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EBITDA有利子負債倍率(EBITDA Interest Bearing Debt Ratio)

EBITDA有利子負債倍率(EBITDA Interest Bearing Debt Ratio) 経営分析
EBITDA有利子負債倍率(EBITDA Interest Bearing Debt Ratio)
EBITDA有利子負債倍率(EBITDA Interest Bearing Debt Ratio)
EBITDA有利子負債倍率(EBITDA Interest Bearing Debt Ratio)
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計算式

EBITDA有利子負債倍率は、有利子負債をEBITDAで割り算して求める。有利子負債の残高がその返済原資となるべきEBITDAの何倍の規模になっているかを示す。返済原資となり得るEBITDAに対する有利子負債残高の相対的大きさから、企業の有利子負債の返済能力を見る指標であり、「健全性分析」指標のひとつである。

単位は、分母にくるEBITDAの何倍の純有利子負債残高であるかを測定する指標であるから、当然に「倍」が用いられる。

\( \displaystyle \bf EBITDA有利子負債倍率=\frac{有利子負債}{EBITDA} \)


有利子負債 120
EBITDA 40
\( \displaystyle \bf EBITDA有利子負債倍率 = \frac{120}{40} = 3倍 \)

このとき、EBITDAが年間の値ならば、「倍」という単位は、「年」というふうに期間の長さで表すこともできる。意味は、何年分のEBITDAで返済できるかということで、本質的には「倍」としたときと考え方は変わらない。

類似指標との計算上の相違

EBITDA有利子負債倍率には、

❶分子:有利子負債を純額で捉えるか総額で捉えるか
❷分母:倍率計算のベースにどのフロー情報を用いるか
(❸名称/命名の方針の違い)

という論点があり、類似の指標が複数存在する。

#指標名分子分母
1有利子負債倍率有利子負債グロスキャッシュフロー
2   〃有利子負債営業キャッシュフロー
3純有利子負債倍率有利子負債-手元流動性グロスキャッシュフロー
4   〃有利子負債-現預金営業キャッシュフロー
5   〃有利子負債-手元流動性営業キャッシュフロー
6   〃有利子負債-現預金グロスキャッシュフロー経済産業省の
ローカルベンチマーク
ではこれを
EBITDA有利子負債倍率
7EBITDA有利子負債倍率有利子負債EBITDA
8EBITDA純有利子負債倍率有利子負債-手元流動性EBITDA
9   〃有利子負債-現預金EBITDA

経済産業省が2016年に公表した経営診断指標である「ローカルベンチマーク(ロカベン)」で取り上げられている「EBITDA有利子負債倍率」の説明は下記を参照して頂きたい。

指標の細かい定義は下記稿を参考にして頂きたい。

  • 有利子負債:金利をつけて返済しなければならない負債。借入金、社債、CBなど
  • EBITDA:資本構成と法人税負担条件と償却計算のための会計基準差を度外視して、それ以外の事業固有の要因による利益獲得可能性(収益性)を評価するための利益指標
    • トップダウン方式=営業利益+持分法損益+持分変動損益+金融収益+償却費・減損損失
    • ボトムアップ方式=税前利益+金融費用-金融収益+償却費・減損損失

定義と意味

EBITDA有利子負債倍率は、EBITDAに対して、有利子負債額が何倍あるかを示している。

前章で見た通り、分子の(純)有利子負債の定義に主なもので2通り、分母のキャッシュフローの定義に主なもので2通り、2×2=4通り の計算式が存在する。

これに、経産省ロカベンの「EBITDA有利子負債倍率」指標の説明が「有利子負債がキャッシュフローの何倍かを示す指標であり、有利子負債の返済能力を図る指標の一つ」とされているため、EBITDAが広義のキャッシュフロー概念に含まれると考えれば、厳密には、2×3=6通り の(純)有利子負債倍率の定義が存在することになる。

こうした計算式の揺らぎがあるため、本指標に関しては、面倒でも計算式の確認から行うのが無難であろう。

なお、グロスキャッシュフロー=営業利益+減価償却費は、トップダウン方式のEBITDAの計算方式と整合的である。簡便法として、グロスキャッシュフローをEBITDAとしても大きな差異が生じにくい企業が多数にのぼることからも理解できる。

それゆえ、EBITDA=グロスキャッシュフローとした場合、EBITDA有利子負債倍率有利子負債倍率(グロスキャッシュフローベース)の数値は一致することになる。

計算式の意味の解説に戻ると、この指標は、有利子負債額とEBITDAの相対的バランスから、有利子負債の返済能力を表しており、倍率が低いほど返済能力があり、財務に余裕があるとされる。

EBITDAは、金利情勢、税制、償却方法などの会計方針の違いに捉われずに、分析対象の収益性をできるだけ公平に比較・評価するために生み出された指標である。それは得てして、その企業の現金創出力を表す指標としての有効性にも注目されるようになった。

そのEBITDAと有利子負債の相対的バランスから返済能力を推し量ろうとするのは、❶キャッシュフロー計算書を作成していない企業でも活用できる、❷金利情勢・税制・会計方針の差異を気にせずに債務返済能力を評価できる、という2つメリットを享受することを可能にもした。

有利子負債倍率」と同様に、類似の指標には、「債務償還年数」「借入金月商倍率」「負債回転期間」がある(それぞれの指標との対比は「有利子負債倍率」を参照)。

解釈と使用法

EBITDA有利子負債倍率の成り立ちから、有利子負債とその返済原資となり得るEBITDAの割合を表示するものであることは明らかだから、

EBITDA有利子負債倍率  ベンチマーク ならば、

相対的に有利子負債に対する返済能力が高い(借入余力がある)

EBITDA有利子負債倍率  ベンチマーク ならば、

相対的に有利子負債に対する返済能力が低い(借入余力がない)

という傾向にあることは分かっている。

とはいえ、EBITDA有利子負債倍率の水準は、採用されているビジネスモデルに大きく影響される。

業界ごとの利益水準はもとより、その業界に課せられている最適資本構成(有利子負債と自己資本の理想的な構成割合)も様々であることから、一応、業種ごとの平均値をとりあえずのベンチマーク指標とすることの意義は大きいといえる。

2021年度『法人企業統計』から、EBITDA有利子負債倍率の概算値を算出した。

あえて稿を分けて作表するから当然に、「グロスキャッシュフロー」ベースの有利子負債倍率と異なる指標になるよう、EBITDAの定義をより細かく厳密にした。

\( \displaystyle \bf EBITDA有利子負債倍率=\frac{有利子負債}{EBITDA} \)

  • 有利子負債:受取手形割引残高+金融機関借入金(流動)+その他の借入金+社債+金融機関借入金(固定)+その他の借入金
  • EBITDA:税引前当期純利益+減価償却費+支払利息-営業外収益
コード業種EBITDA有利子
負債倍率(倍)
140生活関連サービス業-22.05
139宿泊業-10.69
156宿泊業、飲食サービス業(集約)-9.40
148飲食サービス業-8.85
116石油製品・石炭製品製造業2.43
160職業紹介・労働者派遣業2.68
145情報通信機械器具製造業2.74
154はん用機械器具製造業2.88
106鉱業、採石業、砂利採取業3.17
115化学工業3.32
142情報通信業3.33
123自動車・同附属品製造業3.55
121生産用機械器具製造業3.55
143その他のサービス業3.65
126その他の製造業3.76
122電気機械器具製造業3.93
146輸送用機械器具製造業(集約)4.02
108製造業4.09
124業務用機械器具製造業4.09
136ガス・熱供給・水道業4.39
117窯業・土石製品製造業4.66
107建設業4.78
119非鉄金属製造業5.00
151その他の物品賃貸業5.10
118鉄鋼業5.12
120金属製品製造業5.25
109食料品製造業5.33
138広告業5.35
113パルプ・紙・紙加工品製造業6.18
132水運業7.02
112木材・木製品製造業7.19
128小売業7.24
104全産業(除く金融保険業)7.83
153教育、学習支援業7.90
129卸売業・小売業(集約)8.15
152医療、福祉業8.18
114印刷・同関連業8.78
127卸売業8.92
144非製造業9.85
159その他の学術研究、専門・技術サービス業9.87
149物品賃貸業(集約)10.26
125その他の輸送用機械器具製造業11.18
131陸運業11.22
150リース業11.23
155不動産業、物品賃貸業(集約)12.15
134運輸業、郵便業(集約)12.47
130不動産業13.05
161学術研究、専門・技術サービス業(集約)14.36
103漁業14.66
141娯楽業14.80
158純粋持株会社15.71
137サービス業(集約)16.68
135電気業25.02
110繊維工業29.71
133その他の運輸業34.88
105農林水産業(集約)36.97
101農業、林業50.11
157生活関連サービス業、娯楽業(集約)69.77
2021年『法人企業統計』より筆者作成

ランキング上位のマイナス値となる業種はEBITDAがマイナス値による異常値であるから分析対象外とする。

主要業種を並べてみると、

  • 製造業:4.09倍
  • 建設業:4.78倍
  • 全産業(除く金融保険業):7.83
  • 卸売業・小売業(集約):8.15倍
  • 非製造業:9.85倍
  • サービス業(集約):16.68倍

今回は敢えて、有利子負債に割引手形を含めてランキングを作成した。作成意図通り、卸売業・小売業(集約)が全産業平均より下位に来た。

手形割引料が実質的な利息だとみなした場合の評価となる。これで、相対的に負債より自己資本を厚くする製造業・建設業との違いがより明確になった。

製造業・建設業は、業績が市況に影響を受けがちであることから、負債比率を高めると倒産リスクが急激に大きくなることが知られている。

ランキング下位では、「電気業」の事業の安定度の裏返しか、負債依存度が高いことが目立つ。

シミュレーション

以下に、Excelテンプレートとして、FY16~FY21のセブン&アイ・ホールディングスの実績データをサンプルで表示している。

入力欄の青字になっている「期間」「短期借入金」「1年内償還社債」「1年内返済長期借入金」「社債」「長期借入金」「営業利益」「受取利息」「受取配当金」「持分法損益」「電子マネー退蔵益」「減価償却費」「減損損失」「のれん償却額」に任意の数字を入力すると、表とグラフを自由に操作することができる。

どんな入力をしても、元ファイルが壊れることはない。入力し直したい、元に戻したい場合は、画面を更新(F5押下など)すれば、初期値に戻る。

自分の手元でじっくり検証したい場合は、上記のダウンロードボタンから、Excelをダウンロードすることをお勧めする。

セブン&アイ・ホールディングスのEBITDA(ボトムアップ方式)は、キャッシュフロー概念のひとつであるグロスキャッシュフローと大差がない。

2兆3000億円を投じた米ガソリンスタンド併設型コンビニ「スピードウェイ」の2年越しの買収に伴う指標の大きな変動についての考察は、「有利子負債倍率」での解説に譲る。

使用機能

SUM関数、スパークスライン、絶対参照

参考サイト

同じテーマについて解説が付され、参考になるサイトをいくつか紹介しておく。

[財務諸表分析]比率分析指標の体系と一覧[財務諸表分析]比率分析指標の体系と一覧

1財務諸表分析の理論経営分析との関係、EVAツリー
2成長性分析(Growth)売上高・利益・資産成長率、持続可能成長率
3流動性分析(Liquidity)短期の支払能力、キャッシュフロー分析
4健全性分析(Leverage)財務レバレッジの健全性、Solvency とも
5収益性分析(Profitability)ROS、ROA、ROE、DOE、ROIC、RIなど
6効率性分析(Activity)各種資産・負債の回転率(回転日数)、CCC
7生産性分析(Productivity)付加価値分析、付加価値の分配
8市場指標(Stock Market)株価関連分析、株主価値評価

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