原価計算基準 二二(二)[前段]等価係数(インプット基準)追加しました
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原価計算基準 一八(一)部門費の第1次集計

原価計算基準 一八(一)部門費の第1次集計 マネジメント

原文

一八 部門別計算の手続

(一) 原価要素の全部又は一部は、まずこれを各製造部門および補助部門に賦課又は配賦する。この場合、部門に集計する原価要素の範囲は、製品原価の正確な計算および原価管理の必要によってこれを定める。たとえば、個別原価計算においては、製造間接費のほか、直接労務費をも製造部門に集計することがあり、総合原価計算においては、すべての製造原価要素又は加工費を製造部門に集計することがある。

 各部門に集計された原価要素は、必要ある場合には、これを変動費と固定費又は管理可能費と管理不能費とに区分する。

第二章 実際原価の計算|原価計算基準

解説

部門費の第1次集計の位置づけ

基準一八では、部門別計算処理の手順を3段階にまとめている。

  1. 部門費の第1次集計(原価要素から部門へ集計)☚今ここ
  2. 部門費の第2次集計(補助部門から製造部門へ集計)
  3. 小工程・作業単位への集計(前工程から後工程へ集計)

「基準一五 原価の部門別計算」で図示した部門別計算の全体像を再掲する。

部門費の第1次集計は、原価要素別に集計された各費目を、製造部門と補助部門のそれぞれへ適切な方法で集計させてやることである。具体的には部門個別費賦課(直課)部門共通費配賦することで各部門費を計算する。

部門費への集計範囲

原価計算の基本的手続きは、❶費目別計算⇒❷部門別計算⇒❸製品別計算 の3ステップである。このとき、❷部門別計算は、❶費目別計算と❸製品別計算の橋渡し的立ち位置にあることが分かる。

しかし、部門別計算の2大目的である、①製品原価の正確な計算、②(部門別の)原価管理 の達成と無関係である原価要素まで、わざわざ手間をかけて部門別に集計する必要はない。原価計算基準には、❸製品別計算の計算技法別に部門別に集計されるべき原価要素の範囲を、部門別計算の目的適合性を尊重して、弾力的に定義づけられる規定がある。

個別原価計算においては、「製造間接費」「直接労務費」総合原価計算においては、「全製造原価要素」「加工費」を製造部門に集計することがあると記述されている。これを読み解いていく。

まず、原価要素の主な分類パターンを示す。

直間区分/形態別分類4分法2分法
(素価法)
2分法
(加工費法)
3分法
(加工費法)
直接材料費直接材料費素価直接材料費直接材料費
直接労務費直接労務費加工費加工費
直接経費直接経費製造間接費直接経費
間接材料費製造間接費加工費
間接労務費
間接経費
※加工費法の2分法と3分法は、基準八(三)2. の加工費定義による

次に、製品別計算の技法として、A.個別原価計算、B-1.単純総合原価計算、B-2.工程別原価計算 B-3.加工費工程別原価計算 を考える。

部門別計算の目的、原価要素の分類パターン、製品別計算の技法の3つを組み合わせると下表のように整理できる。

①製品原価の正確な計算②(部門別)原価管理
A.個別原価計算基準三三(一)
製造間接費
基準三四
加工費(直接労務費+製造間接費)
B-1.単純総合原価計算基準二一
全製造原価要素
(基準に明記なし)
B-2.工程別総合原価計算基準二五
全製造原価要素
基準二五
全製造原価要素
B-3.加工費工程別総合原価計算基準二六
加工費

個別原価計算の場合

基準三三(一)によれば、個別原価計算は、原則として直接費は製造指図書へ賦課(直課)され、間接費部門間接費として各指図書へ配賦される。この規定を素直に読めば、直接材料費・直接労務費・直接経費は製造指図書へ賦課し、製造間接費のみが部門集計されて各製造指図書へ配賦される。

基準三四によれば、「労働が機械作業と密接に結合して(中略)直接労務費と製造間接費とを分離することが困難な場合」等は、これを加工費として部門別計算を行うとある。部門加工費は予定配賦率によって配賦することが原則とされていることから、部門単位での差異分析や原価能率の管理が強く意識されていると解することができる。

この時の製造間接費は4分法ないし2分法(素価法)に基づき定義され、加工費は基準三四に明記があることから3分法(加工費法)に基づく定義だと理解するのが自然だ。

直接費を製造指図書へ賦課し、部門間接費を適切な配賦基準で各製造指図書へ配賦することは、製品原価の正確な計算のために最低限必要なことである。

また、原価要素別や製造指図書別に集計された原価情報より、部門別に集計された原価は、部門管理者の責任と権限が明確になるため、管理者の自発的リーダシップの発揮が期待できることから原価能率のカイゼンに優れた管理単位となる可能性が高くなる。

総合原価計算の場合

基準二一では、全製造原価要素(すべてのデータ)をもって総合原価計算を行う旨は記述あるものの、部門別集計には触れられていない。しかしながら、基準八(三)における通説として、製品が一種類であっても、製品単位の製造に対して比例性があるものを直接費とし、それ以外の固定費とされるものは、部門費として集計された間接費とみなし、部門管理者による原価管理の対象にすべきであると理解されている。

基準二五において、前工程の総合原価は、前工程費または(次工程にとっての)原材料として、次工程へ振り替えることを要請されている。部門別計算において、工程は部門に含まれる概念であるから、この規定は全原価要素を対象にしていると解される。

基準二六において、原料が始点投入の場合、加工費のみを工程間の振り替え対象とする計算法が明示されている。原料以外を加工費扱いとするとの明記があることから、この時の加工費は、2分法(加工費法)によるものと解される。

各部門(工程)の加工費情報を知ることができるから、各部門での作業能率にのみ集中して部門業績を管理を実行することができる。よって、これも②(部門別)原価管理目的に必須のものと理解することができる。

部門費の分類

部門に集計された部門固有費は、必要に応じて、基準八(四)操業度との関連における分類 に基づき、変動費固定費、基準八(五)原価の管理可能性に基づく分類 に基づき、管理可能費管理不能費とに区分する。

前者の固変分解は、利益計画の策定と予実管理に資するものだし、後者の管理可能費を炙り出すことは、部門管理者の責任と権限を明確化することに資することなので、利益管理・原価管理の目的達成に必要なことである。

まとめ
  1. 原価要素から部門へ集計することを部門費の第1次集計という
    • 部門個別費は賦課(直課)される
    • 部門共通費は配賦される
  2. 各部門への集計対象範囲は、
    • 個別原価計算
      • 製造間接費 または
      • 加工費(直接労務費+製造間接費)
    • 総合原価計算
      • 全原価要素 または
      • 加工費(直接材料費以外)
  3. 各部門費は、必要に応じて分類管理する
    • 操業度との関連における分類
      • 変動費固定費
    • 原価の管理可能性に基づく分類
      • 管理可能費管理不能費

ポイント

部門費の分類例

部門の権限設定、担当する製品/サービスの生産工程の種別により、変動費と固定費、管理可能費と管理不能費を一概に類型化することは難しい。

しかしながら、何らかの指針がないと、自社の部門費の分類・管理方針策定に対して無為無策となり得るので、少々強引だが一表にまとめてみた。あくまで参考例として利用して頂きたい。

直間別/
形態別分類
部門固有費区分固変分解管理可能性
直接材料費部門個別費変動費管理可能費
直接労務費部門個別費残業代変動費管理可能費
正社員の固定給固定費管理可能費
直接経費部門個別費変動費管理可能費
製造間接費部門個別費オペレーティング・コスト
(特殊機械レンタル料)
変動費管理可能費
ポリシー・コスト
(トレーニング費)
固定費管理可能費
キャパシティ・コスト
(専用設備減価償却費)
固定費管理不能費
部門共通費原価要素からの配賦額固定費管理不能費
補助部門からの配賦額固定費管理不能費

原価計算基準 逐条詳解

前文

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

一 原価計算の目的

(一)財務諸表作成目的

(二)価格計算目的

(三)原価管理目的

(四)予算管理目的

(五)基本計画設定目的

二 原価計算制度

三 原価の本質

(一)経済価値消費性

(二)給付関連性

(三)経営目的関連性

(四)正常性

四 原価の諸概念

(一)実際原価と標準原価

1. 実際原価

2. 標準原価

(二)製品原価と期間原価

(三)全部原価と部分原価

五 非原価項目

六 原価計算の一般的基準

(一)財務諸表作成のための一般的基準

(二)原価管理のための一般的基準

(三)予算管理のための一般的基準

第二章 実際原価の計算

七 実際原価の計算手続

第一節 製造原価要素の分類基準

八 製造原価要素の分類基準

(一)形態別分類

(二)機能別分類

(三)製品との関連における分類

(四)操業度との関連における分類

(五)原価の管理可能性に基づく分類

第二節 原価の費目別計算

九 原価の費目別計算

一〇 費目別計算における原価要素の分類

一一 材料費計算

(一)実際材料費の計算

(二)材料の実際消費量

(三)材料の消費価格

(四)材料の購入原価

(五)間接材料費

一二 労務費計算

(一)直接工の労務費

参考 段取りコスト(Set-up Cost)

(二)間接労務費

一三 経費計算

一四 費用別計算における予定価格等の適用

第三節 原価の部門別計算

一五 原価の部門別計算

一六 原価部門の設定

(一)製造部門

(二)補助部門

一七 部門個別費と部門共通費

一八 部門別計算の手続

(一)部門費の第1次集計

(二)部門費の第2次集計

(三)工程別集計と共通費

第四節 原価の製品別計算

一九 原価の製品別計算および原価単位

二〇 製品別計算の形態

二一 単純総合原価計算

二二 等級別総合原価計算

(一)等価係数(アウトプット基準)

(二)

二三 組別総合原価計算

二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価

(一)完成品換算量の算定

(二)原価配分法

  1. 平均法
  2. 先入先出法
  3. 後入先出法
  4. 簡便法(加工費計算の省略)
  5. 簡便法(予定原価・正常原価の適用)
  6. 簡便法(期末仕掛品の無視)

二五 工程別総合原価計算

二六 加工費工程別総合原価計算

二七 仕損および減損の処理

二八 副産物等の処理と評価

二九 連産品の計算

三〇 総合原価計算における直接原価計算

三一 個別原価計算

三二 直接費の賦課

三三 間接費の配賦

三四 加工費の配賦

三五 仕損費の計算および処理

三六 作業くずの処理

第五節 販売費および一般管理費の計算

三七 販売費および一般管理費要素の分類基準(準備中)

(一) 形態別分類(準備中)

(二) 機能別分類(準備中)

(三) 直接費と間接費(準備中)

(四) 固定費と変動費

(五) 管理可能費と管理不能費

三八 販売費および一般管理費の計算

三九 技術研究費

第三章 標準原価の計算

四〇 標準原価算定の目的

四一 標準原価の算定

四二 標準原価の改訂

四三 標準原価の指示

第四章 原価差異の算定および分析

四四 原価差異の算定および分析

四五 実際原価計算制度における原価差異

四六 標準原価計算制度における原価差異

第五章 原価差異の会計処理

四七 原価差異の会計処理

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