概要
統計的調査とは、研究対象の量的な側面に着目して調査する手法で、統計的社会調査とも呼ばれる。通常は、ランダム・サンプリングによって母集団から抽出された個人を被調査者とし、標準化された質問紙を用いた面接によって答えを得る形式の社会調査法である。
統計的・数学的な手法が用いられ、アンケートなどにより得られた回答を数値化し統計処理を行うことで仮説を検証する。調査結果が画一的であり対象を深く掘り下げることが難しいという問題がつきまとうが、サンプル数が十分に多くかつ選定が適切であれば客観性があり、事象全体を把握することができる。
統計的社会調査には、データ収集の技法別に、郵送調査、留め置き調査、集合調査など種々あるが、近年ではインターネットを用いたウェブ調査が増加しつつある現状である。
データ解析手法
統計的社会調査には、データ作成手法としての社会調査と、データ解析手法としての統計学の活用が一体化されたものである。
特に、統計学的手法の活用については、以下のポイントがある。
❶記述統計学の知識
統計的社会調査(量的調査)によって得らえたデータを解読するには、多数の質問紙に記入された答えを集計して、度数分布表やクロス集計を作成し、平均値・分散・相関係数・回帰係数の計算をする必要がある。
❷推測統計学の知識
社会調査には多くの場合、サンプリング確率論に依存した手続きが適用される。それらの度数分布表や統計数値を解読するには、サンプルにおけるパーセント・平均値から母集団におけるそれらを推定するとか、サンプル内でのパーセント・平均値の差を検定する必要がある。
統計的社会調査の起こり
元来、自然科学・工学分野のものであった統計学的手法を社会調査に導入したのは、1920年代のアメリカで、チェイピンが都市の社会階層の研究で、「社会経済的地位」を測定するための尺度法を開発したことに由来するとされている。
チェイピン門下のシーウェルは、農村の社会階層を研究し、チェイピンの社会経済的地位尺度を受け継いで、農村にも適用できるように改良した。これが、チェイピン・シーウェル尺度である。
シーウェルは後に、第二次世界大戦直後にCIE(民間情報教育局)使節団として来日し、日本の社会学者に統計的調査手法を伝えた。
元来、統計的社会調査法は、戦前にアメリカ留学していた戸田貞三によって日本にも輸入されていたが、日本に定着したのは戦後のことである。
戦後日本におけるこの種の社会調査の普及は目覚ましく、民主政治勃興と相まって、各新聞社が競って政党支持率の世論調査を行い、調査結果を新聞報道したので、一気に社会調査手法(による調査結果)が広く社会一般に親しまれるようになった。
それらの新聞記事には、データの確証性を高めるため、ランダム・サンプリングの概念、層化多段抽出法といった専門用語まで含めて説明されるのが常であったから、社会調査手法についても周知のこととなっていった。
その後、専門の数理統計学者が社会学・社会調査の分野にも進出するようになり、林知己夫『サンプリング調査はどう行うか』(1950)、西平重喜『統計調査法』(1957)という書籍が出たことで、社会学者にも大きな刺激となった。
それを受けて、安田三郎・原純輔『社会調査ハンドブック』(改訂版、1982)、安田三郎・海野道郎『社会統計学』(改訂版、1977)等が世に出て、統計的調査の普及に大いに貢献した。
社会学の構造 The Structure of Sociology
理論 | 経験 | 歴史 | 政策 | ||||
総論 | 社会学原理 | 経験社会学 | 社会史 社会学史 (学説史) 第一世代 第二世代 (マクロ社会学) (ミクロ社会学) | 社会問題 社会政策 | |||
社会調査 統計的調査 計量社会学 | |||||||
ミクロ社会学 | 行為者の内部分析 | 自我理論 社会意識論 | ミクロ社会 調査・解析 | ミクロ 社会史 | ミクロ 社会政策 | ||
社会システム内の相互行為 と社会関係分析 | 相互行為論 役割理論 社会関係論 社会的交換論 | ||||||
マクロ社会学 | 社会システム 構造論 | マクロ社会 調査・解析 | マクロ 社会史 | マクロ 社会政策 | |||
社会システム 変動論 | |||||||
領域社会学 | 内包的領域 社会学 | 基礎集団 | 家族 | 家族社会学 | 家族調査 | 家族史 | 家族政策 |
機能集団 | 企業 | 組織社会学 産業社会学 | 組織調査・ モラール調査 | 組織史 労働史 | 経営社会政策 労働政策 | ||
全体社会 ×社会集団 | 国家 | 国家社会学 | 国勢調査 | 国家史 | 福祉国家政策 | ||
地域社会 | 農村 | 農村社会学 | 農村調査 | 農村史 | 農村政策 | ||
都市 | 都市社会学 | 都市調査 | 都市史 | 都市政策 | |||
準社会 | 社会階層 | 社会階層理論 | 社会階層調査 | 社会階層史 | 不平等問題 | ||
外延的領域 社会学 | 経済 | 経済社会学 | 経済行動・ 市場調査 | (経済史) | (経済政策) | ||
政治 | 政治社会学 | 投票行動・ 政治意識調査 | (政治史) | (政治政策) | |||
法 | 法社会学 | 法行為・ 法意識調査 | (法制史) | (法政策) | |||
宗教 | 宗教社会学 | 宗教行為・ 宗教意識調査 | (宗教史) | (宗教政策) | |||
教育 | 教育社会学 | 教育行為・ 教育意識調査 | (教育史) | (教育政策) |
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