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小売業(Retail)

小売業(Retail)ビジネスモデル

定義

小売は、生産者や卸売業者から購入した商品を最終消費者に販売する。

retail(リテール):再び(Re)+切る(tail)→端から切り分けて販売する。「切り売り」という意味を端的に表している。

産業革命以降、製造業(工場)が大量生産によるコストダウンを実現し、廉価で品質の安定した消費者向けの商品を生産しはじめたのに対応し、消費者に商品を最終的に提供するサプライチェーンの最終段階を担う。

商品の販売にあたって、消費者が自分の嗜好にあった商品を選ぶことができるように、品揃えや接客サービスを含めて、商品選択のための情報提供を行うところ付加価値があり、同時にその点が競合他社に対する差別化要因となる。

概要

ビジネスモデル構造

ターゲット顧客セグメント 一般消費者、マス市場
顧客との関係 一見客も歓迎
チャネル お店
バリュー価値提案 一物一価で顧客付加価値の可視化
ケイパビリティリソース 商品知識が豊富な販売員
主要活動 マーチャンダイズ、接客
パートナー 大量仕入・大量販売を実現する安定的な取引先
収益モデルコスト構造 売上債権の回収コストと貸倒率を低下
収益の流れ 定価による現金売り、薄利多売

ビジネスモデルレベル

取引レベル 一見客、マス市場にいる消費者との多頻度の取引
機能レベル 店頭を中心とした商品補充・在庫管理の徹底
事業レベル  
組織レベル  
経営レベル  

ケーススタディ

三井呉服屋 – 三井高利 世界で初めての”小売業”の誕生

「小売業」が地球上に初めて登場したのは、意外にも、江戸時代の日本といわれている。

三井高利(1622~1694)が、三重松坂より江戸に進出する際、居並ぶ老舗呉服店に後発ながら対抗するために、思い切った「現金掛け値なし」という販売手法を打ち出した。それが今日では当たり前になった「小売」という販売スタイルだった。

  1. 現金売り
  2. 値引きなしの定価販売(正札販売)
  3. 店先売り
  4. 切り売り
  5. 仕立て売り

それまで、呉服店の商いは、①見世物商い、②屋敷売り という手法が一般的であった。

「見世物商い」というのは、前もって得意先の注文を聞いたうえで、後から品物を持参する方法で反物を販売するか、直接反物を得意先に持参して顧客に自宅で選んでもらう「屋敷売り」が一般的であった。これを「店先たなさき売り」ということで、今でいうお店の陳列棚に商品を並べて売ることを始めたのだ。

従来の武家・公家や大店の商人を相手にした富裕層向けの商売は、支払いが、盆・暮の二節季にせっき払い、または12月のみの極月払いの掛売りが一般的であった。

こうした慣習は、

  • 貸倒れや掛売りの金利など、資金効率が悪い(→多額の運転資金を必要とする)
  • 資金効率が悪いから、商品の販売価格を上げざるを得ない
  • 高い値付けを維持するために、一物多価での相対で顧客ごとに販売価格が違っていた
  • 同じく、高い値付けを維持するために、値段交渉アリの掛け値で販売されていた
  • よって一見客よりお得意様中心の商いになり、新規顧客開拓が進まなかった

という回転販売の効率がとても悪いままになっていた。

高利は、この悪循環を断ち切るために、「店先売り」「切り売り」「仕立て売り」と、顧客が反物を手に入れやすい形態を複数パターン用意し、顧客要望の多様化に対応して需要を取り込もうとした。

この売り方の革命が功を奏し、顧客が増えて商品回転率が上がってくると、少ない運転資金でますます多くの反物を小分けにして販売して量を捌くことで、増収増益の好循環を生み出すことに成功した。

反物にはさみを入れて切り売りするや、イージーオーダーを受けて仕立て売りするなどは、それまでの業界の常識をぶち壊すやり方で、同業他社からの嫌がらせが高じ、呉服町から駿河町へも背を移転せざるを得ないほどに当時の呉服業界には衝撃が走った。

高利は、平安の世が続き、江戸の豊かな中間層(庶民層)や、傾奇者や女性といった顧客の潜在的需要の高まりに目を付けたわけである。”ビジネスは顧客の創造である”と、ドラッガーが指摘することを高利は果敢に実践した。

高利が見極めた、呉服業を富裕層ビジネスから一般大衆向けの薄利多売型ビジネスへ転換させたことは、いつの世でも、商品やサービスが先に変わるのではなく、市場や消費者の需要ニーズが先に変わることの好例ともいえ、ビジネスモデルを考えるうえでとても示唆の高い事例であるといえる。

高利の販売革命は、商品の売り方だけではなかった。

①従業員教育

一人一色ひとりいっしき」:反物の種類ごとに担当者を分けることで、従業員教育もシンプルで早期の人材育成が可能になった。高い商品知識を持った販売員の接客サービスは、顧客の購買行動に大きな情報付加価値を与えることになる。

また、「仕立て売り」のために、イージーオーダーだけを担当する縫製職人も雇い入れた。現代でいう「SPA(Specialty store retailer of private label apparel: 製造小売り)」の走りともいえる。

当時の呉服店はいわゆる外商が主な業務であり、ベテラン社員が仕入・流通から販売・債権回収まですべてをこなしていたため、分業体制を進め、専門家を育成することは、従業員コスト低減と商品の魅力度向上の双方に二重に貢献した。

②大阪城御金蔵銀御為替御用

三井高利は、両替商として公金為替のしくみを幕府に提案してこれを実現した。京都西陣からで仕入れた反物を江戸で販売し、回収された売上(文字通りきん貨!)を江戸幕府に納した。

現代でいう、為替マリー を江戸と大坂の間で、金と銀の間で行うことで、為替エクスポージャーを圧縮して、為替リスクと仕入コスト低減を実現した。

③持株会社

大元方おおもとかたと呼ばれる持株会社を設立し、江戸と大坂、呉服店と両替商の全事業を統括した。各事業・店には大元方から出資し、利益の一部を上納させ、三井一族への配当に充てた。これが後の三井財閥と起こりとなる。

解説

ショールーミング と 商品を売らないお店

インターネット関連技術の大きな進歩により、小売店で確認した商品をその場では買わず、ネット通販によって店頭より安い価格で購入する消費者行動が目立つようになった。

三井高利が発明した「小売」は今、大きな転換点にあるといえる。

ショールーミング(showrooming)は、小売店の売上を激減させ、各小売業態は新しい対策をあれこれ講じている。

ウィンドウショッピングに対して「フィッティングフィー」(Fitting Fee)と呼ばれる料金を請求し、客が実店舗で商品を購入すると、全額を客に払い戻す仕掛けがある。

また、顧客の来店体験の付加価値を高めようと、実物を触って見て使って販売するための工夫を店内施設で試みる事例も多い。

一方、ショールーミングに対抗するのではなく、これを積極的に受け入れることで、顧客体験の価値を増やし、自社売上につなげようとする試みもある。

「リアル店舗2.0」という触れ込みで、ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C: Direct to Consumer)という形で、実店舗などで顧客接点を増やし、自社のECサイトから商品を購入してもらおうというのである。

SNSによる店員の情報提供などネット接続も積極に推進するため、デジタルでの商品情報の更新頻度アップや、顧客からのSNSなどのフィードバックがかえって、自社ブランドへの顧客ロイヤリティを高める効果も認められる。

さらに進んで、自社ブランドを販売するのではなく、業務委託で顧客体験そのものを提供する企業も現れている。もはや、こうなると、小売業でなく、サービス業の範疇にはいるのかもしれない。

米シリコンバレー発の体験型店舗を運営する「b8ta(ベータ)」が28日、8月1日に東京都内に開く日本初の店舗の内覧会を開いた。販売を目的とせず、体験して気に入ればネットで購入してもらう仕組みだ。小売店を通さず直接消費者に販売するD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)が台頭しており、店舗で低コストで紹介して成長を後押しする。

米ベータ、来月日本上陸 売らないお店、都内2店舗|日本経済新聞|2020/7/29

参考まで、D2Cに取り組んでいる日本企業の主な動きは以下の通り。

  • GU:ショールーミング店舗の運営「GU STYLE STUDIO」
  • ファブリックトウキョウ:自社ECサイトで購入
  • ビックカメラ:QRコードからネット通販に誘導
  • パン・パシフィック・インターナショナルHD:ドン・キホーテでアプリ連動店舗開発
  • 蔦屋家電エンタープライズ:次世代型ショールーム「蔦屋家電+(プラス)」運営

参考

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