原価計算基準 二二(二)[前段]等価係数(インプット基準)追加しました
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原価計算基準 一六 原価部門の設定(二)補助部門

原価計算基準 一六 原価部門の設定(二)補助部門 マネジメント

原文

一六 原価部門の設定

(二) 補助部門

 補助部門とは、製造部門に対して補助的関係にある部門をいい、これを補助経営部門と工場管理部門とに分け、さらに機能の種類別等にしたがって、これを各種の部門に分ける。

 補助経営部門とは、その事業の目的とする製品の生産に直接関与しないで、自己の製品又は用役を製造部門に提供する諸部門をいい、たとえば動力部、修繕部、運搬部、工具製作部、検査部等がそれである。工具製作、修繕、動力等の補助経営部門が相当の規模となった場合には、これを独立の経営単位とし、計算上製造部門として取り扱う。

 工場管理部門とは、管理的機能を行なう諸部門をいい、たとえば材料部、労務部、企画部、試験研究部、工場事務部等がそれである。

第二章 実際原価の計算|原価計算基準

解説

補助部門とは

「補助部門」とは、他部門の活動を補助支援するために、その部門で作り出した用役を製造部門あるいは他の補助部門に提供する部門である。補助部門はさらに「補助経営部門」「工場管理部門」に細分化される。

「補助経営部門」は、自部門の用役を製造部門に対して提供し、生産活動を直接的に補助支援することを任務とする。例えば、動力部、修繕部、運搬部、工具製作部、検査部等がそれにあたる。

「工場管理部門」は、工場全体の管理事務のような管理的機能を担う補助部門である。例えば、工場事務部、労務部、企画部、試験研究部、材料部等がそれにあたる。

原価部門の分類

一旦、基準一六(一)では製造部門の細目まで見ていたが、本稿で改めて、補助部門の細目も併せてざっと一覧化しておく。

分類1分類2分類基準分類3
製造部門主経営部門製品の種類別A製品製造部門、B製品製造部門
製品生成の段階部品加工、製品組立、検査
製造活動の種類鋳造、鍛造、機械加工、組立
機械設備の種類切削、研磨、プレス、溶接、塗装
作業区分離線、解体、梱包、運搬、点検
副経営部門製品/生成段階/活動別副産物の加工、包装品の製造
補助部門補助経営部門提供用役の種類動力、修繕、運搬、検査
規模が大きい⇒製造部門として取り扱う
工場管理部門提供用役の種類工場事務、労務、企画、試験研究
まとめ
  1. 「補助部門」は他部門へ用役を提供するための部門である
  2. 補助部門には「補助経営部門」と「工場管理部門」がある
    • 補助経営部門:製造部門に直接的に用役を提供する部門
      • 相当規模に成長したら、原価計算上は製造部門扱いとする
    • 工場管理部門:工場全体の管理事務を行う部門

ポイント

補助経営部門の用役提供先

前章では説明の分かりやすさから、「補助経営部門の用役提供先は製造部門である」と言い切った部分がある。しかしながら、例えば、動力部が提供する蒸気や電気、水などのユーティリティーは、必ずしも製造部門だけがその用役を享受するのではなく、各補助部門もその用役提供を受ける必要があることの方が多い。

これは基準一八(二)における補助部門費の各種配賦方法(階梯式配賦法など)のロジック選択にも関連する。物理的には、各補助部門も動力部から提供される動力源を確実に消費するも、原価計算上は、その事実は事実として、動力部の部門費を製造部門にだけ配賦するかもしれない。

部門別計算もロジックをデザインするうえで、何を重視して何を捨てるか、あるいは重要性の原則をどこまで適用するかという辺りがポイントとなる。

補助経営部門の規模

補助経営部門、例えば、工具製作部、修繕部、動力部などが、相当規模の大きさとなった場合には、これを独立の経営単位とし、原価計算上は製造部門扱いとする。この取り扱いの意味は、製品原価決定に対して金額的重要性が増した補助経営部門費は、他の製造部門へ配賦せずに、(賦課か配賦かは一旦脇に置いといて)直接的に製品に紐づけるということだ。

補助部門費として製造間接費扱いすると、製造部門への配賦計算の分だけ製品原価算出までに間に挟む途中計算が少なくとも1段階増える。

配賦された金額をまた別の基準の配賦すると、費用発生元から製品原価まで理論的に関係性を意識したまま辿ることがより困難になるため、原価改善のための差異分析が製品目線ではより難しくなる。堅牢な多段階配賦システムに拘るより、できるだけシンプルな製品原価への跡付け方法を見出して、製品原価削減の実効性を上げることの方を重視しようという規定と思われる。

個人的意見

なお、「相当規模」とはどの程度かという目安を示してほしいと思う所だが、企業規模や生産形態によって千差万別であろうから、原価計算基準に定量基準を求めてもしょうがない。

筆者による原価管理実務における皮膚感覚でいけば、総製造費用の5%を超えたあたりから、補助部門費として数段階の配賦計算に持ち込むのが辛くなってくる。とある基準でいったん配賦(1次配)された金額を別の基準でさらに別の配賦対象に配賦(2次配)するのは、とにかく心苦しくなる。

多段階配賦を受けたコストを原価管理の対象にするのはとにかく骨が折れる。ほぼ不可能に近いだろう。担当者の本音はきっとこうなるに違いない。「我に管理可能費を!」

しかも、元から補助部門費としての性質があるのだから、製品に賦課(直課)できる程の製品関連性があるケースの方が少ない。

であるから、この規定は、徒に配賦計算のステップを増やさずに実態をよく観察して、製品への直接的な紐づけ(配賦含む)の方法を可能な限り探求することが肝要である、という原価計算における大事な精神論の結露のひとつではないかと思う次第である。

原価計算基準 逐条詳解

前文

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

一 原価計算の目的

(一)財務諸表作成目的

(二)価格計算目的

(三)原価管理目的

(四)予算管理目的

(五)基本計画設定目的

二 原価計算制度

三 原価の本質

(一)経済価値消費性

(二)給付関連性

(三)経営目的関連性

(四)正常性

四 原価の諸概念

(一)実際原価と標準原価

1. 実際原価

2. 標準原価

(二)製品原価と期間原価

(三)全部原価と部分原価

五 非原価項目

六 原価計算の一般的基準

(一)財務諸表作成のための一般的基準

(二)原価管理のための一般的基準

(三)予算管理のための一般的基準

第二章 実際原価の計算

七 実際原価の計算手続

第一節 製造原価要素の分類基準

八 製造原価要素の分類基準

(一)形態別分類

(二)機能別分類

(三)製品との関連における分類

(四)操業度との関連における分類

(五)原価の管理可能性に基づく分類

第二節 原価の費目別計算

九 原価の費目別計算

一〇 費目別計算における原価要素の分類

一一 材料費計算

(一)実際材料費の計算

(二)材料の実際消費量

(三)材料の消費価格

(四)材料の購入原価

(五)間接材料費

一二 労務費計算

(一)直接工の労務費

参考 段取りコスト(Set-up Cost)

(二)間接労務費

一三 経費計算

一四 費用別計算における予定価格等の適用

第三節 原価の部門別計算

一五 原価の部門別計算

一六 原価部門の設定

(一)製造部門

(二)補助部門

一七 部門個別費と部門共通費

一八 部門別計算の手続

(一)部門費の第1次集計

(二)部門費の第2次集計

(三)工程別集計と共通費

第四節 原価の製品別計算

一九 原価の製品別計算および原価単位

二〇 製品別計算の形態

二一 単純総合原価計算

二二 等級別総合原価計算

(一)等価係数(アウトプット基準)

(二)

二三 組別総合原価計算

二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価

(一)完成品換算量の算定

(二)原価配分法

  1. 平均法
  2. 先入先出法
  3. 後入先出法
  4. 簡便法(加工費計算の省略)
  5. 簡便法(予定原価・正常原価の適用)
  6. 簡便法(期末仕掛品の無視)

二五 工程別総合原価計算

二六 加工費工程別総合原価計算

二七 仕損および減損の処理

二八 副産物等の処理と評価

二九 連産品の計算

三〇 総合原価計算における直接原価計算

三一 個別原価計算

三二 直接費の賦課

三三 間接費の配賦

三四 加工費の配賦

三五 仕損費の計算および処理

三六 作業くずの処理

第五節 販売費および一般管理費の計算

三七 販売費および一般管理費要素の分類基準(準備中)

(一) 形態別分類(準備中)

(二) 機能別分類(準備中)

(三) 直接費と間接費(準備中)

(四) 固定費と変動費

(五) 管理可能費と管理不能費

三八 販売費および一般管理費の計算

三九 技術研究費

第三章 標準原価の計算

四〇 標準原価算定の目的

四一 標準原価の算定

四二 標準原価の改訂

四三 標準原価の指示

第四章 原価差異の算定および分析

四四 原価差異の算定および分析

四五 実際原価計算制度における原価差異

四六 標準原価計算制度における原価差異

第五章 原価差異の会計処理

四七 原価差異の会計処理

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