コストダウン Cost Down
シェアードサービス
シェアードサービスとは、複数のグループ会社や事業部から構成される企業がそれぞれの部門で個別に行われている業務の一部を一か所に集約させることで、業務効率化とコストダウンを図る手法である。
一般的には間接業務を集約することを意味することが多いが、バリューチェーン上の主要業務を共通化することもある。
例えば、販売や購買の代行業務等が挙げられる。
業務を集約して一元管理の下に置くことは、コスト視点からは、業務執行費用の中でも特に固定費(間接人員にかかる人件費、オフィス賃貸料など)を多重利用することで、コスト節約につながる。
その他、コスト意識以外のメリットもサービス部門の運営方針次第では享受することができる。
- 責任の明確化によるガバナンス意識の強化
- 内部統制品質の向上
- 内部牽制の強化
- データの一元管理
特に、昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)が声高に叫ばれているビジネス環境において、同じ社内でも散逸する重要データを統合して、一元管理することで、名寄せなどの余計な手間暇を削減できること以上に、有効なクロスセルでの商品提案や事業企画の元ネタとしての有効活用できるメリットが強調されている。
シェアードサービス化により、大幅なコスト削減が可能な条件を満たす業務の特徴は、
- 日常的に大量に取引を処理する業務
- 月末や月初めなど特定の日に偏って大量の処理が必要な業務
- 専門的スキルを要する業務
などである。
これらは、業務プロセスや周辺の規定などを整備することにより、極限まで定型化・標準化する必要がある。
標準化された定型業務にまで落とし込むことができたならば、もはや人力のみに頼るのではなく、AIの助けも得ることができるし、ERP(Enterprise Resource Planning)と呼ばれる統合基幹業務システムの導入・活用もしやすくなる。
生産性向上のパートで説明した、「規模の経済」「多重目的の利用」との相違点は、同じく、コスト支出単位当たり収益の増大を目指すとともに、総コストの圧縮をも狙う点が異なっている。


BPO
Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、シェアードサービスの提供形態のうち、そのサービス提供主体を企業外の専門業者に任せる手法である。
シェアードサービスとの使い分けは主に、❶社内に特定の業務知見を蓄積する必要性の大小、❷対象業務の定型化・一般化の程度 の2点から判断されることが多い。
BPOを受託する企業は、複数の委託企業からできる限り共通業務・標準化業務を受託することを目指す。
1社では採算ラインに乗らない業務でも、委任企業が増えれば増えるほど、規模の経済が働くため、より採算ラインを超えやすくなる。
これは、「取引規模利益モデル」に相似しているが、委託業務そのものを代行することで対価を得ようとする点が異なる。
むしろ、コストダウンそのものを利益の源泉に捉える点で、この「コストダウン」に分類されるものと考える。
シェアードサービスを一企業グループという資本の枠組みを超えて、商業サービスとして展開しようと点から、シェアードサービスに比べて、より業務標準化の必要性が高く、同時に、より業務専門家に仕事を任せられる安心感・安定感も得られる。
また、BPOの展開手法のひとつとして、委託業務の間接部門をカーブアウト(スピンアウトよりBPOの実態を表す用語と考える)させ、委託企業と受託企業の折半出資(50%ずつ)のBPO受託企業を設立し、従来の間接部門の人員を転籍させる手法が用いられることもある。
この手法の効用は、BPOの成果としてコストダウンからの利益を得るだけでなく、委託企業内における余剰間接人員を転籍(または出向)させることで、適職による経済貢献をさせることでモチベーションの低下を防ぐとともに、同時に人員削減による将来的な人件費コスト(退職金や配置転換に伴う摩擦的コスト)の圧縮も達成できる。
これは、❶委託企業の社内事情に通じた間接人員を摩擦コストなく雇用できること、❷委託企業独自の事情により業務のカスタマイズ化のためのコストを削減できること、❸BPO企業のプラットフォームを利用することにより、規模の利益も同時に追求できる環境が整えられること、などのメリットを併せ持つ。
例えば、コンサルティングファーム大手のアクセンチュアなどは、こうした手法を用いてBPOビジネスを近年大きく伸ばしてきた。

休眠資産の活用
追加的取得コストが不要で、既に所有している資産(不動産、特許権などの知財権)が、従来目的以外でマネタイズ(換金化、ビジネスとして採算がとれるようになること)できる機会を見つけることができたなら、企業の収益性が高まることにつながる。
閉鎖・稼働停止してしまった遊休不動産を、別のテナントなどの経済主体に貸し出すことで、賃料収入を得ることができる。
自社では不要となった資産をシェアリングエコノミーのプラットフォームに上げることで、社外のユーザを獲得して、その使用料を聴取することでビジネス化することも可能である。
また、眠っている知財権を、オープンクローズ戦略に則り、クロスライセンスなどで掘り起こしてマネタイズすることで追加的収益を得ることができる。
所有者がその該当資産を利用できない場合、発想を転換することで、第三者に貸し出したり売却する方法で、眠っている資産から収益を得る方法が見つかるかもしれない。
これらは、新たに資産を取得する費用が掛からないという点に着目して、コストダウンの一種と考えるとここの分類に入れることができる。


価格破壊
「価格破壊」という言葉は、日本の流通業では、ダイエー創業者の中内功氏をモデルとした城山三郎氏の著書で有名である。
徹底した商材の機能の絞り込みと、業務プロセスのスリム化を並行して行い、消費者が感じる値頃感と提供価格の差を最大化することで、潜在顧客を常に掘り起こしていく手法である。
ダイエーの場合は、卸売の中抜きやチェーンストア理論の徹底により、流通コストを破壊的に低減させたところに一時代を築き上げた要因が求められる。
またこの手法は、ビジネスモデルを論じた スライウォツキー著「ザ・プロフィット」では、「低コストデザイン利益モデル」として紹介されている。
その重要ポイントは、市場においてリーダのポジションにあった企業が、高シェアを背景にした経験曲線効果により、高収益を誇っているのに対抗する弱者の戦法のひとつである点にある。
先行するリーダ企業の経験曲線が無に帰するような、従来の延長線上にない飛躍的な技術的進歩を伴う低価格での供給によって、リーダ企業の勝ちパターンをひっくり返すところに勝因を見出すものである。
これまでのビジネスモデルの必勝パターンが一度崩れれば、リーダ企業の先行者利益も高い相対的市場シェアも失われるので、もう一度仕切り直して、横一線で勝負が再開される。
その時、次の一手として、新しい価格帯(この場合は激安なのだが)に相応しいオペレーションと機能を絞り込んだ商材を揃えたところが次の勝者となるのである。
サウスウェスト航空の拠点間直接輸送によるLCCがハブアンドスポーク方式を、デル・コンピュータのダイレクト・マーケティングが従来の足を使った販売網と多段階流通チャネルを打ち破ったのは、新しいサプライチェーンを確立して価格破壊を可能にし、従来のリーダ企業の高収益要因の牙城を崩した好例である。
ビジネスモデル体系(概要)
Class | Block | 説明 |
---|---|---|
ターゲット Target ![]() | 顧客セグメント Customer Segments ![]() | 企業が関わろうとする顧客を明確にする (顧客としないセグメントは無視する) |
顧客との関係 Customer Relationships ![]() | 顧客獲得・顧客維持・販売拡大の3点について、 顧客とどのような関係を構築したいか | |
チャネル Channels ![]() | 顧客セグメントとのコミュニケーションの方法 顧客セグメントに価値を届ける方法 | |
バリュー Value ![]() | 価値提案 Value Propositions ![]() | 対象顧客に対して、企業が提供できるベネフィットの総体 顧客が必要とする製品とサービスの組み合わせ |
ケイパビリティ Capability ![]() | リソース Key Resources ![]() | ビジネスモデルの実行に必要な経営資源の明確化 リソース獲得に必要な対価と収益の流れの相対的関係 |
主要活動 Key Activities ![]() | 価値提供するために欠かせない活動 製造・問題解決・プラットフォーム・ネットワーク | |
パートナー Key Partners ![]() | どのリソースをサプライヤーから得ているか どの主要活動をパートナーが行っているか | |
収益モデル Profit Models ![]() | コスト構造 Cost Structure ![]() | ビジネスモデルの運営にあたって発生する全てのコスト |
収益の流れ Revenue Streams ![]() | 企業が顧客セグメントから生み出すキャッシュフロー 顧客が支払いたいと思っている対象と望む支払方法 |
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