原文
二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価
(二) 次いで、当期製造費用及び期首仕掛品原価を、次のいずれかの方法により、完成品と期末仕掛品とに分割して、完成品総合原価と期末仕掛品原価とを計算する。
3. 期末仕掛品の完成品換算量のうち、期首仕掛品の完成品換算量に相当する部分については、期首仕掛品原価をそのまま適用して評価し、これを超過する期末仕掛品の完成品換算量と完成品数量との比により、当期製造費用を期末仕掛品と完成品とにあん分し、期末仕掛品に対してあん分された額と期首仕掛品原価との合計額をもつて、期末仕掛品原価とし、完成品にあん分された額を完成品総合原価とする(後入先出法)。
第二章 実際原価の計算|原価計算基準
解説
後入先出法とは
後入先出法(LIFO: Last in First Out)とは、「基準一一(三)材料の消費価格」で見てきたモノの流れと材料費の消費価格の決定の仮説のひとつである。後に購入した材料から先に消費するという仮定で計算を行うというものだ。
総合原価計算における後入先出法は、期首仕掛品があればそれを後回しにして、新たなロットの生産の方を優先して加工し完成させて、なお余力があれば改めて期首仕掛品の完成に向かうという作業順を想定した製品単価計算のことを指す。
前期までに作りかけのモノを現場に残したまま、後から現場投入されたモノから作業をまた改めて始めるという直感とは真逆の作業手順である。それゆえ、これはあくまで単価計算の仮定であって、その通りにものづくりをするという分けではないことに留意する必要がある。
(もし仮に、生産ロット別に出庫単価が分かれば、それは、総合原価計算ではなく、個別原価計算に近いロット別原価計算の手法を採ることになろう。よって、個別ロットの動きを見るだけではその月全体の出庫原価が累計で判明しない状態になって初めて、先入先出とか後入先出という仮定計算の必要が生じるのである)
後入先出法による期末仕掛品原価の算定パターン
総合原価計算の基本は、当期に投入された原価である総製造費用(期首仕掛品原価+当期製造費用)を、当期に産出された原価(完成品総合原価+期末仕掛品原価)に按分することである。
按分するのに単価情報を用いる(または按分計算過程で必然的に単価情報が得られる)から、最終目的が製品単価を計算することだと言い換えてもあながち間違いではない。
「基準二四(二)3. 後入先出法」の記述をそのまま忠実に捉えると、
- 期首仕掛品換算量 = 期末仕掛品換算量の場合、
- 期首仕掛品原価 ⇒ すべてこれを期末仕掛品原価に充当
- 期首仕掛品換算量 < 期末仕掛品換算量の場合、その超過部分に対して、
- 当期製造費用 ⇒ 完成品原価と期末仕掛品原価とに、完成品換算総量(A+B)でもって按分した額を充当
- A: 当期加工当期完成品(完成品数量 - 期首仕掛品の完成品換算量)
- B: 期末仕掛品の完成品換算量
- 当期製造費用 ⇒ 完成品原価と期末仕掛品原価とに、完成品換算総量(A+B)でもって按分した額を充当
となるが、この文字列だけでは少々分かりにくい。「~の場合」という条件分岐があるせいだ。
この条件分岐を図解すればこのもやもやは一気に氷解する(といいなと思う)。
❶ 期首仕掛品換算量 = 期末仕掛品換算量の場合、
期首仕掛品原価の全額が期末仕掛品原価となるから、期首仕掛品原価をそのままスライドさせればよい。
❷ 期首仕掛品換算量 < 期末仕掛品換算量の場合、
期末仕掛品原価は、期首仕掛品原価の他に不足分を当期製造費用から注入してやる必要がある。当期製造費用は、完成品数量と、超過分(=期末仕掛品換算量 - 期首仕掛品換算量)とで按分することになる。
❸ 期首仕掛品換算量 > 期末仕掛品換算量の場合、
期末仕掛品原価は、その全量が期首仕掛品原価から成るので、期首仕掛品換算量の単価に期末仕掛品換算量を掛け算したものが期末仕掛品原価に一致する。
後入先出法の計算フロー
大前提として、後入先出法では、「基準二四(二)2.先入先出法」で触れたように、いわゆる修正先入先出法の後入先出法版に限定して考えるのが一般的である。
とどのつまり、何よりも先に期末仕掛品原価を求めることに注力する、ということだ。
なぜなら、借方原価として既知の製造総費用(期首仕掛品原価+当期製造費用)と、まず注力すべき期末仕掛品原価を先に求めれば、自ずと完成品総合原価は求めることができるからだ。
完成品総合原価 = 総製造費用 - 期末仕掛品原価
これは、簡単な雑魚キャラから先に片付けて外堀を埋めていくと、最終的にはラスボスを倒せるというゲームセオリーに似ているところがある(と思う)。
会計実務では、ボリュームは圧倒的に期末仕掛品原価よりも完成品総合原価の方が大きいし、工程別計算とか仕損減損処理など、厄介で複雑な処理を要することも多い。質量共にでっかい敵を最初に手掛けるより、やりやすい奴(期末仕掛品原価)を先に片付けて、総製造費用との差引で結果的に完成品総合原価を求めるのが総合原価計算のゲームセオリーなのである。
であれば、後入先出法も修正先入先出法と同様に、以下の計算フローとなる。今度も簡単な設例で考えてみることにしょう。
至ってシンプルに、加工費だけのケースで考えてみる(大抵の直接材料費の場合、進捗度0% or 100%の加工費として捉えれば計算パターンとしてはカバーできるため)。数量情報・原価情報は下記の通り。
[数量情報]
期首仕掛品:250kg(進捗度:20%/10%/60%)
当期受入 :850kg
当期完成品:1000kg
期末仕掛品:100kg(進捗度:50%)
[原価情報]
期首仕掛品原価:450円
当期製造費用:9,000円
当期完成品原価:???円
期末仕掛品原価:???円
計算手順の基本は下記の通り。
❶完成品換算量の計算
❷単価計算
❸原価計算
論より証拠で、「期首仕掛品換算量=期末仕掛品換算量」「期首仕掛品換算量<期末仕掛品換算量」「期首仕掛品換算量>期末仕掛品換算量」の各ケースに基づいてワークシートを作成した。青字部分は任意の数字を入力してシミュレーションできる。
期首仕掛品換算量がこの3つに設定されているのは、期末仕掛品換算量との大小関係で期末仕掛品原価の算定方式が異なるからである。当然ながら、どのワークシートも汎用的な計算ロジックで構築されているので、任意のワークシートで期首仕掛品の加工進捗度を変更しても同様の結果が得られる。
どんな入力をしても、元ファイルが壊れることはない。入力し直したい、元に戻したい場合は、画面を更新(F5押下など)すれば、初期値に戻る。
期首仕掛品の完成品換算量 = 期末仕掛品の完成品換算量 のケース
❶完成品換算量の計算
期首仕掛品の完成品換算量 = 期首仕掛品数量 × 期首仕掛品加工進捗度 = 250kg × 20% = 50kg
期末仕掛品の完成品換算量 = 期末仕掛品数量 × 期末仕掛品加工進捗度 = 100kg × 50% = 50kg
期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 期末仕掛品の完成品換算量 = 50kg
➡期末仕掛品の完成品換算量(50kg)≦期首仕掛品の完成品換算量(50kg)のとき、期末仕掛品の完成品換算量〇
➡期末仕掛品の完成品換算量(50kg)>期首仕掛品の完成品換算量(50kg)のとき、期首仕掛品の完成品換算量✖
この条件分岐処理のためにワークシートでは下記関数(IF文)を使用している
IF((期末仕掛品の完成品換算量 <= 期首仕掛品の完成品換算量),期末仕掛品の完成品換算量,期首仕掛品の完成品換算量)
期末仕掛品の完成品換算量の当期受入充当分 = 期末仕掛品の完成品換算量 - 期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 50kg - 50kg = 0kg
期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品充当分 ≡ 期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 50kg
期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品超過分 = 期首仕掛品の完成品換算量 - 期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品充当分 = 50kg - 50kg = 0kg
❷単価計算
期首仕掛品の完成品換算量の単価 = 期首仕掛品原価 ÷ 期首仕掛品の完成品換算量 = 450円 ÷ 50kg = @9.0円/kg
当期受入数の完成品換算量の単価 = 当期製造費用 ÷ 当期受入数の完成品換算量 = 9,000円 ÷ 1000kg = @9.0円/kg
❸原価計算
期末仕掛品原価(期首仕掛品充当分) = 期首仕掛品の完成品換算量の単価 × 期末仕掛品の完成品換算量(期首仕掛品充当分)= @9.0円/kg × 50kg = 450円
期末仕掛品原価(当期受入充当分) = 期首仕掛品の完成品換算量の単価 × 期末仕掛品の完成品換算量(当期受入充当分)= @9.0円/kg × 0kg = 0円
期末仕掛品原価 = 期末仕掛品原価(期首仕掛品充当分)+ 期末仕掛品原価(当期受入充当分) = 450円 + 0円 = 450円
総製造費用 = 期首仕掛品原価 + 当期製造費用 = 450円 + 9,000円 = 9,450円
完成品総合原価 = 総製造費用 - 期末仕掛品原価 = 9,450円 - 450円 = 9,000円
期首仕掛品の完成品換算量 < 期末仕掛品の完成品換算量 のケース
❶完成品換算量の計算
期首仕掛品の完成品換算量 = 期首仕掛品数量 × 期首仕掛品加工進捗度 = 250kg × 10% = 25kg
期末仕掛品の完成品換算量 = 期末仕掛品数量 × 期末仕掛品加工進捗度 = 100kg × 50% = 50kg
期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 期首仕掛品の完成品換算量 = 25kg
➡期末仕掛品の完成品換算量(50kg)≦期首仕掛品の完成品換算量(25kg)のとき、期末仕掛品の完成品換算量✖
➡期末仕掛品の完成品換算量(50kg)>期首仕掛品の完成品換算量(25kg)のとき、期首仕掛品の完成品換算量〇
この条件分岐処理のためにワークシートでは下記関数(IF文)を使用している
IF((期末仕掛品の完成品換算量 <= 期首仕掛品の完成品換算量),期末仕掛品の完成品換算量,期首仕掛品の完成品換算量)
期末仕掛品の完成品換算量の当期受入充当分 = 期末仕掛品の完成品換算量 - 期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 50kg - 25kg = 25kg
期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品充当分 ≡ 期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 25kg
期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品超過分 = 期首仕掛品の完成品換算量 - 期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品充当分 = 25kg - 25kg = 0kg
❷単価計算
期首仕掛品の完成品換算量の単価 = 期首仕掛品原価 ÷ 期首仕掛品の完成品換算量 = 450円 ÷ 25kg = @18.0円/kg
当期受入数の完成品換算量の単価 = 当期製造費用 ÷ 当期受入数の完成品換算量 = 9,000円 ÷ 1025kg ≒ @8.8円/kg
❸原価計算
期末仕掛品原価(期首仕掛品充当分) = 期首仕掛品の完成品換算量の単価 × 期末仕掛品の完成品換算量(期首仕掛品充当分)= @18.0円/kg × 25kg = 450円
期末仕掛品原価(当期受入充当分) = 期首仕掛品の完成品換算量の単価 × 期末仕掛品の完成品換算量(当期受入充当分)= @8.8円/kg × 25kg = 220円
期末仕掛品原価 = 期末仕掛品原価(期首仕掛品充当分)+ 期末仕掛品原価(当期受入充当分) = 450円 + 220円 = 670円
総製造費用 = 期首仕掛品原価 + 当期製造費用 = 450円 + 9,000円 = 9,450円
完成品総合原価 = 総製造費用 - 期末仕掛品原価 = 9,450円 - 670円 = 8,780円
期首仕掛品の完成品換算量 >期末仕掛品の完成品換算量 のケース
❶完成品換算量の計算
期首仕掛品の完成品換算量 = 期首仕掛品数量 × 期首仕掛品加工進捗度 = 250kg × 60% = 150kg
期末仕掛品の完成品換算量 = 期末仕掛品数量 × 期末仕掛品加工進捗度 = 100kg × 50% = 50kg
期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 期末仕掛品の完成品換算量 = 50kg
➡期末仕掛品の完成品換算量(50kg)≦期首仕掛品の完成品換算量(150kg)のとき、期末仕掛品の完成品換算量〇
➡期末仕掛品の完成品換算量(50kg)>期首仕掛品の完成品換算量(150kg)のとき、期首仕掛品の完成品換算量✖
この条件分岐処理のためにワークシートでは下記関数(IF文)を使用している
IF((期末仕掛品の完成品換算量 <= 期首仕掛品の完成品換算量),期末仕掛品の完成品換算量,期首仕掛品の完成品換算量)
期末仕掛品の完成品換算量の当期受入充当分 = 期末仕掛品の完成品換算量 - 期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 50kg - 50kg = 0kg
期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品充当分 ≡ 期末仕掛品の完成品換算量の期首仕掛品充当分 = 50kg
期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品超過分 = 期首仕掛品の完成品換算量 - 期首仕掛品の完成品換算量の期末仕掛品充当分 = 150kg - 50kg = 100kg
❷単価計算
期首仕掛品の完成品換算量の単価 = 期首仕掛品原価 ÷ 期首仕掛品の完成品換算量 = 450円 ÷ 150kg = @3.0円/kg
当期受入数の完成品換算量の単価 = 当期製造費用 ÷ 当期受入数の完成品換算量 = 9,000円 ÷ 900kg = @10.0円/kg
❸原価計算
期末仕掛品原価(期首仕掛品充当分) = 期首仕掛品の完成品換算量の単価 × 期末仕掛品の完成品換算量(期首仕掛品充当分)= @3.0円/kg × 50kg = 150円
期末仕掛品原価(当期受入充当分) = 期首仕掛品の完成品換算量の単価 × 期末仕掛品の完成品換算量(当期受入充当分)= @3.0円/kg × 0kg = 0円
期末仕掛品原価 = 期末仕掛品原価(期首仕掛品充当分)+ 期末仕掛品原価(当期受入充当分) = 150円 + 0円 = 150円
総製造費用 = 期首仕掛品原価 + 当期製造費用 = 450円 + 9,000円 = 9,450円
完成品総合原価 = 総製造費用 - 期末仕掛品原価 = 9,450円 - 150円 = 9,300円
以上の計算フローは、0kg/0円が頻発して計算が空振りに終わること、途中計算項目までワークシートに表示されるために見た目が良くないなどの欠点がある。
しかし、学習用に計算ロジックを確認するには、計算手続きが見える化されて証跡を辿れる方がありがたい。条件分岐処理も、やろうと思えば、SWITCH 関数などを用いてもっときれいに処理できるが、それほど計算リソースが問題にならないこと、学習者の努力が関数の理解に向けられる分だけ本質の理解に向けられるべき努力が減ることから、このような形式に落ち着いた。
ポイント
後入先出法の理論的な存在価値
後入先出法は制度会計では廃止された計算方法であるが、資格試験で問われることがまだある論点である。資格試験対策としての存在価値ではなく、会計理論としての存在価値を少々。
後入先出法の計算仮定は、現実のものづくり現場で起きていることを考えれば極めて荒唐無稽である。しかし、物価水準が右肩上がりで上昇し続けた高度経済成長期には、結構重宝した。
というのは、期末仕掛品原価に対して優先的に期首仕掛原価があてがわれるということは、逆から見れば、当期製造費用が優先して完成品原価に振り向けられるということを意味している。
これが引いては売上原価がカレント・コスト(その時点での物価水準に適合した原価)で計算されることから、期間損益計算において、在庫保有に関する価格変動に伴う架空損益(保有利益)の除去に役立つとされていた。
近年では、損益計算書(P/L)上の期間損益情報より、貸借対照表(B/S)上の資産価値情報の方が重視されるようになったため、今度は健全な在庫価値評価の視点から、後入先出法が問題視されることになり、制度的には廃止されるに至った。
このことは、損益と在庫評価は表裏一体のもので、発生コストをどうやって期間損益に配分するかは、取得原価をいつ、どれだけを損益と資産に振り分けるかという同根の問題として考えられている。
(費用配分の原則cost allocation principle)[企業会計原則 第三 貸借対照表原則 五 資産の貸借対照表価額]
この論点を想起させるから、資格試験出題者は殊の外、後入先出法(LIFO)の理論問題がお好みなのである。
【計算問題】単純総合原価計算 – 後入先出法による原価配分
筆者は、能書きだけでなく、きちんと手が動く人の方をリスペクト対象としたい性分だ。だから、これまでの説明内容を考慮した計算問題をExcelワークシートで作成してみた。つまり、計算問題としての練習台にもなるし、実務で活用することもできる。
入力欄の青字になっている「数量情報」「計量単位」「期首/期末仕掛品進捗度(%)」「原価情報」「金額単位」に任意の数字/文字を入力すると、計算機能が作動するようになっている。
どんな入力をしても、元ファイルが壊れることはない。入力し直したい、元に戻したい場合は、画面を更新(F5押下など)すれば、初期値に戻る。
自分の手元でじっくり検証したい場合は、上記のダウンロードボタンから、Excelをダウンロードすることをお勧めする。
まずワークシートの仕様・注意点から。
数量情報を入力する際、いの一番で確認しておきたいのが、借方と貸方が一致しているかである。すなわち、期首仕掛品+当期受入(仕込)の総計と、完成品+期末仕掛品の総計がきちんと合っているかを慎重に確認してもらいたい。
当たり前すぎてここのチェックがなおざりになり、後の計算が無駄になるケースが多発するからだ。ワークシートでは貸借バランスが一致すれば「OK」、不一致の場合は「一致しません!」のメッセージが出るように小細工してある。
次のステップは、各原価要素別に、完成品換算総量を求めるようになっている。ここでは、3つの原価要素ごとにそれぞれ別の加工進捗度を設定できるようになっている。
一般的には、直接労務費と製造間接費を合わせて加工費とするから、2つで足りるという気がするかもしれないが、直接材料費について、始点投入と平均的投入と終点投入のいずれかを併用するケースも考慮して3つ用意している。
実務上、直接労務費と製造間接費の加工進捗度を違えることは稀だとは思うが、業種(建設業・サービス業など)によっては、加工費に対してコストドライバーとコストプールを複数用意するケースもある。
後入先出法に特有の期末仕掛品換算量を充当元別(期首仕掛品・当期製造)、期首仕掛品換算量を充当先別(期末仕掛品・当期製造)に振り分ける処理が施されている。
単純総合原価計算の原価配分問題においては、❶完成品換算総量の比率で按分する、❷完成品換算総量単価を使用する、2つの解法がある。
このワークシート(練習問題)では、後者❷の方を意識して作成している。
「完成品総合原価と期末仕掛品原価の計算」ブロックでは各項目ごとに単価情報が付されている。後入先出法で重要なのは、当期製造費用(当期受入換算量ベース)と、期首仕掛原価(期首仕掛品換算量ベース)の単価だけだ。
それ以外の単価情報は最終結果から逆算した参考情報として表示しているに過ぎない。
Excelワークシート上の計算手続きの流れ、データ連携のされ方については、Excelネイティブの各種素敵機能で可視化チェックできるようになっている。
例えば、
シート全体の様子が知りたければ、[数式]→[数式の表示] とやれば、シート全てのセルに埋め込まれた関数・数式を画面に一括表示できる。
次に、計算・データの流れが知りたいセルをクリックしたまま、[数式]→[参照元のトレース]または[参照先のトレース]とやれば、参照元/先のセル同士を矢印で結んでくれる。
原価計算基準 逐条詳解
前文
第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
一 原価計算の目的
(一)財務諸表作成目的
(二)価格計算目的
(三)原価管理目的
(四)予算管理目的
(五)基本計画設定目的
二 原価計算制度
三 原価の本質
(一)経済価値消費性
(二)給付関連性
(三)経営目的関連性
(四)正常性
四 原価の諸概念
(一)実際原価と標準原価
1. 実際原価
2. 標準原価
(二)製品原価と期間原価
(三)全部原価と部分原価
五 非原価項目
六 原価計算の一般的基準
第二章 実際原価の計算
第一節 製造原価要素の分類基準
八 製造原価要素の分類基準
(一)形態別分類
(二)機能別分類
(三)製品との関連における分類
第二節 原価の費目別計算
九 原価の費目別計算
一一 材料費計算
(一)実際材料費の計算
(二)材料の実際消費量
(三)材料の消費価格
(四)材料の購入原価
(五)間接材料費
一二 労務費計算
(一)直接工の労務費
(二)間接労務費
一三 経費計算
第三節 原価の部門別計算
一五 原価の部門別計算
一六 原価部門の設定
(一)製造部門
(二)補助部門
一七 部門個別費と部門共通費
一八 部門別計算の手続
(一)部門費の第1次集計
(二)部門費の第2次集計
(三)工程別集計と共通費
第四節 原価の製品別計算
二〇 製品別計算の形態
二一 単純総合原価計算
二二 等級別総合原価計算
- [本文]
(二)
- [前段] 等価係数(インプット基準)
- [後段] 総括的等価係数(簡便法)
二三 組別総合原価計算
二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価
- [本文]
(一)完成品換算量の算定
(二)原価配分法
二五 工程別総合原価計算
二六 加工費工程別総合原価計算
二七 仕損および減損の処理
二八 副産物等の処理と評価
二九 連産品の計算
三一 個別原価計算
- 三二 直接費の賦課(準備中)
- 三三 間接費の配賦
- 三四 加工費の配賦
- 三五 仕損費の計算および処理
- 三六 作業くずの処理
第五節 販売費および一般管理費の計算
(一) 形態別分類
(二) 機能別分類
(三) 直接費と間接費
(四) 固定費と変動費
(五) 管理可能費と管理不能費
三九 技術研究費
第三章 標準原価の計算
四〇 標準原価算定の目的
四一 標準原価の算定
四二 標準原価の改訂
四三 標準原価の指示
第四章 原価差異の算定および分析
四四 原価差異の算定および分析
四五 実際原価計算制度における原価差異
四六 標準原価計算制度における原価差異
第五章 原価差異の会計処理
四七 原価差異の会計処理
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