フランス哲学の特徴
人間の現実に即してものを考える人間哲学であり、エスプリをもって人々の生活のありさまを観察し、モラリスト精神を持つ。また、実証科学との密接な結び付きを持つ。そして、表現形式の単純・平明さを心掛ける。
中世
- ペトルス・アベラルドゥス Petrus Abaelardus / ピエール・アベラール Pierre Abélard(1079 – 1142)
ルネサンス期
- ミシェル・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne(1533 – 1592)
17世紀
合理主義哲学 大陸合理主義 大陸合理論
(イギリス)経験論と対比されて、感覚を介した経験に由来する認識に信をおかず、生得的・明証的な原理から導き出された理性的認識だけを真の認識とする立場。非理性的、経験的、偶然的なものを排し、理性的、論理的、必然的なものを尊重する立場。すべての確実な知識は生得的で明証的な原理に由来すると考える。
- ルネ・デカルト René Descartes(1596 – 1650)
- バールーフ・デ・スピノザ Baruch De Spinoza(1632 – 1677)【蘭】
- ニコラ・ド・マルブランシュ Nicolas de Malebranche(1638 – 1715)
- ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ Gottfried Wilhelm Leibniz(1646 – 1716)【独】
- ピエール・ベール Pierre Bayle(1647 – 1706)
ジャンセニスム
人間の原罪の重大性と恩寵の必要性を過度に強調し、予定説からの強い影響を受けたキリスト教思想。ジャン・カルヴァン思想の影響を受けて、救われることが予定付けられている人間は本当に少ないと説いた。
- ミシェル・バイウス Michael Baius(1513 – 1589)
- ジャン・デュヴェルジェ・ド・オランヌ/アベ・ド・サン・シラン Jean Duvergier de Hauranne, the Abbé (Abbot) of Saint-Cyran(1581 – 1643)
- コルネリウス・ヤンセン Cornelius Jansen(1585 – 1638)【蘭】
- アントワーヌ・アルノー Antoine Arnauld(1612 – 1694)
- ブレーズ・パスカル Blaise Pascal(1623 – 1662)
- ピエール・ニコル Pierre Nicole(1625 – 1695)
- パスキエ・ケネル Pasquier Quesnel(1634 – 1719)
- ジャン・ラシーヌ Jean Baptiste Racine(1639 – 1699)
機会原因論
精神にも物体にも独自の作用因を認めず、それを神だけに帰する説。事物はすべて、自力で他のものに働きかける真の原因であることはなく、心と身体の間も、神が一方の状態を機会として他方を変化させるという関係にすぎないと考える。心身間に直接の相互作用を否定し、唯一真なる原因である神が精神あるいは身体の一方を機会原因として他方に働きかけるとする(偶因論)。
- コルドモア Géraud de Cordemoy(1628 – 1684)
- ゲーリンクス Arnold Geulincx(1624 – 1669)
18世紀
フランス啓蒙思想
従来の封建社会の中でのキリスト教的世界観に対して、合理的な世界観を説き、人間性の解放を目指した思想。あらゆる人間が共通の理性をもっていると措定し、世界に何らかの根本法則があり、それは理性によって認知可能であるとする。自然科学的方法を重視し、理性による認識がそのまま科学的研究と結びつくと考えられ、宗教と科学の分離を促した。
- ベルナール・フォントネル Bernard le Bovier de Fontenelle(1657 – 1757)
- シャルル=ルイ・ド・モンテスキュー Charles-Louis de Montesquieu(1689 – 1755)
- ヴォルテール Voltaire / フランソワ=マリー・アルエ François-Marie Arouet(1694 – 1778)
- ピエール=ルイ・モロー・ド・モーペルテュイ Pierre-Louis Moreau de Maupertuis(1698 – 1759)
- エミリー・デュ・シャトレ/シャトレ侯爵夫人ガブリエル・エミリー・ル・トノリエ・ド・ブルトゥイユ Gabrielle Émilie Le Tonnelier de Breteuil, marquise du Châtelet(1706 – 1749)
- ジョルジュ=ルイ・ルクレール・ド・ビュフォン Georges-Louis Leclerc, Comte de Buffon(1707 – 1788)
- ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリー Julien Offray de La Mettrie(1709 – 1751)
- ジャック=クロード=マリー=ヴァンサン・ド・グルネー Jacques Claude Marie Vincent de Gournay(1712 – 1759)
- ジャン=ジャック・ルソー Jean-Jacques Rousseau(1712 – 1778)
- エティエンヌ・ボノ・ドゥ・コンディヤック Étienne Bonnot de Condillac(1714 – 1780)
- クロード=アドリアン・エルヴェシウス Claude-Adrien Helvétius(1715 – 1771)
- ポール=アンリ・ティリ・ドルバック男爵 Paul-Henri Thiry, baron d’Holbach(1723 – 1789)【独】
- ニコラ・ド・コンドルセ / コンドルセ侯爵マリー・ジャン・アントワーヌ・ニコラ・ド・カリタ Marie Jean Antoine Nicolas de Caritat, marquis de Condorcet(1743 – 1794)
- アントワーヌ・ラヴォアジエ Antoine-Laurent de Lavoisier(1743 – 1794)
- オランプ・ド・グージュ Olympe de Gouges(1748 – 1793)
- ラファイエット侯爵マリー=ジョセフ・ポール・イヴ・ロシュ・ジルベール・デュ・モティエ Marie-Joseph Paul Yves Roch Gilbert Du Motier, Marquis De La Fayette(1757 – 1834)
- アントワーヌ・デシュトゥット・ド・トレーシー Antoine Louis Claude Destutt, comte de Tracy(1754 – 1836)
百科全書派
『百科全書、あるいは科学、技術と工芸の理論的辞書』の編集に携わり、合理主義や懐疑主義に基づく啓蒙思想の普及に努めた。
- フランソワ・ケネー François Quesnay(1694 – 1774)
- シャルル=マリー・ド・ラ・コンダミーヌ Charles Marie de La Condamine(1701 – 1774)
- デュクロ Charles Pinot Duclos(1704 – 1772)
- ルイ・ド・ジョクール Louis de Jaucourt(1704 – 1779)
- ドゥニ・ディドロ Denis Diderot(1713 – 1784)
- ジャン・フランソワ・ド・サン=ランベール Jean François de Saint-Lambert(1716 – 1803)
- ジャン・ル・ロン・ダランベール Jean Le Rond d’Alembert(1717 – 1783)
- フランソワ・ヴェロン・デュヴェルジェ・ド・フォルボネ François Véron Duverger de Forbonnais(1722 – 1800)
- ジャン=フランソワ・マルモンテル Jean-François Marmontel(1723 – 1799)
- フリードリヒ・グリム Friedrich Melchior, Baron von Grimm(1723 – 1807)
- ローヌ男爵アンヌ=ロベール=ジャック・テュルゴー Anne-Robert-Jacques Turgot, Baron de Laune(1727 – 1781)
- アンドレ・モルレ André Morellet(1727 – 1819)
- イボン
- ペストレ
- プラド
19世紀
- フェリシテ・ロベール・ド・ラムネー / ラムネ Félicité-Robert de Lamennais(1782 – 1854)
フランス・スピリチュアリスム
物質に還元されない精神の「自発性」や「働き」を重んじる。
- フランソワ=ピエール=ゴンティエ・メーヌ・ド・ビラン François Pierre Gontier Maine de Biran(1766 – 1824)
- アンリ=ルイ・ベルクソン Henri-Louis Bergson(1859 – 1941)
- ヴィクトル・クザン Victor Cousin(1792 – 1867)
- エティエンヌ・ヴァシュロ Étienne Vacherot(1809 – 1897)
- ロワイエ・コラール Antoine-Athanase Royer-Collard(1768 – 1825)
- ポール・ジャネ Paul Alexandre René Janet(1823 – 1899)
- テオドール・シモン・ジュフロワ Théodore Simon Jouffroy(1796 – 1842)
- エドゥアール・ル・ロワ Édouard Le Roy(1870 – 1954)
- ジャック・シュバリエ Jacques Chevalier(1882 – 1962)
- ジャン・ダミロン
- ジュール・バルテルミー・サン・ティレール Jules Barthélemy-Saint-Hilaire(1805 – 1895)
- エミール・ブートルー Étienne Émile Marie Boutroux(1845 – 1921)
- モーリス・ブロンデル Maurice Blondel(1861 – 1949)
- フェリックス・ラヴェッソン Jean Gaspard Félix Ravaisson-Mollien(1813 – 1900)
- ルイ・ラヴェル Louis Lavelle(1883 – 1951)
- ピエール・ラロミギエール
- ルネ・ル・センヌ Ernest René Le Senne(1882 – 1954)
フランス実証主義
先験的ないし神学的・形而上学的な推論を一切排除し、経験的事実にのみ認識の根拠を認める学問上の立場。人類の発展における神学的段階と形而上学的段階の最後に来る実証主義的段階として唱えられた。
- アンリ・ド・サン=シモン Claude Henri de Rouvroy, Comte de Saint-Simon(1760 – 1825)
- イジドール・オーギュスト・マリー・フランソワ・グザヴィエ・コント / オーギュスト・コント Isidore Auguste Marie François Xavier Comte(1798 – 1857)
フランス反省哲学
常に精神をその作用およびその産出物において考察することを方法論とし、直観主義に異議を唱える。直観主義に与しない点でスピリチュアリスムとは区別される。
- ジュール・ラシュリエ Jules Lachelier(1832 – 1918)
- ジュール・ラニョー Jules Lagneau(1851 – 1894)
- ジャン・ナベール Jean Nabert(1881 – 1960)
- ポール・リクール Paul Ricoeur(1913 – 2005)➡現象学
新トマス主義
トマス・アクィナスの神学・哲学を現代に復活させる思想ないし運動。カトリック信仰を前提とし、哲学を神学の下位におき、法と民主主義を遵守して生活することを旨とする。
- エティエンヌ・ジルソン Étienne Henri Gilson(1884 – 1978)
- ジャック・マリタン Jacques Maritain(1882 – 1973)
20世紀
- シモーヌ・ヴェイユ Simone Weil(1909 – 1943)
科学哲学
科学の基礎、方法、および意味に関係する哲学の一分野。科学としての資格、科学理論の信頼性、および科学の最終的な目的を主題にする。フランス歴史的認識論またはフランス科学認識論としても知られる。
- ジュール=アンリ・ポアンカレ Jules-Henri Poincaré(1854 – 1912)
- ガストン・バシュラール Gaston Bachelard(1884 – 1962)
- ジャン・カヴァイレス Jean Cavaillès(1903 – 1944)
- ジュール・ヴイユマン Jules Vuillemin(1920 – 2001)
- エミール・メイヤーソン Émile Meyerson(1859 – 1933)
- ピエール・デュエム Pierre Maurice Marie Duhem(1861 – 1916)
- レオン・ブランシュヴィック Leon Brunschvicg(1869 – 1944)
- アレクサンドル・コイレ Alexandre Koyré(1892 – 1964)【露】
- ジョルジュ・カンギレム Georges Canguilhem(1904 – 1995)
- ミシェル・セール Michel Serres(1930 – 2019)
- ジャン=ミシェル・ベルトロ Jean-Michel Berthelot(1945 – 2006)
現象学
事実として存在する対象とは区別された純粋意識の体験としての現象について、その本質構造を記述する。
- アレクサンドル・コジェーヴ Alexandre Kojève(1902 – 1968)【露】
- エマニュエル・レヴィナス Emmanuel Lévinas(1906 – 1995)➡実存主義
- モーリス・ブランショ Maurice Blanchot(1907 – 2003)
- モーリス・メルロー=ポンティ Maurice Merleau-Ponty(1908 – 1961)
- ポール・リクール Paul Ricoeur(1913 – 2005)➡フランス反省哲学/解釈学
- ミシェル・アンリ Michel Henry(1922 – 2002)
- ジャン=フランソワ・リオタール Jean-François Lyotard(1924 – 1998)➡ポスト構造主義
- アラン Alain / エミール=オーギュスト・シャルティエ Émile-Auguste Chartier(1868 – 1951)
実存主義
生きる道を自分で切り開く、今ここにあるひとりの人間の現実存在(=実存)としての自分のあり方を求める思想。人間の実存を哲学の中心におく思想的立場。質存在(essentia)に対する現実存在(existentia)の優位を説く思想。
- ガブリエル・マルセル Gabriel Marcel(1889 – 1973)
- ジャン=ポール・サルトル Jean-Paul Charles Aymard Sartre(1905 – 1980)
- シモーヌ・ド・ボーヴォワール Simone de Beauvoir(1908 – 1986)
- エマニュエル・レヴィナス Emmanuel Lévinas(1906 – 1995)【仏】➡現象学
- アルベール・カミュ Albert Camus(1913 – 1960)
構造主義
あらゆる現象に潜在する構造を抽出し、その構造によって現象を理解し、場合によっては制御する。歴史主義や文化相対主義に対立する思想的立場。歴史的・一回性的・機会的要因よりも共時的・普遍的・法則的要因を重視する学説やその方法を総称したもの。
- ジャック=マリー=エミール・ラカン Jacques-Marie-Émile Lacan(1901 – 1981)
- クロード・レヴィ=ストロース Claude Lévi-Strauss(1908 – 2009)
- ルイ・ピエール・アルチュセール Louis Pierre Althusser(1918 – 1990)
- ピエール・ブルデュー Pierre Bourdieu(1930 – 2002)
ポスト・マルクス主義
- アラン・バディウ Alain Badiou(1937 – )
記号学
記号プロセス (記号論) と意味形成の体系的な研究。意味形成とさまざまな種類の知識を研究する科学の一分野。
- ロラン・バルト Roland Barthes(1915 – 1980)
- ウンベルト・エーコ Umberto Eco(1932 – 2016)【伊】
- クリスチャン・メッツ Christian Metz(1931 – 1993)
ポスト構造主義
1960年後半から1970年後半頃までにフランスで誕生した思想運動の総称。主体や意識を重んじる実存主義を批判して登場した構造主義の考え方を批判的に継承し、西洋の形而上学批判に及んだ一連の哲学・思想傾向。
- ジャック・デリダ Jacques Derrida(1930 – 2004)
- ジャン=フランソワ・リオタール Jean-François Lyotard(1924 – 1998)➡現象学
- ジル・ドゥルーズ Gilles Deleuze(1925 – 1995)
- ミシェル・フーコー Michel Foucault(1926 – 1984)
- ジャン・ボードリヤール Jean Baudrillard(1929 – 2007)
- ピエール=フェリックス・ガタリ Pierre-Félix Guattari(1930 – 1992)
- ジャン=リュック・ナンシー Jean-Luc Nancy(1940 – 2021)
- ジュリア・クリステヴァ/ユリア・クリステヴァ Julia Kristeva / Юлия Кръстева(1941 – )