原価計算基準 三一 個別原価計算 追加しました
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総合原価計算のための計算ツール

総合原価計算のための計算ツール マネジメント

総合原価計算のための計算ツール

総合原価計算は、平均法(WA: Weighted Average)、先入先出法(FIFO: First in First out)、後入先出法(LIFO: Last In, First Out)といった仮定計算によって行われる。もっとも、現時点で後入先出法は制度会計ルールでは廃止されているので実質2つになっている。

そのいずれの場合でも、期首仕掛品と期末仕掛品について完成品換算量を求め、当期受入(当期仕込)の完成品換算量を推計し、製品単価を求めるか、完成品と期末仕掛品の数量按分を行うかして、完成品総合原価と期末仕掛品原価を計算しなければならない。

完成品換算量の推計と、完成品原価と期末仕掛品原価の按分計算の2つについて、これをできるだけ簡単に、計算スピードをより迅速に、そして間違いを極力抑えてより正確にするために、偉大なる先人達の手でいろいろな計算技法・計算ツールが案出されてきた。

ここでは、大別すると3つ、派生形を入れても4つの計算ツール(計算手法)を整理する。なお、後入先出法は他2つに比べて構造がより複雑なこと、制度会計上は廃止になっていることから、原則として、平均法と先入先出法の2つを対象に計算ツールの実際の適用例を見ていくことにする。

各種計算ツール

総合原価計算の各種計算ツールとしてよく挙げられるのが、❶公式法、❷ボックス図法、❸ワークシート法 の3つである。このうち、ワークシート法については、平均法と先入先出法のそれぞれに固有のフォーマットを適用する、❸-1. 個別ワークシート法:平均法・先入先出法のそれぞれに個別フォーマットを適用する、❸-2. 共通ワークシート法: いずれにも共通のフォーマットを適用する、の2つに分けることもある。

ワークシート法については、発案者ごとに細かく仕様が創意工夫されているので、そのバリエーションを数え上げるときりがない。ここでは、個別に目的を持っている計算シートを使って総合原価計算を行おうとするものを、すべて含めてワークシート法と分類しておくことにする。

各計算ツールの大まかな説明・比較は以下の通り。

総合原価計算のための計算ツール計算ツール特徴メリットデメリット
総合原価計算を公式法で解く公式法公式に変数を投入すれば自動的に答えを求められる式と答えが1対1なので、途中で判断に迷う余地がない全ての公式を丸暗記する必要がある
計算フロー全体の理解には馴染まない
総合原価計算をボックス図法で解くボックス図法ボックス図(丁勘定)で可視化された図解法で解く視覚的・直感的に分かりやすい
計算スピードが速い
計算過程で、平均法や先入先出法などの違いを意識して細かい作業を変える必要がある
総合原価計算を個別ワークシート法で解く個別ワークシート法平均法や先入先出法に特化した総合原価計算表を用いて計算する手順がフォーマットに記載済みなので処理に迷う余地が少ない平均法や先入先出法などの別にフォーマットを使い分けるのが面倒
総合原価計算を共通ワークシート法で解く共通ワークシート法定型の総合原価計算表を用いて計算する平均法や先入先出法などの別にフォーマットを使い分ける必要がないフォーマットの方が共通なので、処理手順の方を柔軟に変える必要があり、正しい処理選択を適用する際に混乱することがある

公式法は、プログラムを書いてコンピュータ処理で即時回答を求めるときに便利である。ボックス図法は、資格試験など、限られた時間内に手計算で問題を解くという環境下で使い勝手がある。ワークシート法は、従来の手書き文化の中で熟成されてきた解法なので、処理の流れが整い、帳票としての見た目も洗練されている。

個別ワークシート法と共通ワークシート法の違い

ワークシート法は、「総合原価計算表」を用いて計算する方法である。長らく、手書きの計算表を利用して計算する方法が実践されてきたが、近年のITの進化により、手ずから(一から)この総合原価表を作表する機会は断然減っている。

しかしながら、如何にITが進化したとしても、画面を通じたマン・マシンインターフェースによる確認作業や調整作業まで撲滅することもできない。そのため、ITシステム開発現場においても、未だに 画面設計 のシーンでこの種の知識は有用であり続けている。

共通ワークシート法の特徴は、常に項目の並びが、期首仕掛品⇒当期受入(当期製造費用)⇒完成品⇒期末仕掛品 という一定の規則で配列される点にある。

項目の並びが一定だから、平均法や先入先出法といった計算仮定が異なると、計算手順が上下または左右を行ったり来たりする。地番が決まっているので、次の目的地がどこか分かっていれば道には迷わない。

一方で、個別ワークシート法は、平均法や先入先出法といった計算仮定に沿った項目順に並び替えられているため、計算手順が上から下、左から右と原則的な動きをする。道順が決まっているので、次の行き先が自ずと明らかになるので道に迷わない。

「総合原価計算表」自体、いろんなバリエーションがあるので一概に言えないが、基本的なレイアウトは下記のようなイメージとなろう。

●個別ワークシート

<平均法>

項目直材費加工費
期首仕掛20
当期製造40
合計60
期末仕掛30
完成30

<先入先出法>

項目直材費加工費
当期製造40
期末仕掛30
差額10
期首仕掛20
完成30

●共通ワークシート

<平均法・先入先出法の共通>

項目平均法先入先出法
直材費加工費直材費加工費
期首仕掛2020
当期製造4040
借方合計6060
完成3030
期末仕掛3030
貸方合計6060

この簡略表の見方について。
個別ワークシートも共通ワークシートも、直接材料費と加工費は左右に並べる方式を採用している。
直材費欄の「20,40,60」という数字はその項目値で、加工費欄の「❶❷❸」という数字は計算順序を表している。

この特徴は一長一短だ。しかも、ユーザによってその評価は180° 正反対なものになるかもしれない。

共通ワークシート法は、ひとつの汎用的なワークシートを使いまわすので、フォーマットを記憶するのは簡単だが、平均法や先入先出法等の実際に選択した計算手順をフォーマット上で実演するのは計算担当者の責任になる。

個別ワークシート法は、それぞれの計算仮定に最適なフォーマットを限定使用するので、それぞれのフォーマットの使い方を習得するのが面倒だが、実際に計算する際には楽ができる。

実務で原価計算を担当する人にとってすれば、平均法や先入先出法といった計算仮定を頻繁には変更しないから、個別ワークシートの方が重宝するかもしれない。

原価管理 Cost Management 体系

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