概要
理論社会学は、社会について一般化された命題体系を定立することを目的とする。経験社会学は、社会についての個別的事実を確証することを目的とする。
個別的事実を確証するためには、❶データ作成、❷データ解析、という2つの作業が必要となる。
経験社会学/経験的社会研究(empirical social research, empirische Sozialforschung)とは、❶❷といった2つの作業を通じて、データを取り扱う社会学である。
位置づけ
領域社会学は理論社会学より抽象レベルが一段低く、経験的レベルにその分近い。しかし、領域社会学にも、中範囲理論と呼ばれる、特定領域の枠の中での一般化が含まれている。ここから、領域社会学の中には、経験社会学と中範囲の理論社会学が同居していると看做すことができる。
一次資料の収集目的で社会調査を行ってデータを作成する研究活動には、❶個性記述的研究、❷法則定立的研究がある。現実には、個性記述にも法則定立への関心は含まれているし、法則定立においても個性記述への関心は含まれる。
そもそも社会学は経験科学なので、経験はいつでも理論と同居している。
理論家であったとしても、外国文献だけを読む学説研究家や思想史家のケースを除けば、データを全然扱わないということはない。
経験社会学の研究者であったとしても、データ集を作成するのみというのはプロジェクト目的であるにすぎず、データ作成とデータ解析を行えば、そこから読み取れる事実について、たとえ一般化レベルは相対的に低いかもしれないが、必ず何らかの命題定立を行おうと試みるのが自然である。
たとえ、「中範囲」から「小範囲」になるとしても、何らかの一般化がなされるのならば、そこには理論が生まれ、理論への関心も高まるはずである。
理論と経験を切り離し足り別々のものとして扱うのは適切ではない。理論が立てられれば検証されなければならないし、検証されるためには経験的研究によって裏付けがなされていなければならない。
いったんデータが扱われれば、それは何らかの一般化を導くものであらねばならず、一般化がなされるためには理論の世界に分け入る必要が生じるのである。
経験社会学の方法論
経験社会学ではデータを扱う社会学である。データの扱い方には、❶データ作成、❷データ解析がある。
データの作成を行うのは社会調査であり、データの解析を行うのは計量社会学(社会統計学)である。
社会調査
計量社会学
社会学の構造 The Structure of Sociology
理論 | 経験 | 歴史 | 政策 | ||||
総論 | 社会学原理 | 経験社会学 | 社会史 社会学史 (学説史) 第一世代 第二世代 (マクロ社会学) (ミクロ社会学) | 社会問題 社会政策 | |||
社会調査 統計的調査 計量社会学 | |||||||
ミクロ社会学 | 行為者の内部分析 | 自我理論 社会意識論 | ミクロ社会 調査・解析 | ミクロ 社会史 | ミクロ 社会政策 | ||
社会システム内の相互行為 と社会関係分析 | 相互行為論 役割理論 社会関係論 社会的交換論 | ||||||
マクロ社会学 | 社会システム 構造論 | マクロ社会 調査・解析 | マクロ 社会史 | マクロ 社会政策 | |||
社会システム 変動論 | |||||||
領域社会学 | 内包的領域 社会学 | 基礎集団 | 家族 | 家族社会学 | 家族調査 | 家族史 | 家族政策 |
機能集団 | 企業 | 組織社会学 産業社会学 | 組織調査・ モラール調査 | 組織史 労働史 | 経営社会政策 労働政策 | ||
全体社会 ×社会集団 | 国家 | 国家社会学 | 国勢調査 | 国家史 | 福祉国家政策 | ||
地域社会 | 農村 | 農村社会学 | 農村調査 | 農村史 | 農村政策 | ||
都市 | 都市社会学 | 都市調査 | 都市史 | 都市政策 | |||
準社会 | 社会階層 | 社会階層理論 | 社会階層調査 | 社会階層史 | 不平等問題 | ||
外延的領域 社会学 | 経済 | 経済社会学 | 経済行動・ 市場調査 | (経済史) | (経済政策) | ||
政治 | 政治社会学 | 投票行動・ 政治意識調査 | (政治史) | (政治政策) | |||
法 | 法社会学 | 法行為・ 法意識調査 | (法制史) | (法政策) | |||
宗教 | 宗教社会学 | 宗教行為・ 宗教意識調査 | (宗教史) | (宗教政策) | |||
教育 | 教育社会学 | 教育行為・ 教育意識調査 | (教育史) | (教育政策) |
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