成功する戦略計画の特徴 Characteristics of Successful Strategic Plans
成功要因/留意ポイント
成功する戦略計画にはいくつかの成功要因/ポイントがある。
- 戦略計画は、継続プロセス(ongoing process)であらねばならない。一度きりのものであるとか、年度予算のように年一回のものであるとか、中期計画のように5年に一度のようなものであってはならない。コアのビジネス手法として、全社が向かうべき戦略方向を常に指し示すものであらねばならない
- 成功する戦略計画は、全社組織をひとつに束ねるものである。戦略は、どの角度から見てもバランスがとれていて、企業を成長へ向かわせるものでならねばならない。自社内のあらゆる領域が向き先を一にして、統合オペレーションを見せるべきものである。計画は、会計的結果やマーケティング施策など、特定領域に限った独立したものではない。逆に、それらは全社活動に対してどう貢献できるかを考えるべきものである
- 戦略的計画を策定するとき、以前に設定された想定は全て見直されるべきである。戦略は、現在の事業環境の方向性に対する明確な理解に基づいて策定されるべきで、前回計画の単なる反復であってはならない
- 必然的に、戦略は長期的な性質を持つものである。しかしながら、もしたった一つのアイデアや発見が新製品や新事業を導くものと判明したのならば、また、戦略的計画が一度組まれた直後に破壊的な変化が市場に現れたとしたら、戦略的計画は十分な柔軟性を発揮して、それら大変化への適応を見事に見せて、新しい市場機会を逃さないようにしなければならない。仮に、戦略的計画は変更できないとか、企業の方向性は簡単には変えられないとかいって、内外の環境変化への追随を怠れば、企業実績と戦略的計画はますます相反し、戦略的計画の信頼性は地に落ちる
- あらゆる階層・組織に属する全従業員からのインプットを戦略的計画に反映すべきである。そして、戦略的計画プロセスには全員参加が必要である。トップマネジメントは、全社を導き、計画策定プロセスを調整し、最終判断を行うけれども、戦略的計画はトップマネジメントの意思だけをインプットしたものではいけない。得てして、企業変革のためのベストアイデアは、下位階層から出てくるものである。なぜなら、下位レベルのマネジャーは、エンジニア、コールセンター、物流センターなど、顧客やサプライヤの声を直接聞ける立場に居て、実際の現場仕事に精通しており、今まさに現場で何が起きているかを知っているからだ。さらに、下位レベルマネジャーや現場従業員を戦略計画プロセスに参加させることで、戦略計画に対する理解を深めるとともに、策定された戦略計画に彼ら自身もオーナーシップ意識を持たせることが可能になる。彼らの戦略的計画への意識変革が成れば、戦略的計画の実行時のモチベーション向上につながるし、意思決定プロセスが公平でかつ開放的なものとなる
- 自社組織内のあらゆる人たちが自社が何を成し遂げようとしているのかについて知る必要がある。戦略は、組織内の全関係者間のコミュニケーションの円滑剤となる。戦略は、ビジョンを現実的なものにするためのロードマップを全関係者に見せることができる
- 戦略の成功は、その実践の中にこそある。企業と従業員には戦略を適切に実行するためのツールが必要である。業績目標は必ず設定されるべきで、あらゆる階層の従業員には、全社戦略に紐づいた業績目標や業績給(目標達成のためのインセンティブ)が与えられるべきである
- 戦略的計画プロセスを、企業ビジョンを共有し、企業ビジョンに対する共同所有権(joint-ownership)を持っているとの意識を全従業員に喚起し、企業を適切な方向にもっていくことに特化したリーダーシップを持ったチームを編成できる機会として捉える
戦略的計画プロセスのメリット/効果
戦略的計画プロセスは、自社内の意識統一に強力な効果を発揮してくれる。
- 業績目標が正式に表明されると、その目標達成のための方法も明確に定義される。戦略的計画が全従業員の意識を業績目標に向かわせ、彼らの努力を結実させて目標達成のために協力し合う環境を整備する
- 戦略的計画が適切な形で全社組織を通じて意思疎通されたなら、戦略的計画の実行者としての当事者意識を持つことができ、モチベーション向上にもつながる
- 事前に戦略的計画が策定されていれば、リスクや不確実性が最小化される。バックアッププランも準備されていれば、経営判断もある程度パターン化でき、自然発生的というより統制のとれた方法で経営指示ができるようになる
- 戦略的計画は、本来、自社の競争優位を強化してくれるものである。自社が余裕をもって事前に計画を策定しておくことで、経営資源をより効率的に活用する方法とその適正価格を知っておくことができる。そのことは、コスト低減を通して高収益性を自社にもたらせてくれる
- 戦略的計画は、手続き・製品種目・設備への効率性の面での変化をもたらしてくれる
- 戦略的計画は、実績の評価軸・評価基準を明確にし、協業のための調整を可能にする目標設定を助けてくれる
戦略的計画プロセスのデメリット/限界
戦略的計画プロセスは、運用コストが高く、頼りすぎると柔軟性を欠くことになる。
- 計画プロセスはとにもかくにも、時間がかかりコストも高つく。企業外の会計士・コンサルタント・マーケティング専門家など、プロフェッショナルサービスを準備する必要があるし、自社のマネジャーに本来の業務責任範囲外の計画プロセスに多大な時間をかけさせる必要もある
- 戦略的計画の実践とそのレビューがあまりに厳しいものになりすぎると、新たに出現した脅威への適切な対応や、新しい市場機会の獲得を却って妨げるもととなりかねない。あまりに洗練され過ぎている戦略的計画を強調しすぎると、マネジャーの創意工夫(creativity & innovation)を損なわせ、新しいアイデアを発案するのを躊躇わせたり、変化・対応行動の柔軟性を失わせたりする恐れがある
- 残念ながら、計画とはいつも不正確な将来予測に基づいて策定されるものである。計画策定時と実際の状況にあまりに大きな隔たりがある場合には、戦略的計画は非効率的になったり、実行不可能になったりする。例えば、突然の大不況、自然災害、ストライキ、破壊的技術革新などである。誰の目で見ても明らかな大変化が起きた状況において、行き過ぎた戦略的計画への信頼は、かえって自社を苦境に陥れる
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1 | 戦略的計画 | Strategic Planning |
2 | 予算の諸概念 | Budgeting Concepts |
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