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家族社会学 Sociology of the Family

家族社会学 Sociology of the Family リベラルアーツ
家族社会学 Sociology of the Family

概要

「家族」は婚姻と血縁のつながりによって形成された、人類社会に普遍的に存在してきた集団である。マクロ社会は、社会集団地域社会から成る。社会集団は基礎集団機能集団に分かれ、基礎集団を大経するのが家族である。

人類社会に普遍的に存在すること、未開社会や古代社会には、企業も都市も国家もまだ存在していないことから、家族社会学は、社会学の最も基礎的な位置を占めてきた。

「家族社会学」は、集団としての家族とその形態や機能、そこにおけるさまざまな病理などを研究テーマとする学問である。

家族概念の変遷

社会学第一世代のコントは、『実証哲学講義」において、

家族を人と人との感情的融合を実現するという意味で社会の原型である。
家族は人間が社会生活を学習する学校である。

と認識した。

これは、ヨーロッパの伝統的な家父長制家族で、家族を妻の夫に対する従属(性別による従属)、子供の親に対する従属(年齢による従属)という二重の従属関係から成るもので、この二重の従属関係ゆえに、家族は他のいかなる社会よりも親密性統一性を実現しているという考えに基づく。

社会学第二世代のテンニェスは、『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』において、

  • ゲマインシャフト
    • 血のゲマインシャフト:家族・肉親
    • 場所のゲマインシャフト:「共同居住」という場所、近隣や村落の共同生活
    • 精神のゲマインシャフト:友情に基づく都市

という分類を行い、血のゲマインシャフトに家族を位置づけた。ゲマインシャフトとしての家族は、中核に夫婦、その外側に子供たち、もっとも外側に使用人という三層構造から成るとした。そして、その本質的な要素は、❶母子関係、❷夫婦関係、❸兄弟姉妹関係の3つの社会関係とした。その中で母子関係が、①継続的な共同生活を伴う②自然的な好意の存在を理由に、最も根幹の家族関係であるとした。

同じく第二世代のマックス・ヴェーバーは、『経済と社会』において、家族をゲマインシャフトの原型として「家ゲマインシャフト」と呼び、その原初的形態を同じく母子関係においた。ヴェーバーによれば、永続的なゲマインシャフト形成の契機として決定的に重要なのは経済的な扶養ゲマインシャフトであり、家ゲマインシャフトの重要性は、伝統的支配における❶ピエテート(恭順)と❷権威の本源的基礎を備えている点であった。

これまで家父長制家族が論じられてきたところに、人類学者マードックが『社会構造」の中で、家族の形態を、核家族・複婚家族・拡大家族に3分類し、核家族が世界中の家族に含まれる普遍的な中核であると位置づけた。

マードックが約250の社会を対象に行った「通文化的サーベイ」をベースにした、バッハオーフェン、マクレナン、モーガンらの研究から、全ての社会において、人間の婚姻が原始乱婚→母系→父系→一夫一婦制家族へと単純進化の発展段階を経過すると考える古典的な家族進化論が最終的に否定された。

家父長制家族から核家族が人類普遍のモデルとされるようになったが、近代において大量発生した各種の機能集団によって、核家族の機能の多くが失われ、解体の危機にあるのではないかと考えられるようになった。

パーソンズはベイルズとの共著『家族』の中で、

核家族は機能を喪失しつつあるのではなく、機能分化へと向かう社会変動の中にあって、子供にとっての社会化と、成人にとってのパターン維持と緊張処理という二大機能に向って特化しつつある

という定式化を行った。

社会化・パターン維持・緊張処理という機能は、AGIL図式 の中で、Lセクター(潜在的な型の維持 Latent pattern maintenance)に位置づけられている。

日本における家族論

戸田貞三『社会学概論』

ミクロ社会学では、社会を「意識の構造」と看做し、全ての社会集団は他者との感情的融合を求める意識が構造化されたものである。それが最も強く現れているのが人類に普遍的な基礎集団である家族である

社会集団として家族が有する特性とは、❶成員の感情的融合、❷非打算的信頼感、❸消費における共産的関係、である。

このような家族結合の内的契機は、家族の成員資格を夫婦関係・親子関係といったできるだけ少数に限定したい誘因を持ち、夫婦と未婚の子供からなる小家族(核家族)の形態へ向かう普遍的傾向を持つと考える。

これに加え、日本社会の特性として、家長的家族(家制度的家族、直系家族)としての制度的伝統を併せ持っているとした。この伝統により、日本の家族は、核家族に向う普遍的傾向と、直系尊属や傍系親を家族の中に取り込もうとする直系家族・拡大家族へと向かう制度的傾向の相互に対抗関係にある二つの力の均衡の上にあるとした。

この小家族優位論は、1920年の国勢調査データの解析から、当時の日本の家族の80%以上が核家族であったことで裏付けられた。

「社会調査」(統計的社会調査・量的調査)による分析

有賀喜左衛門

伝統主義的家族・親族論(「家」と「同族団」の理論)
日本の家族は基本的に「家」であり、その家と家を結ぶ「家連合」としての同族関係への着目が重要である。

東北地方の農家を対象に調査(フィールドワーク)を行った。

「社会調査」(事例的社会調査・質的調査)による分析

多数の傍系親族の配偶者・子供、使用人の配偶者・子供を含めてひとつの「家」に取り込み、20数名の大家族を形成していたことを発見する。このような大家族を構成する「家」の存在が「同族団」の原型をなすもので、大家族を構成する傾向が日本の「家」にあるとした。こうした大家族から、傍系家族や奉公人を分家させることで、本家を中心とした同族団を構成するものと考えた。

現代では、有賀の唱えた「同族団」理論に対して批判的な論調となっている。

飛騨白川村・越中五箇山にも確かに多数の傍系家族を含む大家族が観察されたが、そのような大家族は、古代に存在した大家族の遺制などではなく、山間僻地で土地に乏しい、経済的貧困といった特殊な条件から、傍系親が独立できないでいた例外的な事例であることが分かっている。

むしろ、そうした大家族は、構成員の生存を目的とした経営体、機能集団の特色を持つものであった。

社会学の構造 The Structure of Sociology

理論経験歴史政策
総論社会学原理経験社会学社会史
社会学史
(学説史)
第一世代
第二世代
(マクロ社会学)

(ミクロ社会学)
社会問題
社会政策
社会調査
統計的調査
計量社会学
ミクロ社会学行為者の内部分析自我理論
社会意識論
ミクロ社会
調査・解析
ミクロ
社会史
ミクロ
社会政策
社会システム内の相互行為
と社会関係分析
相互行為論
役割理論
社会関係論
社会的交換論
マクロ社会学社会システム
構造論
マクロ社会
調査・解析
マクロ
社会史
マクロ
社会政策
社会システム
変動論
領域社会学内包的領域
社会学
基礎集団家族家族社会学家族調査家族史家族政策
機能集団企業組織社会学
産業社会学
組織調査・
モラール調査
組織史
労働史
経営社会政策
労働政策
全体社会
×社会集団
国家国家社会学国勢調査国家史福祉国家政策
地域社会農村農村社会学農村調査農村史農村政策
都市都市社会学都市調査都市史都市政策
準社会社会階層社会階層理論社会階層調査社会階層史不平等問題
外延的領域
社会学
経済経済社会学経済行動・
市場調査
(経済史)(経済政策)
政治政治社会学投票行動・
政治意識調査
(政治史)(政治政策)
法社会学法行為・
法意識調査
(法制史)(法政策)
宗教宗教社会学宗教行為・
宗教意識調査
(宗教史)(宗教政策)
教育教育社会学教育行為・
教育意識調査
(教育史)(教育政策)

参考リンク

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