割引制度 Discount
紛らわしい用語「値引」「割引」「割戻」
商品の値段を安くすること全般的に「値引」「割引」「割戻」という用語が存在する。
経理用語としては、税務上の扱いが異なるため、これらはすべて厳格に使い分けられている。
ただし、実務上の多様な商取引を前提にすると、これらを厳格に区分することは困難なケースが多い。本稿では、製商品・サービスの値段(購入価格)をある理由で値下げする行為にはすべて「割引」の語を用いて説明する。
概要
「割引(ディスカウント)」は、買い手の取引上の地位・販売機能、仕入れ量、代金決済速度などを基準にして、あらかじめ公開されている公表価格から、ある一定額または一定率を差し引いて売り手が買い手に販売することである。
割引前の価格と、割引価格が適用される条件は、
①事前に
②公開
されていることから、売り手が買い手に取引の都度与える、というより、買い手が多くの割引制度の中から任意に選択するという意味合いの方がしっくりくる。
業者割引 Trade Discount
小売価格がメーカーによって決められている場合、小売り流通ならばそこから30%引き、卸売り流通ならば小売値から50%引き、というふうに、流通チャネルにおける位置づけによって割引率を設定する制度。
従来の、建値制度(あるいはメーカー希望小売価格)を前提とした仕切価格設定に基づくと考えると理解しやすい。
小売りも卸売りも各自のマージン率(額)が保証されるため、安定的な商取引にプラスに貢献するものとして導入されることが多い。
ただし、昨今では直販や複雑な商取引が同時並行的に乱立することが常態化しているため、小売りや卸売りといった各チャネラーの果たすべき機能の定義と得られるべき適正なマージン率の計算設定が困難になっており、各自が満足するような適切な割引率(額)の設定をすることは難しくなっている。
機能割引 Functional Discount
小売り流通、卸売り流通と、商流上でチャネラーとして特定の機能を分担したことに対する貢献度をもって割引を受けることができる意味を込めて、業者割引は機能割引と呼ばれることもある。
語感としては、業者割引は、小売りや卸売りの中でも特別な条件を細かく設定し、文字通り業者ごとに多様な割引を設定することを促進する場合によく用いられる。
一方、できるだけ業者間の適用割引制度の多様化を避けるために、機能に特化してシンプルな割引制度を実施する場合には、機能割引の語の方を用いることが多い。
契約割引 Contract Discount
ある期間(例:6か月、年間)の取引量をあらかじめ契約することで買い手が得られる割引
数量割引 Quantity Discount / Volume Discount
あらかじめ定められた基準値(基準量)以上の取引を行った場合に買い手が得られる割引。
少量取引で売り手のコストが上がるのを是正したり、販売促進を目的に実施される。
経理用語ではこれを「割戻」という。
割引率は、基準値を多段階に設定することも可能である。
例)基準値の2倍までの取引量なら25%割引、基準値の4倍までの取引量なら50%割引
配送割引 Carry Way Discount
あらかじめ提示されている配送方法、配送距離を買い手が任意に選択することによって割引率(額)が得られる
現金割引 Cash Discount
決算方法を現金にすることで買い手が得られる割引。
現金の代わりに手形決済や掛け取引にした場合、売り手は集金コスト、金利コスト、万一の支払いが決済されない不履行リスク(貸し倒れリスク)を負うことになる。
こうしたコストやリスクを回避するために、買い手に現金決済を選好させるために、魅力的な割引制度を提示する。
なお、掛け取引であっても、実際の決済日を支払予定日より前倒しするインセンティブを買い手に与えるために、前倒し日数に比例した割引制度が実施されることも多い。
例)30日前なら25%割引、10日前なら10%割引
なお、こうした早期の支払に伴う割引のみ経理用語では「割引」と狭義で用いる。
季節割引 Seasonal Discount
季節性のある製商品であっても、メーカーとしては生産の平準化を図った方が低コストで生産できるため、流通側に実需シーズンイン前に極力買い取ってもらうことが採算性につながる。
また、作り置き(買い置き)した製商品や原材料の在庫コストを低減したい意図もある。
そこで、メーカーから流通側に対して、倉庫管理料や、金利相当額の見合いの額を考慮した割引を付けて買い手に販売する施策が採用されることがある。
これを季節割引という。
この応用として、買い手に対して、購入代金の支払いサイト(回収期間)を季節割引対象の製商品については、例外的に伸ばし、支払い延長分の金利も取らないことで、実質的な割引を実現する方法もある。
ビジネスモデル体系(概要)
Class | Block | 説明 |
---|---|---|
ターゲット Target | 顧客セグメント Customer Segments | 企業が関わろうとする顧客を明確にする (顧客としないセグメントは無視する) |
顧客との関係 Customer Relationships | 顧客獲得・顧客維持・販売拡大の3点について、 顧客とどのような関係を構築したいか | |
チャネル Channels | 顧客セグメントとのコミュニケーションの方法 顧客セグメントに価値を届ける方法 | |
バリュー Value | 価値提案 Value Propositions | 対象顧客に対して、企業が提供できるベネフィットの総体 顧客が必要とする製品とサービスの組み合わせ |
ケイパビリティ Capability | リソース Key Resources | ビジネスモデルの実行に必要な経営資源の明確化 リソース獲得に必要な対価と収益の流れの相対的関係 |
主要活動 Key Activities | 価値提供するために欠かせない活動 製造・問題解決・プラットフォーム・ネットワーク | |
パートナー Key Partners | どのリソースをサプライヤーから得ているか どの主要活動をパートナーが行っているか | |
収益モデル Profit Models | コスト構造 Cost Structure | ビジネスモデルの運営にあたって発生する全てのコスト |
収益の流れ Revenue Streams | 企業が顧客セグメントから生み出すキャッシュフロー 顧客が支払いたいと思っている対象と望む支払方法 |
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