農村調査 Rural Survey

概要

農村調査は、都市調査と並ぶ地域社会調査のひとつである。日本では、戦前から、農村社会学において積極的に行われていた。その様子は、鈴木栄太郎『農村社会学的部落調査法』（1931）、鈴木栄太郎・喜多野清一共著『日本農村社会調査法』（1948）から窺い知ることができる。

この両著に掲げられた共通の基本項目は下記の通り（一部、現代農村には制度的にそぐわないもの/用語がある）。

1. 調査地域の決定
   • 山間村・平地村・沿海村等の類型、人口規模等により、目的とする地域社会の中から平均的なものを選ぶ
2. 村の現在人文地図
   • 小字（組）・大字（自然村）・行政村の各境界、鉄道・バス路線、森林、役場、神社、寺、全民家等を地図に書き入れる
3. 村の歴史の調査
   • 検地・年貢・五人組等についての古記録、村の成立、集落の移動・発展、明治維新以前の領主、村の行政的沿革等
4. 村の自然的条件、部落状態および交通
   • 地理的位置、地勢、地質、気象等
5. 人口
   • 静態人口（人口総数、男女別・年齢別・職業別・教育別等の人口数）
   • 動態人口（婚姻、離婚、出生、死亡、来住往住）
6. 生業
   • 村の生業編成（主要生産物の生産状況等）
   • 農家状況（専業・兼業、自小作別・経営耕地面積別等の戸数）
   • 農家経営（土地所有、農具、雇用労働、農業収入、農業経費等）
   • 地主と小作（不在地主と在村地主、小作慣行）
   • 雇用労働（奉公人、譜代作男、年季奉公人等）
   • 協同労働（ユイ）
7. 同族、家族、親族、婚姻
   • 同族組織（同族団所属関係、本家分家の系譜的結合状況、分家慣行、奉公人分家、同族共同事業等）
   • 家族（家族構成、家族の財産等）
   • 親（親族の範囲、同族と親族の区別等）
   • 婚姻（通婚圏、相手方の決定方法、婚礼、嫁入り等）
8. 年中行事
   • 1年12か月の地域社会の生活リズム
9. 衣食住
   • 衣（衣類の種類と数、衣料自家製の有無等）
   • 食（食事献立、食品購入先等）
   • 住（家屋の建坪数、宅地面積、家屋見取図等）
   • 器具・設備（生業用具、家具）
10. 信仰
    • 神社（村落内の氏神・氏子）
    • 仏教信仰（寺院と檀家）
    • 諸種の俗信、偶像等、呪術者、村民の共同祈願
11. 教育・教養
    • 学校教育（小中学校、教師）
    • 文化運動団体（協同組合、農民組合の文化活動等）
    • 家庭教育（母子、親子意見衝突等）
    • 社会教育（（当時は）ラジオ、新聞等）
12. 娯楽・休養
    • 盆、正月、その他の村休みにおける余暇の過ごし方
13. 権威権力および敵対的関係
    • 家の格式、旧時の代官・庄屋、親方子方慣行、村落内の政党対立、徒党
14. 近隣および村落
    • 近隣社会（五人組の遺制、小字または組、葬儀互助組織）
    • 村落社会（旧幕時代の村、村八分の慣行、入会地、村仕事、共同祈願等）
15. 社会関係（家と家との関係）
    • 賃借・贈答・招宴・援助の関係
16. 各種共同地域
    • 村落外との地域的統一（神社共同地区、行政共同地区等）
17. 個人伝記の作成
    • 村落内の平凡な老人について一生の伝記を作成する

社会学の構造 The Structure of Sociology

参考リンク

農業農村地域資源・環境総合調査：農林水産省

www.maff.go.jp

農村調査分析論 | 国立大学法人 島根大学

島根大学は、松江キャンパスに法文、教育、人間科学、総合理工、生物資源科学の5学部、出雲キャンパスに医学部があり、皆さんの志望する学びの場を文系、理系、医系に関わらずほとんどすべての学問領域において提供している総合大学です。

www.shimane-u.ac.jp

一般社団法人 日本社会学会 社会学への誘い | 日本社会学会

jss-sociology.org