古代哲学 Ancient philosophy
ギリシア初期哲学
イオニア派
紀元前6世紀から紀元前5世紀にかけて、イオニア地方を中心に活動したギリシア哲学における自然哲学者
知覚的な情報を元に、自然・万物の根源である「アルケー」を様々に考察した自然哲学の嚆矢
アリストテレスは彼らのことをピュシオロゴイ(physiologoi, 「自然について語る者」という意味)と呼んだ
ミレトス派
イオニア人の都市国家ミレトスの自然哲学者
その他のイオニア派
イタリア学派
イタリア半島南部(マグナ・グラエキア)を拠点としたギリシア哲学一派の総称
主としてピュタゴラス学派やエレア派の総称として用いることが多い
イオニア学派が専ら感覚に依拠する「自然哲学」を論じたのに対して、イタリア学派は専ら数学や論理に依拠する「数理哲学」「論理哲学」を論じた
ピュタゴラス派 ピュタゴラス教団
数学の研究を重んじた派と、宗教儀礼を重んじた派のふたつがあった
エレア派
初期ギリシアの神話への批判的精神と自由思想から形而上学をさせた
その他のイタリア派
原子論
自然はそれ以上分割できない最小単位としての原子(アトム)から成り立つとする理論・仮説。原子の存在やその運動の説明のため、「ケノン(空なるもの・空虚)」が存在すると考えた。生成消滅しない無数の原子と無辺の空虚が真に存在し、空虚における原子の結合分離の運動がさまざまな感覚的対象の存在やその生成変化などを生じさせるとした。
ソフィストおよびソクラテス派
ソフィスト
ソフィストは教師の一種で、主に政治家や貴族の子供にアレーテ(卓越性、つまり美徳)を教えるための道具としての哲学や修辞を専門とした
ソクラテス派 アテナイ学派
西洋道徳哲学(倫理学)の祖
無知の知(不知の自覚)、問答法、弁証法、アレテー(徳/卓越性/有能性/優秀性)
小ソクラテス派
ソクラテスの弟子たちが設立
エリス派/エレトリア派
心の中と、真理が識別したものによる心の鋭さの中に、すべての善を位置づけた。真理は否定命題で推論できず、肯定命題や単純命題によってのみできるとした
キニク派 キュニコス(犬儒)学派
人生の目標は幸福感(ユーダイモニア)と精神的明晰さ(ἁτυφια)であり、誤った信念・不用心さ・愚かさ・うぬぼれを意味する文字通り「まやかし(τύφος)からの解放」である
自然に即した生を実践する
禁欲主義、修辞学
キュレネ派
徹底的な現象主義と刹那的快楽主義
メガラ派
論争術、問答法、論理学(ストア派の命題論理学の源流)、論理的な正しさを追求
アカデメイア派 初期プラトン学派
プラトンが学園を開設した場所が「アカデメイア」
イデア論:超越的で完璧な原型が存在して、それに対応する日常的な個々のものは原型の不完全な模造にすぎない
古アカデメイア派 古アカデミー派
真理の表現として現れた学説の陳述や注釈に専心
中期アカデメイア派 中アカデミー派
アカデメイア派懐疑主義
新アカデメイア派 新アカデミー派
真理性そのものに関心をもち、おおむね批判的・懐疑的傾向をもつようになった
末期アカデメイア派
続アテナイ学派 ヘレニズム哲学
前4紀末から前1世紀までのヘレニズム時代のギリシア哲学。また、これを継いだ6世紀までのローマ哲学を含む場合もある
ペリパトス派 逍遥学派
物の究極的基盤を理解するために実験が必要
人生の目的は有徳な行動からくる幸福
有徳な行動は超過と不足の間にある中庸を保つことからなる
懐疑学派 懐疑主義
独断や断定を退け、あらゆる事柄についての積極的な判断・主張を控える立場
心の乱れの原因となる判断を停止すること(エポケー)で得られる心の平静(アタラクシア)を得ることができる
古懐疑派 ピュロン主義
新懐疑派
ストア派 ストア哲学
知者(道徳的・知的に完全な人)は、判断の誤りから生まれる破壊的な衝動などに苛まされることはない
世界の統一的な説明を形式論理学、非二元論的自然学、自然主義的倫理学によって構築
前期ストア派
中期ストア派
後期ストア派
エピクロス派
真の快とは、精神的なものであって徳と不可分であり、節制に基づく、心の平安である
「パンと水さえあればゼウスと幸福で勝つこともできる」
折衷学派 折衷主義
一つの教義だけを採用するのではなく既存の哲学的信念のうちからその教義が最も合理的だと思えるものを選んでくるような哲学体系
新ピュタゴラス派 新ピタゴラス主義
ギリシア哲学に宗教的要素をもたらそうと試みた
魂を浄化するため禁欲生活を送ることで神を崇拝し、身体的快楽やあらゆる感覚的刺激を無視した
中期プラトン学派 中期プラトン主義 中期プラトニズム
プラトニズムにストア主義や逍遥学派の教義を導入
古代ユダヤ哲学 ヘレニズム・ユダヤ教
ギリシア哲学の知識をユダヤ教思想の解釈に適用
ヘレニズム・キリスト教 アレクサンドリア学派
アレクサンドリアを中心とするキリスト教神学の一派。3~5世紀に栄えた。
新プラトン学派 新プラトン主義 ネオプラトニズム
万物は一者から流出したもの(流出説)
存在の極致は万物の根源である一者つまり善
美徳と瞑想によって魂は力を得て自らを上昇させ一者との合一に至る
中世哲学 Medieval philosophy
教父哲学 護教家
2 – 8世紀のローマ帝国で、ギリシア哲学を援用してキリスト教の真理を明らかにしようとした哲学。キリスト教公認以前は異教に対する護教論となっていた。
教父とは教理の正統と生活の聖性を守り教会から引証された古代の神学者。正統信仰の著述を行い、自らも聖なる生涯を送ったと歴史の中で認められてきた人々のこと。
教会博士 Doctor Ecclesiae
キリスト教ローマ・カトリック教会において、聖人の中でも特に学識にすぐれ、信仰理解において偉大な業績を残した人に送られる称号。
西方教会:西方の四大教会博士
東方教会:東方の四大教会博士
使徒教父 Apostolic Fathers
1世紀末から2世紀前半にかけての、新約聖書に収められた文書以外の、主要文書の執筆者の総称。十二使徒の何人かを個人的に知っていたか、彼らから大きな影響を受けた。
ギリシア教父
ギリシア語で著述した東方の教父。思弁的であり、キリスト教を一つの究極の哲学的真理を告げるものとして解明しようとする努力に特徴があった。豊かなギリシア哲学の知識によってキリスト論、三位一体論の発展に寄与した。
ラテン教父
2世紀から8世紀ごろまでのキリスト教著述家で、ラテン語で著述を行った神学者。
スコラ哲学
西方教会のキリスト教神学者・哲学者などの学者たちによって確立された「学問のスタイル」であるスコラ学の方法論にのっとった学問、例えば哲学・神学を特にスコラ哲学・スコラ神学と呼ぶ。
スコラ学の究極の目的は問題に対する解答を導き出し、矛盾を解決することにある。
スコラ学の最大のテーマは信仰と理性。
初期スコラ学期(1000年-1200年)
盛期スコラ学期(1200年-1300年)
後期スコラ学期(1300年-1500年)
近代スコラ学期(1500年以降)
ドイツ神秘主義
我性を捨てる放下とそれによる神との合一や、精神(魂)の観照を中心的概念とする観想と神秘体験に特徴をもつ宗教思想。
トマス主義 トミズム
教父思想、アリストテレス、新プラトン哲学、イスラム、ユダヤ思想から「トマス的総合」とよばれる独創的な思想体系を確立。真実はどこで発見されても受け入れられるべきであるという原則。形而上学とキリスト教体系を融合させる。
イスラム中世哲学
イスラム文化圏を中心に発達した哲学で、アラビア哲学とも。イスラム神学(カラーム)としばしば対立しつつ、アリストテレス・新プラトン主義といった古代ギリシア哲学がアラビア語への翻訳を通じて移入された。後に、これがヨーロッパに逆輸入され、ルネサンス哲学の起りにつながる。
東方イスラーム哲学
アラビア半島のみならず、ペルシアや中央アジア一帯にまで及ぶ。東方イスラームの哲学者たちは、多くのペルシアや中央アジア出身など非アラブ圏の人物が多かった。
西方イスラーム哲学
アッバース朝が衰退・滅亡した後の12世紀-13世紀に、ムワッヒド朝下でイベリア半島を中心として盛んになる。その後のイスラム思想の展開では影響を与えず、むしろその成果は中世ヨーロッパの思想の発展に影響を与えた。
ユダヤ中世哲学
ルネサンス哲学
イタリアで、古代ギリシア、古代ローマの文芸が復興したことをきっかけに、神中心の中世的世界観から人間中心の新たな世界が生まれ人文主義者と呼ばれる人物が活躍した。一般に、世俗主義的で個人主義的で合理主義的な傾向をもつ。
人文主義者
ルネサンス期において、ギリシア・ローマの古典文芸や聖書原典の研究を元に、神や人間の本質を考察した。「ユマニスト」(仏: humaniste)
神秘主義者
自然哲学者
懐疑思想家
近代哲学 Modern philosophy
ルネサンス哲学:神中心の世界観から「人間の理性」によって機械的な自然を認識し、永遠・普遍妥当な真理に到達できるという世界観へ➡大陸合理論とイギリス経験論➡理性の時代の哲学(17世紀前半)➡啓蒙時代の哲学(17世紀後半~18世紀):理性(悟性)による知によって世界を把握しようとする思想運動➡19世紀の哲学:ドイツ観念論、生の哲学、マルクス主義、精神分析学、新カント派、ヘーゲル学派、功利主義、プラグマティズム➡20世紀の哲学:現代思想・現代哲学、英米圏の分析哲学とドイツ・フランス圏の大陸哲学
イギリス哲学
イギリス哲学の特徴
イギリス哲学の特徴は、抽象的、思弁的であるよりも具体的、実証的である。純理論的というよりは実践的意識に支えられていることが多い。常識、複雑さに嫌悪し、抽象的なものより具体的なものへの強い関心を示す。形而上(けいじじょう)学的であるよりも認識論的であり、認識論としても理性論よりは経験論に重きをなす。実践哲学では道徳と法律、政治との相関性が密であり、目的論、功利主義の性格が強い。
17世紀
イギリス経験論 経験主義
人間の全ての知識は我々の経験に由来する、とする哲学上または心理学上の立場。感覚的経験を認識成立の唯一の契機と考えることで、認識の形而上学的客観性を否定し、超越的・形而上学的な神学イデオロギーに代わる新しい市民社会の倫理形成に寄与した。
ケンブリッジ・プラトン学派
プラトンやプロティノスの文献を重要視し、中世的な古い神学を批判、理性と信仰の調和、道徳と宗教の問題、信仰の自由の問題を主な題目とする。
18世紀
イギリス経験論 経験主義
スコットランド学派 スコットランド常識学派 コモン・センス学派
ヒュームの主張した印象と観念を媒介とした認識論に対抗し、正当な知識の根拠を我々の「常識(コモン・センス)」に訴えるという思想。実在や因果律などの知識の確実性は、人々の「常識の原理」により保証されると主張した。18世紀中盤以降のスコットランド啓蒙思想の本流とでも呼ぶべき学派であり、「道徳哲学」としての古典派経済学の形成を育んだ。
道徳哲学者 道徳感覚学派
善悪判断に関して、「感覚」(sense、道徳感覚, moral sense)や「感情」(sentiment、道徳感情, moral sentiment)の働きを重視した、18世紀イギリスの倫理学(道徳哲学)。
19世紀
功利主義
行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる効用(功利、有用性、英: utility)によって決定される。行為の目的、行為の義務、正邪の基準を、社会の成員の「最大多数の最大幸福」に求める倫理、法、政治上の立場でもある。
イギリスヘーゲル学派
イギリスにおける新ヘーゲル主義の運動。
イギリス理想主義
イギリス観念論。イギリス伝統の経験論や功利主義に反対し、認識論では観念論、価値論では人格主義、教養主義を唱えた。
20世紀
プロセス哲学
「現実の本質とは何か」という問について、時間の現れの〈プロセス〉即ち変化や発達に答を見出す。「有機体論の哲学」とも呼ばれる。
分析哲学
超越的な思弁によるのではなく、経験主義的意味論の立場からの言語の論理的・社会的分析によるアプローチを図る哲学。
ケンブリッジ分析学派
20世紀初頭のケンブリッジ大学を中心に、19世紀後半からの主流であるイギリス・ヘーゲル学派を批判し、実在論、経験論を主張して、イギリス思想をその本来の伝統にふさわしい伝統に返した論理実証主義運動。科学と常識を尊重するイギリス哲学の伝統を受継いでおり、新実在論的分析学派とも呼ばれる。
日常言語学派 オックスフォード学派
伝統的な哲学的問題を、言葉が日常的な用法で実際に何を意味していたのかが哲学者たちによって歪められ、あるいは忘れられることにより、増大した勘違いに由来するものだとする言語哲学の学派。
現代
宗教哲学
宗教の存在意義や本質を究明する哲学
形而上学、心の哲学、論理学、言語哲学など
アメリカ哲学
17世紀
十分な教育を受けたピューリタンがニューイングランドに到着したことから始まる。初期のアメリカの哲学は、宗教的伝統 (ピューリタンプロビデンシズム)に基礎がある。個人とコミュニティの関係にも重点を置き、宗教的寛容を旨とし、コミュニティで宗教的均質性が不可欠と主張した。
18世紀
第一次大覚醒
ニューイングランドを中心に北東部で起こった宗教再生運動(宗教復興運動、First Great Awakening)。啓蒙主義の自然哲学の影響を受けた改革派ピューリタン・カルヴァン主義の神学に端を発する。
道徳哲学/倫理学
土着のアメリカ啓蒙主義から発展。
スコットランド常識学派
長老派系の大学(例:プリンストン大学)の教養科目として幅広く利用された。
19世紀
超越主義/超絶主義
19世紀アメリカ・ロマン主義思想。客観的な経験論よりも、主観的な直観を強調する。暗い正統的ピューリタニズムや、理性的で冷たいユニタリアニズム(ユニタリアン教)に反抗し、人間の内面の神聖さ、神・自然との交流、個人の無限の可能性など、人間の明るい側面を主張し、日常的経験を「超絶」した直感による真理の把握を訴えた。
プラグマティズム 実用主義 道具主義 実際主義
認識の形而上学的な基礎づけを排し、その妥当性を行為の効果に求める。真理と価値の追求とを社会的協働の中に求める。
前期 形而上学クラブ
西欧の伝統的な抽象的・観念論な哲学(形而上学)を離れ、新たな思想を作り出そうとした。ダーウィンの進化論とキリスト教との対立の折衷に苦心する中で、実生活の行動と結びついた思想を模索していく。
後期 シカゴ学派
進化論の影響、科学主義、相対論物理学の影響という特徴があり、行為者を彼の周囲の環境から影響を受けている社会的な存在としてみる。
20世紀
ネオプラグマティズム
言葉の意味とは、言葉がいかに使用されるかを定める機能のことであり、人々が言葉によって記述しようと意図するものを表すわけではない、と主張
ニューリアリズム/新実在論
、ジョン・ロックの認識論的二元論と古い形態の実在論の拒絶。
プロセス哲学/プロセス神学
「現実の本質とは何か」という問について、時間の現れの〈プロセス〉即ち変化や発達に答を見出す。「有機体論の哲学」とも呼ばれる。アメリカで発生した「プロセス哲学」と結びつける形で、世俗神学に対抗するものとしての神学を再建するプロセス神学が起った。
アリストテレス哲学
分析哲学
超越的な思弁によるのではなく、経験主義的意味論の立場からの言語の論理的・社会的分析によるアプローチを図る哲学。
アメリカ記号論(セミオティクス)
共同体主義
共同体(コミュニティ)の価値を重んじる政治思想。
現代
心の哲学
心的出来事、心の働き、心の性質、意識、およびそれらと物理的なものとの関係を研究する。
理想主義
身体化された認知
政治哲学/法学
プラグマティズム
分析哲学
ドイツ哲学
啓蒙期の哲学 ライプニッツ・ヴォルフ派
敬虔主義
17世紀後半から18世紀前半のドイツで興ったドイツプロテスタント教会(ルター教会)の正統主義信仰の教義化および形式化に反対して起ったプロテスタント信仰復興運動。宗教体験、実践の強調と自由な信徒集会(コレギア・ピエタティス)の形成が特徴。
カント哲学
『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の三批判書を発表し、批判哲学を提唱。
ドイツ観念論
カント哲学に存する感性界と超感性界、自然界と精神界の二元論的な立場を超えて、これを絶対者の概念を媒介として統一しようとした。
ヘーゲル学派
観念論哲学、弁証法的論理学、止揚(しよう:Aufheben, アウフヘーベン)。アカデミーに参加することのできなかったヘーゲルが、シュライエルマハーに対抗するために設立した集団。
ヘーゲル学派(第一世代)
厳密な分類ではなく、特に中央派と右派に関しては流動的。学派の分裂を促したダーフィト・シュトラウスのほか、20世紀の哲学者カール・レーヴィットなども分類を試みている。
老ヘーゲル派・旧ヘーゲル派(右派)
政治的・宗教的に保守的な立場で、ヘーゲル哲学を墨守。ヘーゲルの主張する哲学と宗教の同一性を受容し、哲学と宗教の関係は、おなじ内容を哲学は概念、宗教は表象によって把握するものであるとした。
ヘーゲル中央派(中央派)
哲学と宗教とは異なる「内容」を異なる「形式」で捉え、福音書の歴史の全否定はせず、一部は受け入れるという中間の見解を示す。
青年ヘーゲル派(左派)
ヘーゲルの哲学に対し、政治・宗教的に急進的な考え方を持つ。福音書の中の全歴史を史実して全く受け入れるべきではないとした。
ヘーゲル学派 (第二世代)
ヘーゲル学派が解体した後の19世紀後半にヘーゲルの研究に従事していた。観念論哲学研究を受け継ぎ、新ヘーゲル主義とを結ぶ大事な架け橋を担った。当時隆盛していた歴史主義的な見方との結びつきも見られた。
新ヘーゲル主義(第三世代)
19世紀末から20世紀前半において、ドイツ観念論の哲学者ヘーゲルの哲学を見直し、ヘーゲルの学説とその精神に近づこうとした一群の欧米の哲学者。新カント派に属されるべき人物もいるし、哲学他の分野にも業績のある人物や歴史学・政治学にも業績がある人物もいる。
ヘーゲル学派 (第四世代)
戦後から現代まで引き継がれている。
弁証法的唯物論 唯物弁証法
唯物弁証法とは、弁証法的に運動する物質が精神の根源であるという考え方。弁証法的唯物論を歴史・社会へ適用したものが史的唯物論であるとみなされるか、もしくは、広義の自然弁証法と弁証法的唯物論が同一のものとされて、史的唯物論が適用されたものになる。
科学的唯物論
唯物論の変種で、ドイツの理想主義の哲学体系設計と、社会的に支配的なキリスト教の理想主義に対する過激で大衆的な反対運動を形成した世界観。19世紀の急速な科学的および技術的発展の成功と、チャールズ・ダーウィンの進化論を結び付けた。
講壇社会主義 Kathedersozialismus
ドイツの歴史学派経済学者たちが社会改良政策によって社会問題の解決を図ることを主張し、マルクス主義を否定し、資本主義と国家を革命的に打倒することなく、改革を通じてプロイセンのドイツに人民国家を建設できることを証明しようとした。大学の講壇に立つ者が唱える社会主義という皮肉を込めて講壇社会主義という蔑称が自由主義経済学者から命名された。ドイツ社会民主党の躍進に脅威を感じたビスマルクの支持を得てから急速に経済学界を支配したが、ワーグナーに代表される右派、ブレンターノに代表される左派、シュモラーに代表される中間派に分かれた。
マルクス主義
ヘーゲル弁証法とフォイエルバッハ唯物論を結合させるために「階級闘争」という新しい観念を構築、資本を社会の共有財産に変えることによって、労働者が資本を増殖するためだけに生きるという、賃労働の悲惨な性質を廃止し、階級のない協同社会を目指す。
修正主義(ベルンシュタイン主義)
プロレタリアートは非合法手段による国家権力の奪取ではなく議会制民主主義を通じた社会改良を目指すべきとする。
教条主義(カウツキー主義)
正統派マルクス主義とも呼ぶ。修正主義を批判。
左派修正主義(ソレル主義)
マルクス主義の原則のうち暴力革命と階級闘争を重視する一方でプロレタリア国際主義や唯物論を修正した独自の動きで、革命的サンジカリズムと結びついた。
レーニン主義
マルクス・レーニン主義とも呼び、帝国主義論・プロレタリア独裁・永続革命論など、ロシア革命を成功させたボリシェヴィキを導いたレーニンの思想を中心とする。
精神分析学
精神分析は、人間には無意識の過程が存在し、人の行動は無意識によって左右されるという基本的な仮説に基づくその病理の観察・解明方法であり、治療方法。無意識の概念はヘーゲルが前提とした近代的で理性的な個人という前提を根本から覆すことになる。無意識の概念や精神分析はやがて生の哲学やフランクフルト学派の批判理論と合流する。
新フロイト派
フロイトの性的衝動(リビドー)の考え方を批判してフロイトから離反し、第一次世界大戦前ごろからそれぞれ新しい個人心理学、分析的心理学を樹立。
唯物論者・実証主義
生の哲学 人生哲学
19世紀以後の生物学革命・進化論に呼応しつつ、生まれた哲学的潮流。特徴は、「生」「生命」を強調して、抽象的、観念的合理性に対して批判的な姿勢をとる。
新カント派
カント的な現象と物自体との厳密な区別を再評価し、例えば自然科学のようないわゆる「経験科学」によって物自体が認識できるという独断論を批判した。
マールブルク学派
自然科学をはじめとする人間の認識を対象とする認識批判。科学的認識の基礎づけを試み、空間・時間をも直観でなく思考のカテゴリーと見た。
バーデン学派 西南ドイツ学派
認識論と価値論を包括した価値哲学を構想。価値哲学による人文・社会科学の基礎づけという形で、超越論的視点からする人間の主観による対象のなんらかの意味での能動的構成に注目する。
歴史哲学
新マルクス主義
マルクス主義とマルクス主義理論を修正または拡張する20世紀のアプローチを含むマルクス主義の学派。
フランクフルト学派
マルクス主義を進化させ、これにヘーゲルの弁証法とフロイトの精神分析理論の融合を試みた、批判理論によって啓蒙主義を批判する社会理論や哲学を研究したグループ。道具的理性という概念を提唱。
第1世代
第2世代
第3世代
第4世代
大陸哲学
解釈学
様々なテクストを解釈する文献学的な技法の理論、あるいは「解釈する」「理解する」「読む」という事柄に関する体系的な理論。語る者と受け取る者の基本的な関係は精神ではなく、「言語」であり、その基本条件をなす規則を相互の完全な連関を含む形で抽出するのが解釈学の一般理論である。
現象学
事実として存在する対象とは区別された純粋意識の体験としての現象について、その本質構造を記述する。
哲学的人間学
実存主義
生きる道を自分で切り開く、今ここにあるひとりの人間の現実存在(=実存)としての自分のあり方を求める思想。
分析哲学
批判的合理主義
過剰な合理主義を批判し、反証可能性を基軸とする科学的方法を提唱。方法論的反証主義。
論理実証主義
科学哲学における新しい問題を解決するという共同の目的を持ち、経験論の手法を現代に適合させ、形而上学を否定し、経験主義―数学的構成物と論理・言語学的な構成物とを融合させた知識を伴う種類の合理主義には実験に基づいた証拠が必要だとする考えと、認識論の成果を結合させた。
ウィーン学団
論理実証主義を標榜し、哲学の専門家がほとんどおらず、物理学、数学、経済学などの個別科学の専門家によりなる各メンバーが自由にその意見を表明して、活発な討論を行うことを目ざしたグループ。
論理経験主義 ベルリン学派
フランス哲学
17世紀
合理主義哲学 大陸合理主義 大陸合理論
(イギリス)経験論と対比されて、感覚を介した経験に由来する認識に信をおかず、生得的・明証的な原理から導き出された理性的認識だけを真の認識とする立場。非理性的、経験的、偶然的なものを排し、理性的、論理的、必然的なものを尊重する立場。すべての確実な知識は生得的で明証的な原理に由来すると考える。
ジャンセニスム
人間の原罪の重大性と恩寵の必要性を過度に強調し、予定説からの強い影響を受けたキリスト教思想。ジャン・カルヴァン思想の影響を受けて、救われることが予定付けられている人間は本当に少ないと説いた。
機会原因論
精神にも物体にも独自の作用因を認めず、それを神だけに帰する説。事物はすべて、自力で他のものに働きかける真の原因であることはなく、心と身体の間も、神が一方の状態を機会として他方を変化させるという関係にすぎないと考える。心身間に直接の相互作用を否定し、唯一真なる原因である神が精神あるいは身体の一方を機会原因として他方に働きかけるとする(偶因論)。
18世紀
フランス啓蒙思想
従来の封建社会の中でのキリスト教的世界観に対して、合理的な世界観を説き、人間性の解放を目指した思想。あらゆる人間が共通の理性をもっていると措定し、世界に何らかの根本法則があり、それは理性によって認知可能であるとする。自然科学的方法を重視し、理性による認識がそのまま科学的研究と結びつくと考えられ、宗教と科学の分離を促した。
百科全書派
『百科全書、あるいは科学、技術と工芸の理論的辞書』の編集に携わり、合理主義や懐疑主義に基づく啓蒙思想の普及に努めた。
19世紀
フランス・スピリチュアリスム
物質に還元されない精神の「自発性」や「働き」を重んじる。
フランス実証主義
先験的ないし神学的・形而上学的な推論を一切排除し、経験的事実にのみ認識の根拠を認める学問上の立場。人類の発展における神学的段階と形而上学的段階の最後に来る実証主義的段階として唱えられた。
フランス反省哲学
常に精神をその作用およびその産出物において考察することを方法論とし、直観主義に異議を唱える。直観主義に与しない点でスピリチュアリスムとは区別される。
新トマス主義
トマス・アクィナスの神学・哲学を現代に復活させる思想ないし運動。カトリック信仰を前提とし、哲学を神学の下位におき、法と民主主義を遵守して生活することを旨とする。
20世紀
科学哲学
科学の基礎、方法、および意味に関係する哲学の一分野。科学としての資格、科学理論の信頼性、および科学の最終的な目的を主題にする。フランス歴史的認識論またはフランス科学認識論としても知られる。
現象学
事実として存在する対象とは区別された純粋意識の体験としての現象について、その本質構造を記述する。
実存主義
生きる道を自分で切り開く、今ここにあるひとりの人間の現実存在(=実存)としての自分のあり方を求める思想。人間の実存を哲学の中心におく思想的立場。質存在(essentia)に対する現実存在(existentia)の優位を説く思想。
構造主義
あらゆる現象に潜在する構造を抽出し、その構造によって現象を理解し、場合によっては制御する。歴史主義や文化相対主義に対立する思想的立場。歴史的・一回性的・機会的要因よりも共時的・普遍的・法則的要因を重視する学説やその方法を総称したもの。
ポスト・マルクス主義
記号学
記号プロセス (記号論) と意味形成の体系的な研究。意味形成とさまざまな種類の知識を研究する科学の一分野。
ポスト構造主義
1960年後半から1970年後半頃までにフランスで誕生した思想運動の総称。主体や意識を重んじる実存主義を批判して登場した構造主義の考え方を批判的に継承し、西洋の形而上学批判に及んだ一連の哲学・思想傾向。
スペイン・ポルトガル哲学
- オルテガ・イ・ガセット José Ortega y Gasset(1883 – 1955)
イタリア哲学
- ジャンバッティスタ・ヴィーコ Giambattista Vico(1668 – 1744)
- ベネデット・クローチェ Benedetto Croce(1866 – 1952)
- ジョヴァンニ・ジェンティーレ Giovanni Gentile(1875 – 1944)
ロシア哲学
- ニコライ・ガヴリーロヴィチ・チェルヌイシェフスキー Никола́й Гаври́лович Черныше́вский、Nikolai Gavrilovich Chernyshevskii(1828 – 1889)
- ウラジーミル・セルゲイェヴィチ・ソロヴィヨフ Владимир Сергеевич Соловьёв(1853 – 1900)
- レフ・シェストフ Lev Isaakovich Shestov,Лев Исаакович Шестов(1866 – 1938)
- ウラジーミル・イリイチ・レーニン Влади́мир Ильи́ч Ле́нин(1870 – 1924)
- ニコライ・アレクサンドロヴィチ・ベルジャーエフ Никола́й Алекса́ндрович Бердя́ев, Nikolai Alexandrovich Berdyaev(1874 – 1948)
- ニコライ・イヴァノヴィチ・ブハーリン Николай Иванович Бухарин, Nikolai Ivanovich Bukharin(1888 – 1938)
その他の西洋諸国の哲学
- セーレン・キェルケゴール Søren Aabye Kierkegaard(1813 – 1855)【丁】
- ルカーチ・ジェルジュ Lukács György(1885 – 1971)【洪】
ウプサラ学派
聖書の文献批判的研究方法に対して批判的立場を取り、宗教の本質は祭儀のドラマにあるとする。スカンジナビア学派ともいう。
アフリカ諸国の哲学
- フランツ・オマー・ファノン Frantz Omar Fanon(1925 – 1961)
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