概要
都市調査は、農村調査と並んで地域社会調査を構成する。都市調査と農村調査とにはいくつか違いがある。
農村は小さな地域社会として、ある程度見通しがきいてまとまりをもっているが、都市とりわけ大都会は巨大な地域社会であって、見通すことができない複雑性を持つ。また、農村に住む住民は大部分が農業に従事していて、比較的同質的であるのに対し、都市住民の職業は多岐にわたり、高度に異質で、その中に極めて多種類の集団・組織を内包している。
したがって、都市調査では、商店街調査、オフィス調査、団地調査等、部分調査として行われることが多い。
都市社会調査法の特徴
都市社会調査法をとりわけ取り上げた著作はあまり例を見ない。農村社会学と都市社会学の両分野での著作がある鈴木栄太郎の論文「都市社会調査方法論序説」(1954)、笹森秀雄との共著予定だった遺稿「都市社会調査法ノート」から都市社会調査法の概略が分かる程度である。
これらの著作から、都市調査を農村調査と比較しながら概要をまとめると次のようになる。
❶被調査対象となることへの対応
都市住民は農村住民より調査対象となることを避けようとする。
調査される農村民と調査する都会人とは互いに別世界に生活していることを相互に認め合っているので、調査することにも調査されることにも自然さが認められる。
都会人が都会人を調査する場合はいくつかの心理的壁(抵抗)が感じられる場合が少なくない。
❷個人と集団の在り方の違い
農村では制度や慣行の中から読み取るべきことが多い。
近隣も農村では団体であるが、都市では関係である。
それゆえ、農村の社会調査には制度や慣行の調査が第一義的であるが、都市の社会調査では個人のオピニオンの調査が第一義的となる。
❸調査方法の差異
都市社会調査では、個人の意識や意見の調査が優先されるべき課題となる。
都市社会調査は、質的調査である農村社会調査と個人に面接する質問紙法調査の中間的な性格を持つ。
都市社会調査の基本項目
鈴木栄太郎の著作より、都市社会調査の基本項目を下記の通りまとめた。
- 社会的交流の結節点
- 商業の結節機関(デパート、スーパー、商店)
- 工業の結節機関(工場、オフィス)
- 金融の結節機関(銀行、証券会社)
- 統治の結節機関(官公庁)
- 治安の結節機関(軍隊、警察)
- 宗教の結節機関(神社、寺院、教会)
- 交通の結節機関(駅、空港)
- 通信の結節機関(郵便局、電話局)
- 教育の結節機関(小中学校、高校、大学、専門学校)
- 娯楽の結節機関(映画館、パチンコ店等)
- 都市の社会構造
- 世帯(家族)
- 職域(事業所)
- 学校
- 生活拡充集団(文化団体、宗教団体、スポーツ団体)
- 地区集団(町内会、自治会)
- 特殊団体(地方自治体)
- 生活構造
- 時間的秩序(都市生活の時間的構造)
- 一日周期(昼間人口/夜間人口)
- 一週間期(休業)
- 季節周期
- 一年周期(決算、年中行事)
- 一世代周期
- 空間的秩序(都市生活の地域的構造)
- 都市規模、結節機関で取り扱う財・サービスの範囲
- 村落内のみ
- 農村市街地(外部の一定地域内の住民)
- 小都市(農村市街地2か所以上)
- 中都市(全国または世界市場に販路を得ている製造工場や販売機関が立地)
- 大都市(その周辺に多数の中小都市が連合して地域的社会的統一を形成)
- 社会圏の地域的構造
- 都市生活圏(当該都市の範域)
- 都市依存圏(当該都市に通勤する範域)
- 都市利用圏(当該都市に高級な財・サービスを求めて集まってくる人々の居住する範域)
- 都市支配圏(当該都市に本社を持つ会社の支社等があって上下関係が見られる範域)
- 都市勢力圏(当該都市に媒体機関のあるマスコミの受け手が居住する範域)
- 都市規模、結節機関で取り扱う財・サービスの範囲
- 時間的秩序(都市生活の時間的構造)
社会学の構造 The Structure of Sociology
理論 | 経験 | 歴史 | 政策 | ||||
総論 | 社会学原理 | 経験社会学 | 社会史 社会学史 (学説史) 第一世代 第二世代 (マクロ社会学) (ミクロ社会学) | 社会問題 社会政策 | |||
社会調査 統計的調査 計量社会学 | |||||||
ミクロ社会学 | 行為者の内部分析 | 自我理論 社会意識論 | ミクロ社会 調査・解析 | ミクロ 社会史 | ミクロ 社会政策 | ||
社会システム内の相互行為 と社会関係分析 | 相互行為論 役割理論 社会関係論 社会的交換論 | ||||||
マクロ社会学 | 社会システム 構造論 | マクロ社会 調査・解析 | マクロ 社会史 | マクロ 社会政策 | |||
社会システム 変動論 | |||||||
領域社会学 | 内包的領域 社会学 | 基礎集団 | 家族 | 家族社会学 | 家族調査 | 家族史 | 家族政策 |
機能集団 | 企業 | 組織社会学 産業社会学 | 組織調査・ モラール調査 | 組織史 労働史 | 経営社会政策 労働政策 | ||
全体社会 ×社会集団 | 国家 | 国家社会学 | 国勢調査 | 国家史 | 福祉国家政策 | ||
地域社会 | 農村 | 農村社会学 | 農村調査 | 農村史 | 農村政策 | ||
都市 | 都市社会学 | 都市調査 | 都市史 | 都市政策 | |||
準社会 | 社会階層 | 社会階層理論 | 社会階層調査 | 社会階層史 | 不平等問題 | ||
外延的領域 社会学 | 経済 | 経済社会学 | 経済行動・ 市場調査 | (経済史) | (経済政策) | ||
政治 | 政治社会学 | 投票行動・ 政治意識調査 | (政治史) | (政治政策) | |||
法 | 法社会学 | 法行為・ 法意識調査 | (法制史) | (法政策) | |||
宗教 | 宗教社会学 | 宗教行為・ 宗教意識調査 | (宗教史) | (宗教政策) | |||
教育 | 教育社会学 | 教育行為・ 教育意識調査 | (教育史) | (教育政策) |
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