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個別法(順列)で損益分岐点販売数量を求める – 複数セグメントのCVP分析

個別法(順列)で損益分岐点販売数量を求める – 複数セグメントのCVP分析 経営分析
個別法(順列)で損益分岐点販売数量を求める – 複数セグメントのCVP分析
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計算手法

個別法での損益分岐点販売数量の求め方

個別法は、複数セグメント間の販売構成比(セールスミックス)が一定(不変)ではないときにもちられる手法である。

個別法で複数セグメントによる損益分岐点販売数量を求めるためには、セグメント別の貢献利益を順に積み上げていく方法(ルール)が重要になってくる。

個別法(順列)は、ユーザ(分析者)がビジネス特有の状況を考慮する、分析目的に準拠するなどの特殊事情や理由に基づき、任意で、複数セグメントごとの貢献利益の積み上げ順序を決定したうえで、損益分岐点販売数量を求める手法である。

例えば、A、B、C、Dと4つのセグメントが社内にあるとしたら、優先順位として、A→B→C→Dの順序で貢献利益を積み上げていって、途中のセグメントCのところで損益分岐点販売数量に達した場合、セグメントDの販売数量を全て除外した、セグメントA・Bの全量と、セグメントCの途中までの販売数量をもって損益分岐点販売数量を計算することになる。

この場合、複数セグメント全体の加重平均貢献利益など、平均法が用いる計算手法は全く顧みられることはない。

すべて、ユーザが決めた優先順位で貢献利益を累積で積み上げていく。

複数セグメントの貢献利益の積み上げ例

個別法(順列)では、複数セグメントの貢献利益の積み上げ順序が損益分岐点販売数量を左右する。

全く同じセグメント構成でも、どのセグメントを優先して積み上げるかで、セグメントごとの貢献利益単価が異なれば、計算される損益分岐点販売数量も異なってくる。

例えば、企業内に下記のような2セグメントを有しているものとする。

項目AセグメントBセグメント
販売数量(個)100100
貢献利益単価(円)@10@50

この時、固定費が 1500円 だとして、Aセグメント→Bセグメントの順に貢献利益を積み上げていく(
セグメントの商材の方が先に販売されると仮定する)と、

Aセグメントの貢献利益 = 100個 × @10 = 1000円

Aセグメント完売時の固定費回収残 = 1500円 – 1000円 = 500円

Bセグメントの販売必要数 = 500円 ÷ @50 = 10個

このように、Aセグメントから積み上げると、Aセグメント:100個、Bセグメント:10個、合計:110個が損益分岐点販売数量として求められる。

次に、Bセグメントを優先して貢献利益を積み上げていくとした場合、Bセグメント全体の貢献利益(5000円)が既に固定費発生総額(1500円)より大きいことが分かっているので、

Bセグメントの損益分岐点販売数量 = 1500円 ÷ @50 = 30個

この場合は、Aセグメントに属する商材の販売は一切必要とせずに、Bセグメントの販売可能数量100個のうち、30個の販売だけで、会社全体の損益分岐点販売数量に達することができる。

上例のような積み上げ方での違いが起きる理由は、各セグメントの貢献利益単価が異なるからである。

計算プロセス

個別法に特有のセグメントごとの貢献利益の積み上げ優先順位に着目した損益分岐点販売数量の計算方式から、以下のシミュレーションプロセスが考えられる。

個別法(順列)による損益分岐点販売数量を求める手順
  • 現状分析
    各セグメントの貢献利益P/Lと販売数量を明らかにする

    ・各セグメントごとの貢献利益単価算出までの単価×数量 情報を明確にする
    ・キーとなる貢献利益単価を確認する

  • 積上優先順位の決定
    各セグメント貢献利益の積み上げ優先順位を決定する

    ・損益分岐点販売数量に到達するまで、どのセグメントから優先して貢献利益を積み上げていくかを決める

  • 損益分岐点販売数量の計算
    累積貢献利益と固定費が一致する販売数量を求める

    ・累積貢献利益額が固定費発生額と一致するまで、販売数量を足し上げていく

  • セグメント別損益分岐点販売数量の計算
    各セグメントごとの損益分岐点販売数量を求める

    ・累積結果をもとに、各セグメントごとの販売可能数量から積み上げ計算に用いた数量を確認する

シミュレーション

Excelテンプレート形式で複数セグメントにおいて、個別法(順列)で損益分岐点販売数量を求める計算方法を示す。

入力欄の青字になっている「セグメント名称(任意の名前)」「販売数量」「販売単価」「変動費単価」「固定費」に任意の数字を入力すると、個別法(順列)に基づいた複数セグメントごとの損益分岐点販売数量が求められる。

セグメント情報の入力の際、積み上げ優先度の高いセグメントを左から順に入力する。

どんな入力をしても、元ファイルが壊れることはない。入力し直したい、元に戻したい場合は、画面を更新(F5押下など)すれば、初期値に戻る。

自分の手元でじっくり検証したい場合は、上記のダウンロードボタンから、Excelをダウンロードすることをお勧めする。

テンプレートの使い方

販売数量

これから損益分岐点販売数量を求めるのに、あらかじめ各セグメントの「販売数量」を入力することが奇異に感じられる人がいるかもしれない。

この販売数量は、

❶実績販売数量で、過去実績を後から振り返って、損益分岐点販売数量を求めて次期以降の参考にする
❷予算/計画販売数量で、これから目標とする損益分岐点販売数量を設定するために計算する

という風に、どのタイミングでどんな目的でこのテンプレートを活用したいかで、使い分けができるようにできるだけ汎用的に製作されている。

グラフの見方

複数セグメントの貢献利益線が色分けして描画されている。

積み上げ貢献利益線と固定費線の交点のx座標が「損益分岐点販売数量」を示している。

損益分岐点販売数量とは別に、各セグメントの販売可能数量を全て合計した「実現販売数量」と、その数量を販売しきったらどれくらいの利益が得られるかを「実現利益」として描画している。

閾値としてグラフ表示の限界は以下の通り。

❶固定費はゼロ以下にならなければグラフは崩れない
❷実現販売数量が損益分岐点販売数量に未達の場合でもグラフは崩れない
❸どのセグメント貢献利益線と交わっても損益分岐点販売数量は表示される
❹貢献利益単価がゼロまたはマイナスとなってもグラフは崩れない

【参考】使用しているExcel関数
・CONCAT関数、IF関数、SUM関数、SUMPRODUCT関数

解説

セグメントの優先順位の考え方について

この計算手法は、貢献利益を積み上げるセグメントの採用順序に大きく結果が左右される。

よって、ユーザ(分析者)が優先順位に対する明確なクライテリアを持っていることが重要である。

実務面から、次のようなクライテリア(または適用事例)がユーザ(分析者)の環境に適しているかをきちんと評価してからこの手法の採用可否判断をするのが良いと思われる。

  1. 販売数量の多いセグメントから順に積み上げる
  2. 貢献利益単価高いセグメントから順に積み上げる
  3. 貢献利益単価低いセグメントから順に積み上げる
  4. 時間軸に沿って実際に販売される順に積み上げる

販売数量の大きい順

これは、複数セグメントの販売管理その他の事務コストを考慮し、できるだけ少ない品種・セグメント数で早期に損益分岐点販売数量に到達したい場合に活用される基準である。

単品(単種類)だけで損益分岐点販売数量に到達することができるのならば、あえて多品種・複数セグメントの手間をかける必要が無いケースに当てはまる。

貢献利益単価の高い順

とくかく、販売数量1単位当たりに稼げる利益が一番高いものから損益トントンの水準になるべく早期に到達したい場合、その目的達成に最も近道な多品種商材の販売優先選択を示してくれるものである。

これは、多品種の管理コストがそれほど負担にならず、かつ、可能な限り早期に損益分岐点販売数量に到達できるセールスミックスを提示してくれる。

貢献利益単価の低い順

ある程度固定的(定常的)なビジネス環境において、手持ちの商材の組み合わせと販売予測をベースに、最も保守的(最も遠道)なセグメント選択をした場合の損益分岐点販売数量を示してくれる。

これは、手持ちの販売可能数量から考えられる最も保守的(手堅い)組み合わせでもたらされる損益分岐点販売数量を示してくれる。

ちなみに、上記のExcelテンプレートで例示したのはこのケースに該当する。

下表は、同じセールスミックスの条件下で複数セグメントの優先順を貢献利益単価の高いもの順と低いもの順とで並べ方を変えたものの比較になる。

画像中央のスライドバーを左右に振ってもらえると、それぞれの特徴が分かると思う。

損益分岐点販売数量が 350692 とで大きく異なるが、いずれも同じセールスミックスで計算されたものである。

個別法(順列)で損益分岐点販売数量を求める – 複数セグメントのCVP分析個別法(順列)で損益分岐点販売数量を求める – 複数セグメントのCVP分析 保守的
貢献利益単価の高い順と低い順の比較

時間軸の早いもの順

複数セグメントにおける損益分岐点販売数量を分析する手法の紹介をしているが、何も、必ず異なる品種でなければならないというわけではない。

同じ品種・製品でも、出荷月(販売月)毎に、貢献利益単価がことなる商材の場合、毎月異なる貢献利益単価のものを出荷ロットごとに複数セグメントに見立てて、この分析手法を適用することができる。

実務的に最もこのクライテリアの使い勝手が出るのは、たとえば、年間の業績目標を決定するときである。

3月期決算の会社を例にとると、現在自社が手掛けているビジネスが、4月から7月ごろまでは先行投資負担が重くて、損益分岐点をはるかに下回る水準の販売数量しか望めないが、売り上げが伸びていくにしたがって、8月か9月頃に入ったくらいから、急に損益が好転するシナリオの場合に、何日目もしくは秋口の販売数量がどれくらいになったら黒字になるかがこの分析によって把握することができる。

戦略的投資意思決定における「回収期間法」と同じ利用方法である。

CVP分析/損益分岐点分析 CVP分析/損益分岐点分析

1固変分解/貢献利益変動費、固定費、貢献利益、固変分解
2損益分岐点分析様々な損益モデルで損益分岐点を求める
3CVP分析金額・単価・数量を変数にした損益モデル
4CVP分析フレームワークを用いた意思決定利益最大化を達成するための条件選択方法

粗利、変動費、固定費の関係で儲ける会社づくりをストーリー仕立てで理解できる。

管理会計入門書。CVP分析や固変分解の基礎がわかる。

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