原価計算基準 三三(七)補助部門費の配賦 追加しました
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原価計算基準 三三(七)補助部門費の配賦

原価計算基準 三三(七)補助部門費の配賦 マネジメント

原文

三三 間接費の配賦

(七) 一部の補助部門費を製造部門に配賦しないで、直接に指図書に配賦する場合には、そのおのおのにつき適当な基準を定めてこれを配賦する。

第二章 実際原価の計算|原価計算基準

解説

補助部門費の例外処理規定

この規定は、個別原価計算における補助部門費の例外処理規定である。

基準三三(一)で部門別計算の原則を謳っていることから、「基準三三 間接費の配賦」の構成は、原則として部門別計算を規定している基準一六から一八の各項を適宜参照していると考えられる。

この(七)は、「基準一八(二)[後段]一般費」の内容を踏まえている。

基準三三の構成内容
(一)部門別計算の原則「基準一六 原価部門の設定」準拠
(二)予定配賦の原則実際配賦ではなく予定配賦の方が原則
(三)固定費・変動費区分配賦の原則複数基準配賦法が原則
(四)間接費予定額の計算予定配賦率算定式の分子の計算方法
(五)予定操業度予定配賦率算定式の分母の計算方法
(六)部門間接費の配賦「基準一八 部門別計算の手続」準拠
(七)補助部門費の配賦「基準一八(二)[後段]一般費」準拠

基準三三(七)では、製造部門に配賦をしない補助部門費については、補助部門にて予定配賦率を定めて、直接的に製造指図書へ配賦することを指示している。

下記に「基準一五 原価の部門別計算」で示した部門別計算の全体像を再掲する。

上図にて、補助部門から製品勘定へ製品配賦がなされている部分が、基準三三(七)の説明部分に該当する。製品別計算を歪めてしまうことが予期される場合、部門費の第2次集計(補助部門費の製造部門への配賦)を無理に行わずに、直接的に製品別配賦することが許される。

この性質を持つ科目の諸元を辿れば、それは「基準一七 部門個別費と部門共通費」で示された「一般費」となる。一般費とは、工場長給料、図書費、租税公課、雑費など、合理的な部門別配賦基準値を求めることが難しい性質の科目である。

基準三三(七)の規定は、基準一八(二)を経由して、基準一七の「一般費」概念にまで遡らなければ文意を完全には理解できないことが分かった。

まとめ
  • 補助部門費を製造部門へ配賦しない場合、当該補助部門にて、製造指図書への配賦基準を設定する
  • 基準に明言が無いが、これに該当するのは基準一七の「一般費」であると解されている

ポイント

配賦元と配賦基準値設定単位

本規定で「一般費」に対する例外規定の存在を確認したうえで、「基準三三(一)部門別計算の原則」で示した、「部門間接費の製造指図書への配賦パターン」を再掲する。

#直接労務費加工費固変分解一般費配賦パターン
1部門集計しないしないなし・製造間接費
2あり・製造間接費(製造部門費)
・製造間接費(一般費)
3するなし・変動製造間接費
・固定製造間接費
4あり・変動製造間接費(製造部門費)
・固定製造間接費(製造部門費)
・固定製造間接費(一般費)
5部門集計する集計ありしないなし・加工費
6あり・加工費
・製造間接費(一般費)
7するなし・変動加工費
・固定製造間接費
8あり・変動加工費
・固定製造間接費(製造部門費)
・固定製造間接費(一般費)
9集計なししないなし・直接労務費
・製造間接費
10あり・直接労務費
・製造間接費(製造部門費)
・製造間接費(一般費)
11するなし・直接労務費
・変動製造間接費
・固定製造間接費
12あり・直接労務費
・変動製造間接費(製造部門費)
・固定製造間接費(製造部門費)
・固定製造間接費(一般費)

「一般費」を設けないバリエーションと併記しているため、12パターンと結構数が多くて煩雑に見えるが、「一般費アリ」のパターンに限れば該当パターンはその半分の6つになる。

一般費の性質から、大抵は固定費扱いで問題ないと考えるが、理論上は「変動・・製造間接費(一般費)」という設定も考えられなくもない。

「基準三三(三)固定費・変動費区分配賦の原則」で謳っているように、複数基準配賦法の方が原則として解されているからだ。

そうなると、「一般費アリ」パターンだけで想定できる限りのバリエーションを全て列挙した表は次のようになる。

#直接労務費加工費固変分解配賦パターン
2部門集計しないしない・製造間接費(製造部門費)
・製造間接費(一般費)
4′する・変動製造間接費(製造部門費)
・固定製造間接費(製造部門費)
・変動製造間接費(一般費)
・固定製造間接費(一般費)
6部門集計する集計ありしない・加工費
・製造間接費(一般費)
8′する・変動加工費
・固定製造間接費(製造部門費)
・変動製造間接費(一般費)
・固定製造間接費(一般費)
10集計なししない・直接労務費
・製造間接費(製造部門費)
・製造間接費(一般費)
12′する・直接労務費
・変動製造間接費(製造部門費)
・固定製造間接費(製造部門費)
・変動製造間接費(一般費)
・固定製造間接費(一般費)
個人的意見

日米の会計系試験にて、補助部門費扱いされた一般費の製品への配賦を計算問題の形で、総合原価計算でも個別原価計算でもお目にかかった記憶は残念ながらない(あくまで個人的な経験の範囲だが)。

ましてや、「変動製造間接費(一般費)」を取り扱うケースは稀有だと言い切れる。

形式としては、複数部門からの製品別配賦のケースと同様と捉えておいて何ら差支えはない。

原価計算基準 逐条詳解

前文

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準

一 原価計算の目的

(一)財務諸表作成目的

(二)価格計算目的

(三)原価管理目的

(四)予算管理目的

(五)基本計画設定目的

二 原価計算制度

三 原価の本質

(一)経済価値消費性

(二)給付関連性

(三)経営目的関連性

(四)正常性

四 原価の諸概念

(一)実際原価と標準原価

1. 実際原価

2. 標準原価

(二)製品原価と期間原価

(三)全部原価と部分原価

五 非原価項目

六 原価計算の一般的基準

(一)財務諸表作成のための一般的基準

(二)原価管理のための一般的基準

(三)予算管理のための一般的基準

第二章 実際原価の計算

七 実際原価の計算手続

第一節 製造原価要素の分類基準

八 製造原価要素の分類基準

(一)形態別分類

(二)機能別分類

(三)製品との関連における分類

(四)操業度との関連における分類

(五)原価の管理可能性に基づく分類

第二節 原価の費目別計算

九 原価の費目別計算

一〇 費目別計算における原価要素の分類

一一 材料費計算

(一)実際材料費の計算

(二)材料の実際消費量

(三)材料の消費価格

(四)材料の購入原価

(五)間接材料費

一二 労務費計算

(一)直接工の労務費

(二)間接労務費

一三 経費計算

一四 費用別計算における予定価格等の適用

第三節 原価の部門別計算

一五 原価の部門別計算

一六 原価部門の設定

(一)製造部門

(二)補助部門

一七 部門個別費と部門共通費

一八 部門別計算の手続

(一)部門費の第1次集計

(二)部門費の第2次集計

(三)工程別集計と共通費

第四節 原価の製品別計算

一九 原価の製品別計算および原価単位

二〇 製品別計算の形態

二一 単純総合原価計算

二二 等級別総合原価計算

(一)等価係数(アウトプット基準)

(二)

二三 組別総合原価計算

二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価

(一)完成品換算量の算定

(二)原価配分法

  1. 平均法
  2. 先入先出法
  3. 後入先出法
  4. 簡便法(加工費計算の省略)
  5. 簡便法(予定原価・正常原価の適用)
  6. 簡便法(期末仕掛品の無視)

二五 工程別総合原価計算

二六 加工費工程別総合原価計算

二七 仕損および減損の処理

二八 副産物等の処理と評価

二九 連産品の計算

三〇 総合原価計算における直接原価計算

三一 個別原価計算

第五節 販売費および一般管理費の計算

三七 販売費および一般管理費要素の分類基準

(一) 形態別分類

(二) 機能別分類

(三) 直接費と間接費

(四) 固定費と変動費

(五) 管理可能費と管理不能費

三八 販売費および一般管理費の計算

三九 技術研究費

第三章 標準原価の計算

四〇 標準原価算定の目的(準備中)

四一 標準原価の算定 [本文]

(一)標準直接材料費

(二)標準直接労務費

(三)製造間接費の標準

  1. 固定予算
  2. 変動予算
    • (1) 実査法
    • (2) 公式法

(四)標準製品原価

四二 標準原価の改訂

四三 標準原価の指示

(一)標準製品原価表

(二)材料明細表

(三)標準作業表

(四)製造間接費予算表

第四章 原価差異の算定および分析

四四 原価差異の算定および分析

四五 実際原価計算制度における原価差異

四六 標準原価計算制度における原価差異

第五章 原価差異の会計処理

四七 原価差異の会計処理

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