[定点観測] 経営指標 企業ランキング2024.3.29 追加しました
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安全余裕度(Margin of Safety)の計算

安全余裕度(Margin of Safety)の計算 経営分析
安全余裕度(Margin of Safety)の計算
安全余裕度(Margin of Safety)の計算
安全余裕度(Margin of Safety)の計算
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計算手法

安全余裕度(Margin of Safety)は、評価対象とする実績売上や予算売上が損益分岐点売上からどれくらい上回っているか(下回っているか)を数値(度数)で表したものである。

売上高の場合は「売上額」、販売数量の場合は「数量」で表示されることになる。

仮に、損益分岐点売上高が 100万円として、現在の実際売上高が 120万円であるなら、安全余裕度は、

120万円 – 100万円 = 20万円

として計算される。

また、損益分岐点販売数量が 1000個として、現在の実際販売数量が 1300個ならば、安全余裕度は、

1300個 – 1000個 = 300個

となる。

次に、損益分岐点販売数量が 1000個として、現在の実際販売数量が 950個ならば、安全余裕度は、

950個 – 1000個 = -50個

とマイナス値をとる。

ここから、安全余裕度が示す数値の正負の符号とその度数の大きさから分かることは、

安全余裕度 ≦ 0

評価すべき売上高/販売数量が損益分岐点を下回っており、損益が赤字になっていることを示す。

マイナス値の大きさは、あとどれくらい売上高/販売数量を増やすと損益トントンになるか、追加で必要な販売努力の水準を意味している。

安全余裕度 > 0

評価すべき売上高/販売数量が損益分岐点を上回っており、損益が黒字になっていることを示す。

プラス値の大きさは、あとどれくらい売上高/販売数量が減ると損益トントンになるか、売上高/販売数量を減少させても赤字にならない余裕が残っている程度を意味している。

安全余裕度(金額) = 評価対象売上高 – 損益分岐点売上高

安全余裕度(数量) = 評価対象販売数量 – 損益分岐点販売数量

計算プロセス

安全余裕度の計算
  • 評価値の準備
    安全余裕度を評価したい実際売上や計画売上の数値を明らかにする

    ①実際売上高(金額)
    ②実際販売数量(数量)
    ③計画売上高(金額)
    ④計画販売数量(数量)

  • 損益分岐点の算定
    損益分岐点を明らかにする

    ・評価値が売上高の場合は損益分岐点売上高、販売数量の場合は損益分岐点販売数量を求める

  • 安全余裕度の計算
    評価値から損益分岐点の数値を引く

    ・売上高から損益分岐点売上高、販売数量から損益分岐点販売数量を差し引く

  • 安全余裕度の正負を確認
    安全余裕度の正負を確認し、評価対象数値の安全余裕度の大きさを確認する

    ①安全余裕度がプラス(正数):評価損益が黒字で、安全余裕度は損益トントンまで減少させることができる余裕の程度
    ②安全余裕度がマイナス(負数):評価損益が赤字で、安全余裕度は損益トントンとなるために追加するべき程度

シミュレーション

Excelテンプレート形式で安全余裕度の計算方法を示す。

入力欄の青字になっている「評価期間(年)」「営業収益(売上高)」「売上原価」「販管費」「営業利益」に任意の数字を入力すると、グラフを自由に操作することができる。

どんな入力をしても、元ファイルが壊れることはない。入力し直したい、元に戻したい場合は、画面を更新(F5押下など)すれば、初期値に戻る。

自分の手元でじっくり検証したい場合は、上記のダウンロードボタンから、Excelをダウンロードすることをお勧めする。

テンプレートの使い方

❶ 過去6期の売上高、変動費、固定費、利益から損益分岐点売上高をまず求める
❷ 評価対象の売上高(過去実績や予算・見込売上高など)を入力する
❸ 安全余裕度を計算・グラフ表示する

❶について、テンプレートでは、

  1. 4種の平均値から求めた売上高と変動費から変動費率を算出
  2. 4種の平均値から求めた変動費率を算出
  3. 上記1・2の算術平均で変動費率を算出
  4. 4種の平均値から固定費発生額を算出
  5. 上記2・4から損益分岐点売上高を算出
  6. 損益分岐点売上高と4の固定費発生額から重回帰分析で変動費率を算出
  7. 損益分岐点売上高から単回帰分析で変動費率を算出
  8. 上記6・7の算術平均で変動費率を算出
  9. 損益分岐点売上高と上記8の変動費率から固定費発生額を算出

という手順で、損益分岐点売上高を成立させる変動費率と発生固定費額を算出している。

グラフの見方

テンプレート中の「評価対象売上高」に安全余裕度を測定したい値を設定すれば、損益分岐点売上高と安全余裕度を含めたCVP分析表(売上線、変動費線、固定費線)が描画される。

当然、評価対象売上高が損益分岐点売上高を下回る場合でもグラフ表示は崩れないようになっている。

【参考】使用しているExcel関数
AVERAGE関数、CONCAT関数、FORECAST.LINEAR関数、GEOMEAN関数、HARMEAN関数、INTERCEPT関数、ROUND関数、SLOPE関数、SUM関数、SUMPRODUCT関数、TREND関数

セブン&アイホールディングスの数値の分析

CVP分析のフレームワークではできれば固定費に含めることにしたい正規雇用者の給与や製造設備の減価償却費は、製造業のP/Lにおいて、その大多数は売上原価に含められてしまう。

セブン&アイホールディングスをサンプルに採用することで、できるだけ「勘定科目法」の使用によって、変動費と看做したい売上原価に固定費が紛れ込まないように工夫してみた。

テンプレートで表示された数値を検証してみると、変動費率が50%後半と、法人企業統計における小売業(大企業)の平均80%前後を大きく下回っている。

これは、セブン銀行という金融子会社が連結決算対象に含められていること、セブンイレブン事業は直販だけでなくフランチャイザーの割合が過半であることが影響している。

そのうえで、評価売上高6兆円と仮定した場合、安全余裕度8,525億円と推計される。

つまり、5兆1,475億円まで売上高が減少しても営業赤字にはならない計算になる。

これに加えて、損益が苦しくなれば、固定費圧縮の各種施策が当然に打たれることになるため、おそらく、5兆円前後までは、営業赤字回避のための余裕があると推測される。

解説

損益分岐点売上高の推計方法について

一般的に、サンプル情報から損益分岐点売上高を求めるためには、サンプル情報から「変動費率」「固定費発生額」を算出する必要がある。

その作業はある売上高のときに計量されるコストを変動費と固定費に分ける作業、即ち「固変分解」を実施する必要がある。

従来は下記のような手法が「固変分解」の方法として教科書で紹介されてきた。

  • IE法(技術的予測法:Industrial engineering method)
  • 過去実績データに基づく予測法
    • 勘定科目法(費目別精査法)
    • 散布図表法(スキャッター・チャート法)
    • 高低点法
    • 回帰分析(最小二乗法/最小自乗法)

これらは、

恣意的ではあるが管理しやすい「勘定科目法」と、恣意性をできるだけ排除して、総コストを科学的(数学的)な裏付けのある計算技法で変動費と固定費に区分するその他の方法に大別できる。

一時は科学的・統計学的に最も信頼性が高いとされた「回帰分析(最小二乗法/最小自乗法)」が強く支持される時期が続いたが、実際に会計実務に適用してみると、ことごとく固定費がマイナス値になってしまい、回帰分析では固変分解はできないというのが定説になった。

上記で紹介したExcelテンプレートでは、「勘定科目法(費目別精査法)」を用いて、売上原価変動費販管費固定費と設定している。

しかし、「勘定科目法(費目別精査法)」を採用したとしても、複数の過去実績期間における数値からどうやって一意の変動費率と固定費発生額を特定するかが問題となる。

このExcelテンプレートでは、

❶ 「平均変動費率」「平均固定費発生額」から「損益分岐点売上高」を算出
❷ 上で求めた「損益分岐点売上高」「固定費発生額」に回帰分析をかけて「変動費率」を算出
❸「損益分岐点売上高」と回帰分析で求めた「変動費率」から最終の「固定費発生額」を改めて算出

という3ステップで、損益分岐点における「売上高」「変動費率」「固定費発生額」を求めている。

もちろん、ユーザの使いやすいように、❶のみ使用する、❶❷のみ使用する、❶❷❸の全てのを使用する、❷❸のみ使用する、という選択がとれるようにテンプレートでは、前段の処理結果を手入力で上書きする箇所をハッチングをかけて明示してある。

なぜ、最小二乗法による固定費がマイナス値になるのか?

ちなみに、テンプレートで使用したセブン&アイホールディングスの過去事例でも、最小二乗法による固変分解の結果、固定費がマイナスになっている。

これは、最小二乗法が統計学的に間違っているのではなく、そもそも、固変分解に最小二乗法を適用する前提条件が整っていないことが根本的な理由である。

固変分解に最小二乗法が適用できる最大にして唯一の前提条件が「固定費」が真実なる「固定費」であることが必須なのである。

毎期の売上高がいくら変動しようと、常に一定額の固定費しか発生していなければ、きれいに、その一定額の固定費が最小二乗法による解析で再現することができる。

会計実務では、各期における売上・損益目標の達成のために、毎期の固定費発生額の相当分を調整することは当たり前になっている。

これは、逆説的に、「固定費」がびた一文変わらず不変の値をとるという架空の前提条件が実際には起こりえないことの証左であることを示す。

つまり、複数年の期間をとると、固定費も調整が利く「変動費」(より厳密には「準固定費」)となるため、売上高が増加傾向になると固定費も膨らみがちになり、売上高が減少傾向になると、固定費の執行を停止・延期するように意識づけられることになる。

でないと、決算報告書において、「固定費の圧縮により何とか目標利益を達成しました」という説明文はどこにも存在しなくなってしまう。

安全余裕度・安全余裕率・損益分岐点比率の関係

安全余裕度・安全余裕率・損益分岐点比率の関係

CVP分析/損益分岐点分析 CVP分析/損益分岐点分析

1固変分解/貢献利益変動費、固定費、貢献利益、固変分解
2損益分岐点分析様々な損益モデルで損益分岐点を求める
3CVP分析金額・単価・数量を変数にした損益モデル
4CVP分析フレームワークを用いた意思決定利益最大化を達成するための条件選択方法

粗利、変動費、固定費の関係で儲ける会社づくりをストーリー仕立てで理解できる。

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