概要
社会学がベースとする社会学的推論は、少なくとも古代ギリシャ人まで遡ることができる。古代ギリシャは諸学の始祖ともいえるので、社会学もその他の西洋の社会科学・自然科学とルーツをひとつにしているといえる。
学問分野としての社会学は、フランス革命直後、主に啓蒙思想から社会の実証主義的科学として登場したと考えられる。
社会学は経験主義・実証主義という哲学的命題と共に成長してきた。経験主義・実証主義に即した種々の社会調査法が編み出されて、フィールドワークや各種サーベイにより理論が検証されたり、また新たな理論が発見されてきた。
こうして社会学の中で発展していた量的な社会調査の手法は政府・企業・機関の行う一般的手法となり、他の社会科学においても利用されるようになる。
第一世代
ヨーロッパ近代初頭以来の啓蒙思想の流れの中から、近代化と産業化の方向を見定めようとする洞察から学問としての社会学が誕生した。
欧米
社会学はまずマクロ社会学として出発した。
- イジドール・オーギュスト・マリー・フランソワ・グザヴィエ・コント / オーギュスト・コント Isidore Auguste Marie François Xavier Comte(1798 – 1857)【仏】
- ハーバート・スペンサー Herbert Spencer(1820 – 1903)【英】
日本
明治前期の自由民権思想と明治後期の国粋主義からそれぞれの影響を受けて発展していった。
第二世代
現代社会学の発展の基礎を築いた世代。大学に社会学の講座ができ始め、社会学の学会が組織化され始めた。マクロ社会学の理論的確立と、ミクロ社会学の発見がなされた。
マクロ社会学
- エミール・デュルケーム Émile Durkheim(1858 – 1917)【仏】
- フェルディナント・テンニース Ferdinand Tönnies(1855 – 1936)【独】
- マックス・ヴェーバー Max Weber(1864 – 1920)【独】
ミクロ社会学
第二世代においてミクロ社会学が誕生した。
- ゲオルク・ジンメル Georg Simmel(1858 – 1918)【独】
- チャールズ・ホートン・クーリー Charles Horton Cooley(1864 – 1929)【米】
- ジョージ・ハーバート・ミード George Herbert Mead(1863 – 1931)【米】
- ウィリアム・アイザック・トマス William Isaac Thomas(1863 – 1947)【米】
日本
- 高田保馬(1883 – 1972)
- 戸田貞三(1887 – 1955)
- 新明正道(1898 – 1984)
第三世代
現代社会学の諸潮流として、戦後における社会学の隆盛を誇った世代。
機能主義理論
- タルコット・パーソンズ Talcott Parsons(1902 – 1979)【米】
- ニクラス・ルーマン Niklas Luhmann(1927 – 1998)【独】
現象学的社会学/シンボル的相互行為主義
現象学的社会学
フッサールの現象学を社会学に応用したもの。現象学は極めて強力な反経験主義・反実証主義の哲学であることから、現象学的社会学の科学理論的立場は徹底した理念主義(idealism)となる。
- テオドール・リット Theodor Litt(1880 – 1962)【独】
- アルフレート・フィアカント Alfred Vierkandt(1867 – 1953)【独】
- ジークフリート・クラカウアー Siegfried Kracauer(1889 – 1966)【独】
- マックス・シェーラー Max Scheler(1874 – 1928)【独】
- ジョルジュ・ギュルヴィッチ Georges Gurvitch(1894 – 1965)【仏】
- アルフレッド・シュッツ/アルフレート・シュッツ Alfred Schütz(1899 – 1959)【独】
シンボル的相互行為主義
シンボル的相互行為主義(symbolic interactionism)はアメリカ生まれで、プラグマティズムの哲学者・心理学者ミードを学祖と仰ぐ心理学的社会学/社会心理学である。プラグマティズムは経験論哲学の一形態であるため、シンボル的相互行為主義は、極めて実証主義(positivism)であり、社会調査によるテータ解析を非常に重視する。
- ハーバート・ジョージ・ブルーマー Herbert George Blumer(1900 – 1987)
社会的交換理論/合理的選択理論
文化人類学(社会人類学)の分野で、マリノフスキーの「クラ」交換の研究、モースの「ポトラッチ」の研究、レヴィ=ストロースの親族理論からの啓発を受けて、社会的交換理論の議論が深まった。
新古典派経済学の功利主義的合理主義に基づく行為理論として「合理的適選択理論」(rational choice theory)が社会学理論に入ってくることになり、これが社会的交換理論と社会学の中で結びつけらて行くようになった。
- ジョージ・キャスパー・ホーマンズ George Casper Homans(1910 – 1989)
- ピーター・マイケル・ブラウ Peter Michael Blau(1918 – 2002)
社会学の構造 The Structure of Sociology
理論 | 経験 | 歴史 | 政策 | ||||
総論 | 社会学原理 | 経験社会学 | 社会史 社会学史 (学説史) 第一世代 第二世代 (マクロ社会学) (ミクロ社会学) | 社会問題 社会政策 | |||
社会調査 統計的調査 計量社会学 | |||||||
ミクロ社会学 | 行為者の内部分析 | 自我理論 社会意識論 | ミクロ社会 調査・解析 | ミクロ 社会史 | ミクロ 社会政策 | ||
社会システム内の相互行為 と社会関係分析 | 相互行為論 役割理論 社会関係論 社会的交換論 | ||||||
マクロ社会学 | 社会システム 構造論 | マクロ社会 調査・解析 | マクロ 社会史 | マクロ 社会政策 | |||
社会システム 変動論 | |||||||
領域社会学 | 内包的領域 社会学 | 基礎集団 | 家族 | 家族社会学 | 家族調査 | 家族史 | 家族政策 |
機能集団 | 企業 | 組織社会学 産業社会学 | 組織調査・ モラール調査 | 組織史 労働史 | 経営社会政策 労働政策 | ||
全体社会 ×社会集団 | 国家 | 国家社会学 | 国勢調査 | 国家史 | 福祉国家政策 | ||
地域社会 | 農村 | 農村社会学 | 農村調査 | 農村史 | 農村政策 | ||
都市 | 都市社会学 | 都市調査 | 都市史 | 都市政策 | |||
準社会 | 社会階層 | 社会階層理論 | 社会階層調査 | 社会階層史 | 不平等問題 | ||
外延的領域 社会学 | 経済 | 経済社会学 | 経済行動・ 市場調査 | (経済史) | (経済政策) | ||
政治 | 政治社会学 | 投票行動・ 政治意識調査 | (政治史) | (政治政策) | |||
法 | 法社会学 | 法行為・ 法意識調査 | (法制史) | (法政策) | |||
宗教 | 宗教社会学 | 宗教行為・ 宗教意識調査 | (宗教史) | (宗教政策) | |||
教育 | 教育社会学 | 教育行為・ 教育意識調査 | (教育史) | (教育政策) |
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