領域社会学の位置づけ
領域社会学は「特殊社会学」(Special sociologies)、「連字符社会学」(Hyphen sociologies)とも呼ばれ、社会学の個別研究領域ごとに成立している、部門別の社会学のことである。
理論社会学と領域社会学の関係は決して対立概念ではない。理論社会学のレベルで「理論」というのは、抽象度の高い一般化命題を指すものであり、領域社会学という個別領域ごとの枠組みの中で用いられる「理論」も存在する。
より厳密には、総論、ミクロ社会学、マクロ社会学で取り扱われる理論は「一般理論」、家族社会学・農村社会学・都市社会学等、個別の領域社会学の枠組みの中で取り扱われる理論は「中範囲理論」といえる。
「内包的領域社会学」は、本来的に社会学における研究領域に属する個別の「〇〇社会学」「●●論」にあたるものである。
「外延的領域社会学」は、社会学以外の固有の学問領域に属するが、それぞれの領域が「社会」と重要な関連を有するがゆえに、それぞれを研究する「〇〇社会学」として成立しているものを指す。
研究対象 | 理論社会学 | 領域社会学 | ディシプリン | |||
ミクロ社会学 | 行為 相互行為 自我 役割 | 一般理論 | 中範囲理論 | 内包的 領域社会学 | 社会的交換理論 | 社会学 |
中範囲理論 | 合理的選択理論 | |||||
中範囲理論 | コミュニケーション論 | |||||
中範囲理論 | 集合行為論 | |||||
中範囲理論 | 社会運動論 | |||||
中範囲理論 | 逸脱行為論 (犯罪・非行) | |||||
中範囲理論 | ライフスタイル論 | |||||
中範囲理論 | 青年社会学 | |||||
中範囲理論 | 女性社会学 | |||||
中範囲理論 | 外延的 領域社会学 | 言語社会学 | 言語学 | |||
中範囲理論 | 芸術社会学 | 芸術学 | ||||
中範囲理論 | スポーツ社会学 | 体育学 | ||||
マクロ社会学 | 家族 | 中範囲理論 | 内包的 領域社会学 | 家族社会学 | 社会学 | |
農村 | 中範囲理論 | 農村社会学 | ||||
都市 | 中範囲理論 | 都市社会学 | ||||
社会階層 | 中範囲理論 | 社会階層研究 | ||||
組織(企業) | 中範囲理論 | 中間的 | 産業社会学/経営社会学 | 社会学/経営学 | ||
法 | 中範囲理論 | 外延的 領域社会学 | 法社会学 | 法律学 | ||
政治 | 中範囲理論 | 政治社会学 | 政治学 | |||
経済 | 中範囲理論 | 経済社会学 | 経済学 | |||
教育 | 中範囲理論 | 教育社会学 | 教育学 | |||
宗教 | 中範囲理論 | 宗教社会学 | 宗教学 |
領域社会学と経験社会学
個別的な領域社会学は、理論社会学よりも研究対象の範囲が限定されている分だけ、より具体的で経験レベルに近接している。領域社会学は、理論社会学と経験社会学の中間に位置する。
経験社会学、とりわけ社会調査は、具体的な問題があって初めて行われるものであるから、通常ひとつの領域社会学の内部に位置しており、その中の特定の問題にテーマが絞り込まれている。
多くの領域社会学は、そのような経験社会学の積み重ねにより形成されてきた。
理論社会学と領域社会学
個別的な領域社会学にとって、理論社会学の存在価値は、以下の2つ。
(1)社会学的分析のためのツールとなる共通の基礎概念を確立する
多数の個別的な領域社会学は、これらの基礎概念を共有することによって、経験的研究が個別対象ごとの、ディシプリンを欠いた漫然たる記述になってしまうことを防止できる
(2)一般的なデータによる基礎命題を提示し、より個別的なタームによる仮説命題の作成のための示唆を与える
多数の個別的な領域社会学は、そのような示唆を共有することによって、経験的研究がバラバラになってしまわないように、社会学ディシプリンとして統合していく要となる
【参考】国際社会学会(ISA)「社会学文献情報データベース」
日本において発表された、あるいは、日本の研究者が発表した社会学関連の文献について書誌情報を収録した「社会学文献情報データベース」が国際社会学会(ISA)から提供されている。
このデータベースにおいて、「内容分類番号」として、日本社会学会研究活動委員会の定める専攻分野分類に準じた形で、社会学の内容分類がなされている。以下に、上記サイトに掲載されている「内容分類番号」を転載する。最新版・公式版は、上記公式サイトから確認いただきたい。
コード | 内容 | コード | 内容 | コード | 内容 |
1 | 社会哲学・社会思想・社会学史 | 13 | 人口 | 25 | 民族問題・ナショナリズム |
---|---|---|---|---|---|
2 | 一般理論 | 14 | 教育 | 26 | 比較社会・地域研究 |
3 | 社会変動論 | 15 | 文化・宗教・社会意識 | 27 | 差別問題 |
4 | 社会集団・組織論 | 16 | 社会心理・社会意識 | 28 | 性・世代 |
5 | 階級・階層・社会移動 | 17 | コミュニケーション・情報・シンボル | 29 | 知識・科学 |
6 | 家族 | 18 | 社会病理・社会問題 | 30 | 余暇・スポーツ |
7 | 農漁山村・地域社会 | 19 | 社会福祉・医療 | 31 | 環境 |
8 | 都市 | 20 | 計画・開発 | 32 | 〔欠番〕 |
9 | 生活構造 | 21 | 社会学研究法 | 33 | 総説・概説 |
10 | 政治・国際関係 | 22 | 経済 | ||
11 | 社会運動・集団行動 | 23 | 社会史・民俗・生活史 | 99 | その他 |
12 | 経営・産業・労働 | 24 | 法律 |
社会学の構造 The Structure of Sociology
理論 | 経験 | 歴史 | 政策 | ||||
総論 | 社会学原理 | 経験社会学 | 社会史 社会学史 (学説史) 第一世代 第二世代 (マクロ社会学) (ミクロ社会学) | 社会問題 社会政策 | |||
社会調査 統計的調査 計量社会学 | |||||||
ミクロ社会学 | 行為者の内部分析 | 自我理論 社会意識論 | ミクロ社会 調査・解析 | ミクロ 社会史 | ミクロ 社会政策 | ||
社会システム内の相互行為 と社会関係分析 | 相互行為論 役割理論 社会関係論 社会的交換論 | ||||||
マクロ社会学 | 社会システム 構造論 | マクロ社会 調査・解析 | マクロ 社会史 | マクロ 社会政策 | |||
社会システム 変動論 | |||||||
領域社会学 | 内包的領域 社会学 | 基礎集団 | 家族 | 家族社会学 | 家族調査 | 家族史 | 家族政策 |
機能集団 | 企業 | 組織社会学 産業社会学 | 組織調査・ モラール調査 | 組織史 労働史 | 経営社会政策 労働政策 | ||
全体社会 ×社会集団 | 国家 | 国家社会学 | 国勢調査 | 国家史 | 福祉国家政策 | ||
地域社会 | 農村 | 農村社会学 | 農村調査 | 農村史 | 農村政策 | ||
都市 | 都市社会学 | 都市調査 | 都市史 | 都市政策 | |||
準社会 | 社会階層 | 社会階層理論 | 社会階層調査 | 社会階層史 | 不平等問題 | ||
外延的領域 社会学 | 経済 | 経済社会学 | 経済行動・ 市場調査 | (経済史) | (経済政策) | ||
政治 | 政治社会学 | 投票行動・ 政治意識調査 | (政治史) | (政治政策) | |||
法 | 法社会学 | 法行為・ 法意識調査 | (法制史) | (法政策) | |||
宗教 | 宗教社会学 | 宗教行為・ 宗教意識調査 | (宗教史) | (宗教政策) | |||
教育 | 教育社会学 | 教育行為・ 教育意識調査 | (教育史) | (教育政策) |
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