

参加型(Participative)の標準原価設定プロセスの功罪は以下の通り。

参加型標準原価設定プロセスのメリット
  • 生産現場の従業員が標準原価設定作業に直接参加できる場合は、自らの意見が採り入れられて設定された標準原価であるから、これを現場で受け入れることはたやすい
  • 実際に生産現場で製造に携わる専門家の意見から出た標準原価だから、合理的水準であり実現可能な目標として相応しい
参加型標準原価設定プロセスのデメリット
  • 現場の従業員の意見をベースにしたものだから、必ずしも企業の戦略目標と一致しているとは限らない
  • 現場の従業員の意見を参考にして設定されたものであるから、現場管理のために掲げられたオペレーション・ルールや、業務目標と整合しているとは限らない

権威型(Authoritative)の標準原価設定プロセスの功罪は以下の通り。

権威型標準原価設定プロセスのメリット
  • 原価に影響を与える全ての要素を考慮することができ、適切な検討を経た標準設定が可能になる
  • 戦略的目標などの経営陣の期待値を標準原価に込めることが容易である
  • 参加型など他の方法論と比較して、標準原価設定プロセスを迅速に回すことができる
権威型標準原価設定プロセスのデメリット
  • 標準原価を押し付けられる現場の従業員が自ら守るべき標準原価と考えることができずに、これを受け入れようとしない恐れがある
  • 自分達の標準原価という意識が薄いと、現場従業員に標準原価の達成意欲を持たせにくく、業務に対するモチベーションも低下する可能性がある

合議型(Consultative)の標準原価設定プロセスの功罪は以下の通り。

合議型標準原価設定プロセスのメリット
  • シニアマネジャーが考えられる範囲で全ての要素を想定した中で標準原価を設定することができる
  • 下位階層のマネジャーや生産現場の従事者からのインプットは、標準原価を設定するシニアマネジャーにとって有益な情報となる
  • シニアマネジャーが経営層の期待を標準原価に反映させることが比較的容易となるため、戦略的目標やゴールを標準原価に落とし込みやすい
  • 原価交渉に時間を割かないため、圧倒的に、参加型標準原価設定プロセスにかかる時間より短期で標準原価設定にまでこぎつけることが可能である
  • 生産現場の従事者から、参加型で決められたものと同程度には最終的に決まった標準原価を受け入れられる可能性が高い。なぜなら、合議型では彼らの意見を取り入れるプロセスが用意されているからである。さらに、自分たちの意見がマネジメント層の意思決定に反映されたとの認識が強まれば、参加型より最終的な標準原価に対するコミットメントが強まる可能性まで考えられる
合議型標準原価設定プロセスのデメリット
  • 権威型標準原価設定プロセスより、最終決定に至るまでの時間が長くなるのは間違いない
  • 生産現場の従事者がせっかく意見出しをしたにもかかわらず、全く取り入れられことなく標準原価が決まったと感じた場合、現場として拒絶反応を示して、この標準を受け入れないリスクが生じるかもしれない
  • 生産現場の従事者が一度でも自身の意見が採り入れられないという経験をしてしまうと、以後は標準原価設定に対する合議の場に参加することを辞退・忌避するかもしれない

権威型標準原価設定プロセスを採った時であっても、生産現場の従事者や下位階層のマネジャーを何らかの形で標準原価設定に引き込む努力と工夫を施すことは重要なことである。彼らは生産現場に最も近くに存在し、彼らの現場に関する知見はとても重要であるからである。

経営陣が適切でよりよい標準原価設定を望むのならば尚更である。最良の標準原価設定とは、トップマネジメント、製品設計者、インダストリアル・エンジニア、原価計算担当者、生産管理者、購買担当、人事担当、そして生産現場の従事者の努力の結晶の賜物であるからだ。

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