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営業CF純有利子負債比率(Operating Cash Flow Net Interest Bearing Debt Ratio)

営業CF純有利子負債比率(Operating Cash Flow Net Interest Bearing Debt Ratio) 経営分析
営業CF純有利子負債比率(Operating Cash Flow Net Interest Bearing Debt Ratio)
営業CF純有利子負債比率(Operating Cash Flow Net Interest Bearing Debt Ratio)
営業CF純有利子負債比率(Operating Cash Flow Net Interest Bearing Debt Ratio)
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計算式

営業CF対純有利子負債比率は、営業CFを有利子負債から手元流動性を差し引いた純額の有利子負債額で割り算して求める。有利子負債の残高に対して、その返済原資と想定される営業CFが何倍の規模だけ確保されているかを示す。有利子負債残高に対する営業CFの相対的大きさから、企業の返済能力を見る「健全性分析」指標のひとつである。

日本語では分子分母の読み順を変えて「純有利子負債営業CF比率」と呼んでもほぼ同じ意味となる。

この指標の単位は「%」または「倍」で、企業が返済義務を負っている有利子負債から手元流動性を差し引いた正味の要返済額が、足下の営業CFでどれだけ返済可能であるかを示す。この比率が高いほど、足下の返済能力の高さを意味するため、経営体質の安定性の目安となる。

であるから、この比率が大ききれば大きいほど、

❶返済能力が高い
❷現在の有利子負債の返済までの安全性が高い
❸有利子負債の積み増し余力がある

ことを示す。

\( \displaystyle \bf 営業CF対純有利子負債比率=\frac{営業CF}{有利子負債 – 手元流動性} \)


有利子負債 170
手元流動性 50
営業CF 40
\( \displaystyle \bf 営業CF対純有利子負債比率 = \frac{40}{170-50} = 33.3\% または 0.33倍 \)

C/F項目、ここでは営業CFが1年未満の期間だった場合は、年平均値に換算する必要がある。月次CFならば12倍、単四半期CFならば4倍する。

B/S項目、ここでは”有利子負債” には、平均残高(平残)を用いる。平均残高は、期首期末の平均値であり、(期首残高+期末残高)÷2 で求める。

仮に、CFが単四半期の場合、有利子負債も同じ単四半期の期首期末の値を用いて平均残高を計算する必要がある。年平均残高は用いない。

ちなみに、分子分母をひっくり返すと、有利子負債を営業CFだけを用いて完済するために必要な返済期間を表す指標「債務償還年数」の純額ベースとなる。

  • 有利子負債:金利をつけて返済しなければならない負債。借入金、社債、CBなど
  • 手元流動性:現金同等物+市場性のある有価証券
  • 純有利子負債 = 有利子負債 - 手元流動性

定義と意味

営業CF対純有利子負債比率は、手元流動性を差し引いた純有利子負債と営業CFの相対的大きさから、返済能力や財務安全性を評価するものである。

類似の営業CF対有利子負債比率との違いは、有利子負債額がネットされているがグロスのままかという点にある。

有利子負債を手元流動性とネットすることは、現在の有利子負債の返済に充てる金額の充当順序にまず手元にある現預金・有価証券の売却額を考えて、それでも要返済額として残る金額については、将来の営業CFで返済することを前提にすることと同義である。

同一金融機関において、借入金と預金の両建て(歩積み両建て)は日本の現行法規上は形式的に禁止されているが、財務会計上は、複数の金融機関との取引から成るB/Sに現預金と借入金が両建てになることは禁じられていない。

まずは手元にある換金可能な資産で負債を弁済し、残額を将来キャッシュフローで順次返済するという貸し手から見れば、手順を追った回収債権の安全度を最重視した返済方法に則った健全性指標であるといえる。

なお、資産と負債をネットする考え方を採る指標には、「有利子負債倍率」と「純有利子負債倍率」、「D/Eレシオ」と「ネットD/Eレシオ」、「売上高支払利息率」と「売上高純金利負担率」等、いくつか代表的なペアが存在する。

解釈と使用法

ベンチマークとしての使用法

営業CF対純有利子負債比率は、有利子負債の大きさと営業CFの相対的大きさの比較から、債務償還能力や財務安定性を評価するものであるから、ある閾値しきいちや業界平均値などを参考にベンチマークを定めて良し悪しを判断することが多い。

それゆえ、下記のようにベンチマークとの相対的位置から財務安定性を評価する。一般的に、経験則的にいわれているベンチマークとしての適正値は、細かく業界ごとの事情を勘案する前ならば、上場企業としての企業規模を前提にすると、一律「50%」程度ならば健全であると考えられている。

営業CF対純有利子債比率 > ベンチマーク ならば、

有利子負債の償還までの安全性が高く、有利子負債の積み増し余力がある

営業CF対純有利子負債比率 < ベンチマーク ならば、

有利子負債の償還までの安全性が低く、有利子負債の積み増し余力がない

業界平均値の分析

2021年度『法人企業統計』から、営業CF対純有利子負債比率の概算値を算出した。

これは歴史のある企業統計制度だが、残念ながら、非上場企業も含まれる統計でもあることから、キャッシュフロー関連情報は直接は考慮されておらず、超概算値となるが、計算式は下記の通りでランキングを作成した。

\( \displaystyle \bf 営業CF対有利子負債比率 = \frac{営業CF}{\left(\frac{当期末純有利子負債+前期末純有利子負債}{2}\right)} \)

  • 営業CF = 当期純利益+減価償却費総資産-(現預金除く当期末流動資産-現預金除く前期末流動資産-当期末流動負債+前期末流動負債)
  • 有利子負債 = 金融機関借入金(流動)+その他の借入金+社債+金融機関借入金(固定)+その他の借入金
  • 手元流動性 = 現金・預金 + 株式(流動) + 公社債(流動) + その他の有価証券(流動)
  • 純有利子負債 = 有利子負債 – 手元流動性

●業種別サマリ版ランキング

コード業種営業CF対純有利子
負債比率(%)
108製造業68.9
142情報通信業52.6
129卸売業・小売業(集約)32.5
104全産業(除く金融保険業)24.1
106鉱業、採石業、砂利採取業22.0
136ガス・熱供給・水道業21.0
144非製造業17.8
105農林水産業(集約)17.2
137サービス業(集約)14.6
157生活関連サービス業、娯楽業(集約)14.6
134運輸業、郵便業(集約)13.7
161学術研究、専門・技術サービス業(集約)11.1
155不動産業、物品賃貸業(集約)9.6
158純粋持株会社9.2
156宿泊業、飲食サービス業(集約)7.1
135電気業6.7
138広告業-16.0
107建設業-116.4

●業種別ランキング

営業CF対純有利子負債比率_横棒グラフ
営業CF対純有利子負債比率_横棒グラフ
コード業種営業CF対純有利子
負債比率(%)
123自動車・同附属品製造業4,841.0
146輸送用機械器具製造業(集約)327.6
153教育、学習支援業295.5
126その他の製造業282.1
120金属製品製造業141.0
114印刷・同関連業124.9
145情報通信機械器具製造業117.2
122電気機械器具製造業110.6
124業務用機械器具製造業80.7
121生産用機械器具製造業69.1
108製造業68.9
103漁業62.7
115化学工業54.4
142情報通信業52.6
117窯業・土石製品製造業47.7
127卸売業40.2
132水運業37.7
109食料品製造業33.5
113パルプ・紙・紙加工品製造業32.8
129卸売業・小売業(集約)32.5
119非鉄金属製造業31.1
125その他の輸送用機械器具製造業28.6
118鉄鋼業25.9
128小売業24.5
104全産業(除く金融保険業)24.1
152医療、福祉業23.1
112木材・木製品製造業22.4
106鉱業、採石業、砂利採取業22.0
136ガス・熱供給・水道業21.0
116石油製品・石炭製品製造業21.0
141娯楽業18.7
151その他の物品賃貸業18.5
144非製造業17.8
105農林水産業(集約)17.2
148飲食サービス業14.7
137サービス業(集約)14.6
157生活関連サービス業、娯楽業(集約)14.6
133その他の運輸業13.9
134運輸業、郵便業(集約)13.7
101農業、林業13.7
149物品賃貸業(集約)12.0
150リース業11.5
110繊維工業11.1
161学術研究、専門・技術サービス業(集約)11.1
155不動産業、物品賃貸業(集約)9.6
131陸運業9.6
158純粋持株会社9.2
130不動産業8.6
156宿泊業、飲食サービス業(集約)7.1
135電気業6.7
140生活関連サービス業6.3
139宿泊業-5.0
138広告業-16.0
159その他の学術研究、専門・技術サービス業-67.4
143その他のサービス業-77.5
160職業紹介・労働者派遣業-91.8
107建設業-116.4
154はん用機械器具製造業-304.6

新型コロナ禍の影響が強い「宿泊業」は未だ概算営業CF値がマイナスのため、正当に評価できていない。

なお、ランキング表にて「宿泊業」より下位に来ている業種は、概算営業CFがプラスだが、有利子負債-手元流動性の差引計算結果がマイナス値(つまり実質無借金経営)である。資本効率の点で投資収益性で疑問が多少残るかもしれないが、むしろ、返済能力・財務健全性としては良い方向に評価されるべきである。

本指標を「営業CF対有利子負債比率」と比較して、有利子負債をネット/グロス評価することで、ランキング順位が大きく変動し目立った違いがある業種として、「自動車・同附属品製造業」「卸売業・小売業(集約)」「広告業」「建設業」が挙げられる。

いずれも、手厚い手元流動性によって、実質の有利子負債の返済負担が相対的に低く、安全性が重視されていることが分かる。

シミュレーション

以下に、Excelテンプレートとして、FY16~FY21のトヨタ自動車の実績データをサンプルで表示している。

入力欄の青字になっている「期間」「営業CF」「現金及び現金同等物」「定期預金」「有価証券」「その他の金融資産」「短期有利子負債」「短期借入債務」「1年内返済長期借入債務」「長期有利子負債」「固定負債」に任意のデータを入力すると、表とグラフを自由に操作することができる。

どんな入力をしても、元ファイルが壊れることはない。入力し直したい、元に戻したい場合は、画面を更新(F5押下など)すれば、初期値に戻る。

自分の手元でじっくり検証したい場合は、上記のダウンロードボタンから、Excelをダウンロードすることをお勧めする。

トヨタ自動車は、米国会計基準(US-GAAP)から、国際財務報告基準(IFRS)へ基準変更したため、B/S科目が組替されているが、本稿で触れている指標に大きな影響はみられない。

基本的に、営業CF対純有利子負債比率は、割り算の商であるから、分子の営業CFが大きくなれば比率も比例的に大きくなり、分母の純有利子負債が大きくなれば比率は反比例的に小さくなる。

FY16から継続的に、CASE関連による投資拡大の波が押し寄せたことにより、右肩上がりで有利子負債が膨張していっている。

新型コロナ禍にあっても、その勢いは止まらなかった。よって、新型コロナ禍の影響で、営業収益が低迷した中にあり、営業CFが縮小した間は特に、営業CF対純有利子負債比率の悪化(下落)には厳しいものがあった。

有利子負債をネット/グロス評価する差異として、「営業CF対有利子負債比率」に比べて本指標は、純有利子負債の増加推移がより滑らかになっている。有利子負債と手元流動性が激変しないように、上手に収支がコントロールされているように見受けられる。

使用機能

SUM関数、スパークスライン、絶対参照

参考サイト

同じテーマについて解説が付され、参考になるサイトをいくつか紹介しておく。

[財務諸表分析]比率分析指標の体系と一覧[財務諸表分析]比率分析指標の体系と一覧

1財務諸表分析の理論経営分析との関係、EVAツリー
2成長性分析(Growth)売上高・利益・資産成長率、持続可能成長率
3流動性分析(Liquidity)短期の支払能力、キャッシュフロー分析
4健全性分析(Leverage)財務レバレッジの健全性、Solvency とも
5収益性分析(Profitability)ROS、ROA、ROE、DOE、ROIC、RIなど
6効率性分析(Activity)各種資産・負債の回転率(回転日数)、CCC
7生産性分析(Productivity)付加価値分析、付加価値の分配
8市場指標(Stock Market)株価関連分析、株主価値評価