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原価計算基準三 原価の本質(四)正常性

基準三 原価の本質(四)正常性マネジメント
基準三 原価の本質(四)正常性

原文

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

三 原価の本質

(四) 原価は、正常的なものである。原価は、正常な状態のもとにおける経営活動を前提として把握された価値の消費であり、異常な状態を原因とする価値の減少を含まない。

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準|原価計算基準

解説

「原価計算基準 三 原価の本質」では、原価の本質を下記4項目で整理してまとめている。

  1. 経済価値消費性
  2. 給付関連性
  3. 経営目的関連性
  4. 正常性

本稿では、このうち「正常性」を取り上げる。

この規定は、企業が経営目的を達成するため経営過程で行う生産・販売活動における価値の消費のうち、正常なものだけを原価とすることを定めるものである。

経営目的のための活動であっても、異常な状態における価値の消費(=減少)は原価とはみなさない。

※「価値の消費」なる語が即原価を意味すると解する場合、異常な状態では「価値の消費」とはいわず、「価値の減少」とまで言い換えることがある。

こういう考え方をする背景には、経営活動(経営過程における生産・販売活動)は、継続性・反復性が特徴であると理解されているからである。

ここから、継続的・反復的に行われる価値の消費は原価発生の要因となる、と考えることになる。

ポイント

原価計算基準における正常性の示し方

原価計算基準、基準三(四)にて、「原価は正常的なものである」との規定を設けているが、何が正常的かについては特に言明されていない。

多種多様な業種・業態がある中で、原価計算基準にてどういうものが正常性を有する者かを画一的に定義することは、かえって原価計算に害悪を及ぼすと考えられたからである。

そこで、基準五(二)に「異常な状態を原因とする価値の減少」を例示列挙することで、正常性を性格づけることにしたのである。

つまり、ここでの「正常性」は「非異常性」という消極的な意味合いで用いられていることになる。

正常性の定義方法について

前節にあるように、原価計算基準における「正常性」の定義は消極的定義の手法を採っていることが分かった。

※数学的には、全体集合と補集合、背理法の考え方がこれに近い。

原価計算論では、同種の定義作法が各所で用いられている。下記にて、「正常性」を例にとってこの種の論法に慣れることにする。

  1. 積極的な意味での正常性
    • 正常価格、正常能率、正常操業度からなる正常原価で示される正常性
  2. 消極的な意味での正常性
    • 異常なものを決めることにより、「非異常性」という意味合いで間接的に示される正常性

異常性を認める範囲

基準五(二)から先取りして具体例を挙げるならば、異常な状態を原因とする価値の減少には、異常な仕損・減損、予期しない陳腐化による固定資産の臨時償却などが考えられる。

これらは、異常な価値の減少として、原価とはならないことが原価計算基準で定められている。

このとき、「原価とはならない」という文言だけを表面的にだけ理解してしまうと、この文言だけでは舌足らずで背景についての説明が不足することで、会計処理(原価処理)を誤る恐れがある。

ここでいう「原価とはならない」とは、原価計算制度上での原価とはならない」という意味である。

したがって、異常仕損・減損や臨時償却費は、製品原価には含まれないことは明らかである。しかし、それらは期間費用には算入されないのかという疑問が残る。

厳密には、原価計算基準において総原価という概念があり、総原価は製品原価(≒売上原価)販管費を加えたものである。

それは、日本基準では、営業利益を算出するために、売上高(収益)から差し引かれる総額である。

原価計算論では、原価計算制度上にて原価として認められないものは、異常原価と呼ばれることが一般的だ。

異常原価は、原価計算制度上では原価を構成し得ないが、その異常性は非経常性とイコールだから、特別損失の一部となって、経常利益の下の税引前当期純利益を計算する際に考慮される。

よって、原価計算基準 三(四)で異常原価は非原価とされたとしても、よっぽどの例外を除いて、異常原価は期間費用として損益計算書(P/L)に反映されることになる。

原価計算基準 逐条詳解

前文

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

一 原価計算の目的

(一)財務諸表作成目的

(二)価格計算目的

(三)原価管理目的

(四)予算管理目的

(五)基本計画設定目的

二 原価計算制度

三 原価の本質

(一)経済価値消費性

(二)給付関連性

(三)経営目的関連性

(四)正常性

四 原価の諸概念

(一)実際原価と標準原価

1. 実際原価

2. 標準原価

(二)製品原価と期間原価

(三)全部原価と部分原価

五 非原価項目

六 原価計算の一般的基準

(一)財務諸表作成のための一般的基準

(二)原価管理のための一般的基準

(三)予算管理のための一般的基準

第二章 実際原価の計算

七 実際原価の計算手続

第一節 製造原価要素の分類基準

八 製造原価要素の分類基準

(一)形態別分類

(二)機能別分類

(三)製品との関連における分類

(四)操業度との関連における分類

(五)原価の管理可能性に基づく分類

第二節 原価の費目別計算

九 原価の費目別計算

一〇 費目別計算における原価要素の分類

一一 材料費計算

一二 労務費計算

一三 経費計算

一四 費用別計算における予定価格等の適用

第三節 原価の部門別計算

一五 原価の部門別計算

一六 原価部門の設定

一七 部門個別費と部門共通費

一八 部門別計算の手続

第四節 原価の製品別計算

一九 原価の製品別計算および原価単位

二〇 製品別計算の形態

二一 単純総合原価計算

二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価

二五 工程別総合原価計算

二六 加工費工程別総合原価計算

二七 仕損および減損の処理

二八 副産物等の処理と評価

二九 連産品の計算

三〇 総合原価計算における直接原価計算

二二 等級別総合原価計算

二三 組別総合原価計算

三一 個別原価計算

三二 直接費の賦課

三三 間接費の配賦

三四 加工費の配賦

三五 仕損費の計算および処理

三六 作業くずの処理

第五節 販売費および一般管理費の計算

三七 販売費および一般管理費要素の分類基準

三八 販売費および一般管理費の計算

三九 技術研究費

第三章 標準原価の計算

四〇 標準原価算定の目的

四一 標準原価の算定

四二 標準原価の改訂

四三 標準原価の指示

第四章 原価差異の算定および分析

四四 原価差異の算定および分析

四五 実際原価計算制度における原価差異

四六 標準原価計算制度における原価差異

第五章 原価差異の会計処理

四七 原価差異の会計処理

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