[定点観測] 経営指標 企業ランキング2024.3.29 追加しました
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目標利益(税引後利益)を達成する販売数量を求める – 貢献利益単価法

目標利益(税引後利益)を達成する販売数量を求める - 貢献利益単価法 経営分析
目標利益(税引後利益)を達成する販売数量を求める – 貢献利益単価法
目標利益(税引後利益)を達成する販売数量を求める – 貢献利益単価法
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計算手法

税引後利益を目標利益とした場合に、必要販売数量を求めるには、通常2つのステップを必要とする。

❶ 税引利益を税引利益に変換する
❷ 税引前利益から必要販売数量を求める

目標利益の計算式

損益分岐点分析(CVP分析)において、費用が固変分解された従来通りのシンプルな利益恒等式は以下のとおりである。

売上高 - 変動費 - 固定費 = 利益

さらに、売上高という金額指標を販売数量という物量指標に変換するためには、

売上高 = @販売単価 × 販売数量

という読み替えを行うだけでよい。

あわせて、変動費も、売上高と足並みをそろえて 単価×数量 の形で表しておくことにする。

上記の利益恒等式における利益概念は法人税を考慮していない「税前利益」であることを明確に記述すると、

売上高 – 変動費 – 固定費 = 税前利益

(@販売単価 × 販売数量) – (@変動費単価 × 販売数量) – 固定費 = 税前利益

(@販売単価 – @変動費単価) × 販売数量 – 固定費 = 税前利益

@貢献利益単価 × 販売数量 – 固定費 = 税前利益 ・・・式1

@貢献利益単価 × 販売数量 = 固定費 + 税前利益

\( \displaystyle \bf 販売数量= \frac{固定費 + 税前利益}{@貢献利益単価~~~~~}・・・式1’\)

これまでの復習になるが、式1′ が必要販売数量を貢献利益単価で求める基本形になる。

変動費と固定費には法人税が含まれていないため、式1の右辺を税引後利益にするためには、両辺から法人税を控除すればよくて、

@貢献利益単価 × 販売数量 – 固定費 – 法人税 = 税前利益 – 法人税 ・・・式2

@貢献利益単価 × 販売数量 – 固定費 – 法人税 = 税引後利益     ・・・式3

式3から税引後利益ベースに式を変形できていることがわかる。

式2の法人税は金額で与えられており、これを税前利益で表すには、「実効税率」を用いて、

@貢献利益単価 × 販売数量 – 固定費 – (実効税率 × 税前利益) = 税前利益 – (実効税率 × 税前利益)

@貢献利益単価 × 販売数量 – 固定費 – (実効税率 × 税前利益) =(1 – 実効税率) × 税前利益 ・・・式4

式4から、税引後利益ベースの利益恒等式を、実効税率と税前利益で表すことが可能になった。

このとき、式3と式4の右辺は同じなので、

税引後利益 = (1 – 実効税率) × 税前利益

\( \displaystyle \bf 税前利益= \frac{~税引後利益~~~~~}{(1- 実効税率)~~~~~} ~~~~~・・・式5\)

という関係が導かれる。

上記までの一連の作業から、目標利益とされる税引後利益を税前利益に変換後、税前利益ベースの利益恒等式から必要販売数量を求めればよいことになる。

❶ 税引後利益を税引前利益に変換する ・・・式5
❷ 税引前利益から必要販売数量を求める ・・・式1′

目標利益を達成するための必要販売数量の計算手順

前章における目標利益の計算式から、以下のシミュレーションプロセスが考えられる。

目標税引後利益を達成する販売数量を求める手順(貢献利益単価法)
  • 目標税引後
    利益の設定
    金額で目標税引後利益を設定する

    ・売上高利益率、原価値入率の設定が先にある場合も仮計算で目標金額に変換しておく

  • 目標税前利益の計算
    目標税前利益を計算する

    ・実効税率を決める(実効税率情報を入手する)
    ・(1 – 税率)で税引後利益を割り戻すことで算出する

  • コストの試算
    目標利益を設定するターゲットビジネスにかかるコストを試算する

    ・変動費:当該ビジネスの活動量に比例して発生するコスト(単価)
    ・固定費:当該ビジネスオペレーションの維持・運用の全体にかかるコスト(金額)

  • 目標販売数量の計算
    目標利益達成に必要な最低限度の販売数量を計算する

    ・損益分岐点の公式を使って必要販売数量で解く

シミュレーション

Excelテンプレート形式で目標利益(税引後利益)の計算方法を示す。

入力欄の青字になっている「目標税引後利益」「実効税率」「販売単価」「変動費単価」「固定費発生額」に任意の数字を入力すると、必要販売数量が求められる。

どんな入力をしても、元ファイルが壊れることはない。入力し直したい、元に戻したい場合は、画面を更新(F5押下など)すれば、初期値に戻る。

自分の手元でじっくり検証したい場合は、上記のダウンロードボタンから、Excelをダウンロードすることをお勧めする。

計算目的と使い方

損益管理とキャッシュフロー管理の橋渡し

商品別の収益性分析や事業部の業績管理(予実差異分析)において、実効税率を社内で適正レベルに管理するのは非常に難しい。

よって、実効税率は、税務担当部署に閾値を決めてもらったら所与の前提としていったん置いておき、管理可能コストだけで計画立案や着地点予測を行うことが多い。

それゆえ、一般的に、商品別損益分析や事業部業績管理において、税前利益と税引後利益の違いにクローズアップされる機会は少ない。

ただし、税前利益では、税効果の分だけキャッシュの増減に与える影響をとらえることはできない。

よって、積極的にセグメント別(商品や事業部組織など)にキャッシュフローまで管理しようと考えた場合は、利益管理指標として税引後利益の方が目的に適っている。

また、セグメント別にB/S管理をしようとしたら、現金同等物の増減を測定する必要が生じるため、こちらは消極的にだが、やはり税引後利益で業績管理を行う必要が出てくる。

それゆえ、単にP/Lだけでなく、B/SまたはC/Fまでの範囲でセグメント別業績管理を行う場合には、税効果を考慮した利益指標を用いることがどうしても不可避となる。

従来は、タックスプランニング(タックスインバージョン)を過剰に管理し、租税回避を合法の範囲で可能な限り行うことで、実効税率をグローバル企業内で最小化するようにコントロールし、資金繰りを容易にすることで資金コストを下げる手法が大いに喧伝されていた。

しかし、現在は、パナマ文書の流出を経て、BEPS、デジタル課税(IT課税)と、グローバル企業(多国籍企業)にとって、ますます合法的に税コストを最小化する手段を取りにくくなっている外部環境になりつつある。

税引後利益単価の取り扱い

あたかも、目標税引後利益から目標とする税引後利益を達成するのに必要な販売数量を算出しているので、@税引後利益単価を計算するのが目的であるように見えるかもしれない。

しかし、固定費および法人税は、あくまで販売数量の増減に対して比例的に増減することは滅多にない。

それゆえ、「固定費」という名前がついているのである。

あくまで、計算結果として(事後的に)税引後利益単価が求まっているのであって、税引後利益単価をいくらいくらにするかという目標を立てて損益管理を実施することはできない。

なぜならば、販売数量がどれだけ増減しても、税引後利益単価を一定に保つためには、販売数量に対して固定費を比例的に増減させる必要があるからである。

もはや、そういうコストビヘイビアを示すコストは固定費ではなく変動費の性質そのものを示すからである。

解説

手取り額から税額を決めるグロスアップ計算

「グロスアップ」とは所定の税引後金額(ネット額)を確保するために必要な税込金額(グロス額)を逆計算する税務で行われている計算方法である。

例えば、海外への出向者給与や、海外人材の日本での受け入れに際して、各国の社会保険制度・税金制度の違いによって手取り額が変わるのを防ぐため、給与支払い対象者がどの国のどの制度が適用されても、手取り額が変わらないようにするために活用される。

手取り額 → 社会保険負担額・納税額 → 実際の支払額

実務的には様々な控除制度が併用されるため、すべての対象となる賦課・控除の計算がなされる必要がある。

管理会計においては、特に金額的影響度の大きい法人税について、観便法として実効税率を用いたグロスアップ計算を適用して、税引後利益から逆残で目標とすべき税前利益やその目標税前利益を達成するための売上高などの諸条件を決めていく際に用いられることが多い。

損益分岐点販売数量が示す税引前利益は本当に目標税引後利益を導くか?

上記の目標税引後利益達成販売数量を表すグラフ上では、あくまで税引前利益がプロットされているにすぎず、シンプルで見た目にわかりやすいまま税引後利益をプロット(描画)することはできない。

それゆえ、このグラフが本当に目標税引後利益の条件も満たしているのか不思議に思う人もいるかもしれない。

これは、下記の2つの式が同時に成り立っていることを前提にすると自明の理であるといえる。

@貢献利益単価 × 販売数量 – 固定費 = 税前利益

税引後利益 = (1 – 実効税率) × 税前利益

既にグラフとして描画しているが、念のため簡単な数字を入れて検証してみると、

@5 × 30 – 50 = 100

70 = (1 – 30%) × 100

これを、P/Lの形で表現してみると、

科目単価数量金額
売上高1530450
変動費1030300
貢献利益530150
固定費50
税前利益100
法人税30
税引後利益70

逆説的に、貢献利益法による損益分岐点分析は、@販売単価@変動費単価は一義的にそれほど重要ではなく、@貢献利益単価 こそが損益分岐点販売数量に直接的に作用する最重要な計算要素であることがわかる。

CVP分析/損益分岐点分析 CVP分析/損益分岐点分析

1固変分解/貢献利益変動費、固定費、貢献利益、固変分解
2損益分岐点分析様々な損益モデルで損益分岐点を求める
3CVP分析金額・単価・数量を変数にした損益モデル
4CVP分析フレームワークを用いた意思決定利益最大化を達成するための条件選択方法

粗利、変動費、固定費の関係で儲ける会社づくりをストーリー仕立てで理解できる。

管理会計入門書。CVP分析や固変分解の基礎がわかる。

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