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ゴールと目標 Goals and Objectives

ゴールと目標 Goals and Objectives マネジメント
ゴールと目標 Goals and Objectives

ゴールと目標 Goals and Objectives

用語上の異同について

英語の「goals」と「objectives」は、しばしば互換的に用いられる。日本語でも同様の事象が発生し、「ゴール」「目標」「目的」の三語は、経営管理の分野において、しばしば混用される。

更に付け加えると、ゴールと目標は別物とする情報源においても、定義づけは一様ではない。あるものは、部門や部署といった下位組織で設定されるのが「ゴール」で、上位組織である企業全体レベルでは「目標」が設定されると説明し、別の情報源では全くその逆で、下位組織で「目標」が設定され、上位組織では「ゴール」が設定されるという。

いずれにせよ、企業組織全体・各階層レベルでは、「ゴール」「目標」といった用語でなんらかの取り決めが定められるということだけは確かである。

それでも敢えて、この場で整理すると、仮説としては、下記のような大別法がすっきりするかもしれない。

会社のゴール(corporate goal)とは、「会社が実現(達成)することを望む測定可能な将来の状態」である。ゴールは、会社がミッションやビジョンを達成するためには何がなされる必要があるかを詳細に特定するものである。

目標(objectives)とは、「ゴールを達成するために採用される手続き/手段の連続(series of steps)」である。目標は、ゴール達成のために到達すべきより小さい標的(targets)と同義である。

現状 ➡ [objective 1] ➡ [objective 2] ➡ [objective 3] ➡ [goal]

企業組織内の部門・部署は、会社のゴール達成に貢献するために、自分たちのゴールや目標を設定する。企業組織内の各個人も、会社のゴール達成のために、各個人別のゴール・目標を持つ。

いずれのケースにおいても、最終的なゴールを達成するために、いくつかの(小ゴールともいうべき)より小さな標的(targets)をクリアする必要があることは同じである。

会社全体のゴール・目標を達成するためには、各部門・部署が設定したゴール・目標を達成する必要があるし、各部門・部署が設定したゴール・目標を達成するためには、部門内の各個人が建てたゴール・目標の達成が必要不可欠なのである。

経営計画と経営者の務め

計画とは、企業が自身のゴール・目標を達成できるようにするプロセスのことである。より小さな部門別・部署別のゴール・目標の達成を企業レベルのゴール・目標の最終的な達成に向わせられるようにゴール・目標の組織内構成を巧妙に設計しておくこと、より小さな部門・部署別のゴール・目標の実際の達成を確実にする支援を行うこと、いずれも経営者が責任を負うべき責務なのである。

経営者ならば、ゴール・目標達成の諸活動が組織レベルで調和されるように、そしてその努力ができるだけ効果的かつ効率的に行われるように確実性を増すような施策を打つのが当然なのである。

各部門における個々人は、彼ら自身の部門が固有に持つ部門目標に最も近い立ち位置に存在するからこそ、従業員一人一人が視野狭窄(tunnel vision)に陥るリスクが最も大きいといえる。視野狭窄は、従業員たちが過剰なまでに部門目標の達成にコミットしてしまい、その目標達成度を憂えて、会社全体のゴール・目標達成を見失ってしまうか、無関心になってしまうことで発生する。

最悪の場合、自部門の目標達成を優先するあまり、同じ会社内の別部門の従業員の活動を邪魔し始めたりする。そういう会社全体の生産性を下げるような行為は、会社に対して何ら便益をもたらさないというより、むしろ、害悪しか生まない。

経営者は、各部門・各階層の従業員が、各組織ごとのゴール・目標と同じように会社全体のゴール・目標も決して見失わないように、注意深く従業員をサポートしていかなければならないのである。

ゴール・目標達成のメカニズム

ある組織レベルのゴール・目標がその一つ上の組織階層のゴール・目標にフィットしている状態は、健全な手段目的関係(means-end relationship)が形成されているといえる。手段目的関係が形成されていれば、ある組織レベルのゴール・目標が一度達成されれば、連動してその上の組織階層のゴール・目標の達成に自然とつながるようになる。

ゴール・目標の達成に密接に関連する2つの概念がある。

効率(efficiency)最小インプットによって組織内ゴール・目標を達成しようとすること
効果(effectiveness)実際に組織内ゴール・目標を達成できたなら、そのための努力は報われ、
結果として効果的な努力であったと認められる

組織内ゴール・目標の達成度合いを評価するうえで、「効率」「効果」はいずれも重要ではある。しかし、どちらが究極的に重要かと問われれば、最終的には「効果」といわざるを得ない。

なぜなら、ゴール・目標が達成されなければ、その達成のために払われた努力と経営資源は全くの無駄になり、どぶに捨てることと同義であるからだ。

例えば、自動車エンジンの性能テストを考えてみたい。最少スコアで性能テストをクリアすることは、効果的(effective)でかつ効率的(efficient)ではある。

過剰なくらいのハイスコアで性能テストをクリアすることは、効果的(effective)であったとしても、効率的(efficient)であるとはいえない。性能テストをクリアするために必要最小限度の基準を大きく上回る手間暇・コストが無駄にかかるからだ。

しかし、そこで手間暇・コストを惜しんで、結果的に性能テストに不合格になってしまえば、効果的(effective)でも効率的(efficient)でもなくなってしまう。その匙加減は難しい。

ここまでは、経営管理にも合理性を採り入れることを最上とする欧米的な理論のお話。「ものづくり」に文明・文化をかけてきた日本の場合はそこからひとつ話が加わる。

得てして、日本の製造業の現場では、「過剰品質」に対する経営目線は、従来の欧米企業とは異なり、決してそれを無駄なもの、効率性を落すものという見方はしてこなかった。

不断ふだん普段ふだんから現場のムリ・ムラ・ムダを徹底的に排除し続け、あくなき品質向上を目指す「カイゼン」は、所作や心構えという範疇を超えて、次ステップへの飛躍や将来の成功と結び付けられて奨励されてきた。

例えば、ある時点の性能テストの最低クリア以上の品質を造り込むことは、常に市場で競争にさらされているコンペチターに対して、中長期目線でコストや品質における競争優位を築けるだけでなく、新製品・新技術開発で先んじることができ、それを活かした市場機会を設けることにもつながった。

さらに、性能テストを基準値をはるかに上回る水準を目指すことは、関係する従業員への質の良いトレーニングにもなり、作業品質の向上、現場力の向上とモチベーション向上にも役立った。

ここからは、筆者の独自見解 ———————————————————————–

昨今の、自動車業界(一部の電機業界)でよく見られるようになった「性能テスト」の不正問題は、過剰品質が中長期的な企業の競争優位の形成に貢献してきたことを体で覚えている経営者・管理職が、同じレベルの努力を若手・現場に押し付けるとともに、必要な時間やコスト・人員を割くことができなくなった現場で矛盾が噴出し、一方的に現場の方へしわ寄せ(マスコミからの批判も含めて)が来て言えるように見受けられる。

独自見解終わり —————————————————————————————–

いずれにせよ、資本効率の徹底を現場レベルにまで強いてしまうと、掛け声倒れの品質向上となり、不正問題の温床となったり、現場の疲弊につながる。

それゆえ、やはり効率(efficiency)効果(effectiveness)を並べて、ゴール・目標達成の評価基準とすることが一定の解であることだけは確かなようである。

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